第57話 虹色の神水

 イザベラさんの言った通り、働くことになります。この家での仕事とは、食料を取って来たり、薪を取って来たり、水を汲んできたり、家の後ろにある畑での仕事などです。お金稼ぎなどはせず、自給自足の生活を二人は送っているのでした。


 たまに町にいらないものを売りに行って、そのお金でパンなど美味しいものを買って来たりすることもあるそうです。

 アイサが私を助けたのは、まさにその時でした。


「これからリコおねーちゃんにも、狩りを手伝ってもらうけど、魔法は使える?」


 食料は主に、森に行って野草やきのみを取ったり、狩りをしたりして集めます。狩りをする際には、魔法を使用し、アイサとイザベラさんは、魔法を使うのが非常に上手でした。

 イザベラさんはもうお歳だから、狩りはせず畑仕事をしており、狩りはアイサの担当になっていたようです。


「魔法? つ、使えないよ」


 その時の私は、魔法はあるということは知っていたけど、使うことなんてできません。今はちょっぴりですが、使えますよ。


「えー、じゃあステータスを見せてよ」

「ステータス…………ってなに?」

「えー!? 知らないの!? こうやってステータスオープン! って言えば、ほらアタシの前に石版が出たでしょ? これを見ればステータスが分かるの」


 この時、ステータスの存在を初めて知りました。

 現実世界でゲームをやったことは、何度かありますので、ステータスという単語自体は知っていましたが、それを見ることが可能であるという発想はありませんでした。


 え? テツヤさんはいきなり分かったんですか?

 最近では異世界に行くライトノベルが流行っていたので、とりあえずやってみた、ですか。

 そうだったのですか、私、読書は好きですが、ライトノベルはあまり読まないんです。知りませんでした。


 それで、私はその時、「ステータスオープン」と言って、自分のステータスを初めて目の当たりにします。


 若干の誤差はあるかもしれませんが、確かこんな感じでした。


 名前  リコ・サトミ

 年齢  16

 レベル 1/48

 HP   20/20

 MP   4/4

 攻撃力 2

 防御力 2

 速度  3

 スキルポイント 0

 スキル 【虹色の神水】

 耐性  無


 私の年齢ですか、そうです、16歳ですよ。

 レーニャさんは15歳なんですか。一歳差ですね。


 ステータスは、まだレベル1なので当然かなり低いです。


 問題はこの【虹色の神水】というスキルです。

 テツヤさんは【死体吸収】というスキルがあるんでしたね。これも非常に強力なスキルだと思いますが、私の【虹色の神水】もかなり強力なスキルでした。


「リコおねーちゃん……限界レベルは48で私より全然高い。でもレベル1ってのはおかしいよ。普通に暮らしているだけでも10くらいにはなるもん。今まで何をしてたのよ」

「え、えーと……」


 そう問われて返答に困ります。前の世界にレベルなどというシステムがなかったから年齢を重ねているのに、レベル1なのですが、どう説明すればいいのやら。

 返答に困る私を見てアイサは、


「話せないことならいいよ」


 と言ってくれました。彼女は気がきく子なのです。


「でも【虹色の神水】って何? どんなスキルなの? これも話せないならいいけど」

「うーん、ステータスオープンしたの初めてだからスキルがあるの初めて知ったよ」

「そうなの? 使ってみれば?」

「…………どうやって使うの?」

「スキルの名を言えばいいんだよ。【虹色の神水】! って感じで」

「そうなんだ……えー……【虹色の神水】!!」


 私がそう言うと、人の頭くらいの大きさの水の球が七つ現れ、私の周りにフワフワと浮きました。


 それぞれ、色が違います。

 赤、オレンジ、黄、緑、青、藍、紫、の七色です。ちょうど虹の色と一緒です。


 最初に使った時は戸惑います。水が周囲に浮いているだけですから。どう使えばいいのか全くわからない。


「これ何に使うの?」

「わ、わかんない」

「飲んでみるとか。クンクン……結構いい匂いするよ!」


 それを聞いて、私も半信半疑で嗅いでみると、確かにそうです。赤色の水の匂いを嗅いだのですが、いちごジュースのような匂いがします。


「ちょっと舐めてみる」

「だ、大丈夫なの?」


 アイサが赤い水を指に当てて、水を舐めます。


「美味しい! ……って、え!!??」


 いきなり大声を上げました。


「ど、どうしたの?」


 驚いた私が尋ねると、アイサはいきなり「ステータスオープン」と言って、ステータスを出します。


 そしてそれを見て、


「……やっぱり」


 震えながら呟きます。

 何か良くないことがあったのか不安に思うと、そうではありませんでした。


「レベルが2上がってる……」

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