第45話 vs勇者タケイ1

 戦いが始まる。

 俺がメクに【解放】を使ったので、メクが元の姿に戻っている。

 そういえば、この姿のメクの戦闘能力はまだ見ていないな。

 レベルは70以上あったはずだから、弱いということはないと思うけど。


「うお? ぬいぐるみがめっちゃ美女になった! すげー俺好みなんですけど! ぜってぇ捕まえて犯してやる!」


 下種な目でタケイはメクを見る。


 分かっていたことだが、まともな人間ではない。クズだ。それも最高クラスのクズだ。


 こんな奴には絶対に負けないと、俺は心に誓った。


 確実に勝つためには、メクの【解放】がまだ解けてないうちに倒さないといけない。

 早いところ勝負を決めなくては。


「【隕石メテオ!】」


 俺はのっけから強力なスキルを使用した。最近天井が低い所ばかりで戦闘していたから出番がなかったが、なんだかんだ言って一番威力の高い魔法である。


 タケイは隕石を見て嫌な予感を察知したのか、避けた。馬鹿正直に受け止めてくれたらよかったんだが。


「さて、わしの力を見せてやるとするかのう」


 メクがそう言いながら、何やら呪文を唱え出した。

 魔法を使う気だろう。


 地面から蔓みたいなのが、無数に飛び出してきて、タケイを縛り上げた。


「なんだこりゃ!」

「今じゃ!」


 俺は【隕石メテオ!】を使い武井を攻撃。タケイの脳天に直撃する。


「アタシも行くにゃ!」


 畳み掛けるようにレーニャも攻撃する。【獣化】のレーニャの突進が武井に直撃。


 さらにメクが再び魔法を唱える。無数の氷の矢が発生し、全ての矢が武井に向かって飛んでいく。

 武井は氷の矢を全て受けたが、突き刺さることはなかった。


 再び俺たちは攻撃しようとするが、タケイは自身を縛っていた蔓を強引に力技で解く。


「あー、いてー。むかつく奴らだなぁてめーら」


 頭を押さえながらそう言った。メテオの直撃を食らったのに割りと平気そうに歩いている。


 俺は鑑定でどれくらい武井のHPが減ったのか、確認してみた。


 1220/1422


 まったく効いていないってわけじゃないな。

 今のをあと約6回か。

 こいつもさすがに何度も同じ手を喰うほど馬鹿じゃないだろう。


 今度は違う攻め方をする必要があるな。


「次は俺からいくかー。まず男のお前は即効ぶっ殺して、女は捕らえる。そこの獣になった奴は元に戻らんなら殺すかー」


 そう言ってタケイは俺に向かって走り出してきた。

 速い! が反応できない速度ではない。


 タケイの武器は剣のようだ。それを抜いて俺に斬りかかって来る。俺も剣を抜き受け止める。


 何度か斬り結ぶ。そのあいだメクが長い呪文を唱えている。

 ちょっとした隙を見つけて俺は武井の腹に【闇爆ダーク・ブラスト】を打ち込む。


「ぐっ!」


 タケイは苦しむ。

 そして、メクが呪文を唱え終える。


 メクの手から光の槍が発生し、それがタケイの頭を目がけて飛んでいく。

 かなりの速度なため、タケイは反応できない。

 頭に直撃。

 防御力が高いから突き刺さりはしなかったものの、頭を強打し倒れこんだ。


「ぬう丈夫じゃのう」


 HPは821/1422


 さっきの光の槍はかなり高威力の攻撃だったようだ。

 かなりダメージが入っている。


「っち……あーったく……なんだよてめーら、そこそこ強いのかよ……」


 ダルそうな声でタケイは立ち上がる。

 すると彼の体全体からなにやら、きらきらした光が発生する。


「あれは!?」


 メクが光を見て驚いた。


「スキル【再生リジェネ】が発動するときの光じゃ……ある程度ダメージを受けたら、徐々にHPを回復するスキルじゃ」

「何?」


 俺はタケイを鑑定で見てみる。

 確かにじわじわとHPが回復して言っている。こいつ厄介なスキル持ってやがるな。


「仕方ねー。だるいけど本気で行くか」


 本気を出す? 今までが本気じゃなかったのか?


 戯言だろう。追い詰められて俺たちを警戒させるために言っているんだな。

 ただ、そんな言葉に戸惑わない。というより、戸惑っていたらメクにかけた【解放】が解けてしまうので、戸惑っている暇がない。


 最初の方針通り、最速で倒す。倒しきるまでも、弱らせておけば後はレーニャと俺だけで倒せるから、とにかく攻撃しまくる。


 俺はそう思って再び攻撃を開始すると、


「【伝説化レジェンド・モード】」


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