第43話 作戦会議

「人間の兵は勇者を含めて100人ほどです。勇者以外の兵は精鋭ですが、そこまで強いわけではございません。ただやはり勇者が正直強すぎてどうしようもないというのが、ほかの戦場で戦った兵たちの話です」

「戦った者がこの城におるのか?」

「ええ、命からがら逃げてきた兵がおります。そのものの話によると、勇者の動きはあまりにも常人離れしていて、倒せるというイメージがまったくわかなかったらしいです。レベルを調べてみたらしいのですが、93あったらしいです」

「93…とな……」


 確か限界レベルはそのくらいあったと思うけど、もうそんなに上がっているのか。

 リーザースが80後半くらいだったことを考えると、俺にとっては決して倒せないレベルではないはずだ。


「勇者は確かにかなり強いというのは確実じゃろうな。じゃが、ここにおるテツヤもかなり強い。恐らく勇者とも引けを取らぬ強さを持っておるはずじゃ」

「そうなのですか? それは心強いですが」


 とルーファは言ったが、その後、部下のエルフがルーファに近づき、ゴニョゴニョとルーファに耳打ちをする。


「あの、部下がその者の限界レベルを調べてみた所、1と表示されたらしいのですが、どういうことでしょうか?」


 ルーファは少し険しい表情で尋ねてきた。恐らくこの世界に来た日に使われた、限界レベルを調べる魔法を使われたのだろう。あの魔法は案外簡単に使えるらしいからな。


「あー。テツヤには特殊なスキルがあってな。そのおかげで、高いステータスと豊富なスキルを持っているのだが、ステータスを見てみるか?」

「出来ればお願いします」


 ステータスを見せるように要求される。俺はルーファにステータスを見せた。


 名前  テツヤ・タカハシ

 年齢  25

 レベル 1/1

 HP   988/988

 MP   689/689

 攻撃力 621

 防御力 778

 速さ  622

 スキルポイント 13

 スキル【死体吸収】【鑑定Lv4】【隕石メテオLv5】【強酸弾アシッドショットLv3】【雷撃サンダーショックLv2】【吸い取り糸アブソーブスレッドLv2】【炎玉フレイムボールLv.6】【弱点結界コア・ガードLv2】【闇爆ダーク・ブラストLv3】【解放リリースLv1】

 耐性 【毒耐性Lv2】【雷耐性Lv1】【炎耐性Lv3】


「な……このステータスは……」

「凄まじい……」


 エルフたちがザワザワと騒いでいる。


「勇者の相手はこのテツヤと、それから一定時間だけじゃろうが元に戻ったわしと、レーニャがやることにする。他の人間共相手をほかの者たちが引き受ける。と言う感じで戦いたいのじゃがどうじゃろうか?」

「なるほど……確かにこれほどお強いのなら、勇者と戦っても勝てるかもしれません……もう駄目かと思っておりましたが、希望が湧いてきましたね」


 ルーファは少し身を震わせながらそう言った。


「それでは、具体的にどうやって勇者と他の人間達を引き離すか、方法を考えましょう」


 俺達は対勇者戦の戦術を立て始めた。


「では具体的にどうやって勇者を引きつけようかのう」

「勇者はあまり賢くないという報告が入っております。結構罠にかかるらしいです。罠にかかってもビクともしないので、あまり意味はないらしいのですが、今回は役に立つかもしれません」


 頭が悪いか。確かに頭の良さそうな連中ではなかったな。

 その上、短気だったはずだ。俺が少し説教してやろうとしたらすぐにキレて殴りかかってたはずだ。


「挑発してみるとかどうだ?」


 俺は提案した。勇者を挑発して陽動する。

 かなり単純な手だが有効そうに思えた。


「挑発か……ひっかかるかのう」

「かなり短気な奴らだったしいけるかも」

「そうなのですか……あれ? そういえばテツヤ殿は勇者を知っているので?」


 ルーファが尋ねてきた。


「ええ、ちょっと因縁があるんです。勇者とそれから勇者を呼び出した人間に殺されかけた事があったんです」

「そうなのですか……だから勇者を……」


 少しルーファは納得したようだった。


「しかし、挑発するといってもじゃな、何と言えば挑発にひっかかりやすいじゃろうか」

「そうだな……うーん。相手の勇者はどんなやつだったんですか? 特徴とか教えて欲しいのですが」

「小柄だったと報告がありますね」

「小柄ですか……身長を馬鹿にしてみればぶちきれるかもしれない」

「身長が低いのはコンプレックスになるとは思うのじゃが、気にしていない可能性もあるじゃろ」

「背の低い男で、背の低い事を気にしていない奴はいないよ」

「そうかのう?」


 断言する俺の言葉に、メクは疑問を持っているようだ。


「まあ、乗ってこなかった場合はいろいろ罵倒すればいいよ。そのうち絶対ぶちキレるから」

「うまくいけばいいのじゃがな」


 少し不安そうだがメクは反対する気はないようだ。


「じゃあ、勇者を俺が罵倒して、勇者だけが追ってきたら、俺はどこか別の場所に誘導する。ほかの人間の兵はその間エルフ兵たちが足止めしてくれ。誘導した先でメクとレーニャはスタンバイしておいて、俺をあわせて3対1で勇者と戦う。これでいいか?」

「いいじゃろう。どの辺に誘導すれば戦いやすいかのう?」

「近くにある、荒野が最適かと」

「一応事前に場所を確認しておこう」


 俺達はその後、事前に荒野の場所を確認する。城からそこまで離れていない。10分ほど歩けばいける位置にある。


 城に戻って数時間経過し、


「勇者達が城に近づいてきております! あと1時間ほどで到着すると思われます!」


 そう報告が入った。


「じゃあ、メクとレーニャは、荒野に向かってくれ」

「ああ」

「分かったにゃ」


 メクとレーニャが荒野まで向かう。


 成功すればいいのだが、と俺は少し緊張しながら勇者の到着を待った。



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