第69話 勇者戦開始
「よし帰るかぁ」
ヒロシは当初の予定通り壁を壊した後、安全のため引っ込んでいった。
その途中、攻めている味方を見て、
「何かあそこだけから攻撃しても、こんだけ 大勢居るのに 活かしきれてない気がするなぁ」
実際に戦っているのは、前にいる者たちだけで、後ろで詰まっているものは、何も出来ていない。
「あ、そうか。別の場所も壊しちまえばいいんだ。俺頭いいー」
ヒロシは調子に乗っているような素振りで、そう言った。
「たぶん敵の強い奴らは、今攻め込んでいる場所に集まってるだろうし、別の場所の壁を壊したら完全に予想外で敵は慌てふためくだろうなぁ。よしやろう」
予定を変更して、ヒロシは再び壁の近くへと向かった。
○
俺は防壁の上に登って、勇者がどこにいるのかを目視で捜索する。
どこにもいない。
やはり後ろにいかれてしまった。
だとすると、敵兵に紛れて探すのが非常に困難になる。
勇者の外見は目撃者から聞いており、坊主だったという話だ。
確かに坊主のやつはいた。
四人の不良の中では、長髪の奴と金髪の奴が目立っていたから印象は薄いが、確かにそんな奴がいた覚えがある。
顔は覚えていないが、大きい高価そうな鎧を身につけていて、青いマントを羽織っているという特徴もあるらしいので、見かければ分かるだろう。見逃しているわけではないはずだ。
「どうする?」
「うーむ……とにかく敵が壊してきそうな場所を予想して、そこに行くしかないようじゃのう」
「どこに来ると思う?」
「先ほど壊した場所よりなるべく遠い場所にするじゃろうな。真後ろに回ってみるかの」
「そうだな……」
外れている可能性もあるが、それにかけるしかないか。
壊された場所のちょうど反対側に俺たちは向かう。
その向かっている途中。
「あれは!」
大きな鎧を装備した坊主の男が、防壁に向かって来ているのを発見した。青いマントを羽織っている。
あいつが勇者か?
俺はその男を鑑定してみる。
『人間。個体名:ヒロシ・オオシマ。Lv.88/95 16歳
♂
HP 1587/1587
MP 1156/1156
知能が高い。レベルアップによるスキルポイントの上昇が多いという特徴がある』
この日本風の名前、そして並外れたレベルと限界レベルの高さ。
間違いないこいつが、勇者だ。
限界レベルは以前戦ったタケイよりかは高いが、レベルは低い。
ほかの数値は覚えていないので、分からないが、たぶんHPはタケイより高いような気がする。
ただ現時点の俺のHPよりかは、低い。
これなら勝てるだろう。
「テツヤ、あいつで間違いないか?」
「ああ、間違いない」
俺は【
それから、俺たちはリコから事前に貰っていた、能力を強化する水を飲む。
「よし行くぞ」
「ああ!」
「にゃー!」
と俺は飛び降りたが、二人は飛び降りられる高さではなかったらしい。しかし、メクが落下速度を落とす魔法を使用して、レーニャと二人で降りてきた。
「な、何だてめーら」
勇者オオシマは、突然降りて来た俺たちに驚き動揺する。
タケイは最初は見下しまくっていたので、奴ほど他人を見下すタイプではないのだろう。
「お前を倒しに来た」
「ああ? 何だお前限界レベル1じゃねーか、女の方は高いが、俺よりは全然低いし、ちょっとビビった俺が馬鹿だった」
こいつレベルサーチを使った素振りを見せないで、そう言った。こいつ【鑑定】が使えるのか?
ただ、俺の名前に関する言及がないので、レベルだけを見るスキルが存在するのかもしれない。
「殺してやるよ」
オオシマは腰にかけていた剣を抜いて、俺たちに飛びかかってくる。
戦いが始まった。
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