第42話 ブラクセル

 王の間、テツヤとレーニャが退室し、メクとサクだけが残っていた。


「それでサクよ。わしに話とはなんじゃ?」


 メクはサクから、話があると言われて残っていた。


「これを言ったら、姉者には怒られるのかもしれんがのう……」

「話す前にちょっとよいかサク」

「なんじゃ?」

「お主、そのわしとそっくりの口調をやめるのじゃ。同じじゃとややこしくて敵わん。わしとお主は声も似ておるし、外から聞いたら、独り言を言っているみたいに思われるぞ?」

「な、なんじゃと?」

「お主は女王らしく話せるのじゃから、そっちに変えるのじゃ」

「ごめんじゃ! あの喋り方は好きではない! 姉者が変えればよかろう!」

「わしこの喋り方以外出来ぬもん。お主が変えるしかないぞ」

「ぐ……」


 サクはメクを睨みつけ、


「分かりました。こうすればよいのでしょうこうすれば」

「やっぱり、その喋り方は違和感があるのう」

「どうすればいいのじゃ! どうすれば!」

「まあ、違和感はあるがそっちの方がええわい」


 とりあえず、サクは女王っぽい喋り方をする事に決まった。


「本題に戻りますわ。私が姉上に話したかったことは、ズバリ一緒にいた人間のテツヤ様のことですわ」

「テツヤか? あやつが人間というところに引っかかっておったのか? テツヤはいい奴じゃ、この国に害をなすようなことをする男では……」

「そうではございません」


 サクは、メクの言葉を遮るように言った。


「あの者には何か不吉なオーラを感じました。テツヤ様は何か良くない者に目をつけられております」

「……サク……お主は昔から優れた感受性を持っておったが」

「心当たりはありませんか?」

「ない、と言えば嘘になるのう」


 メクはテツヤの右手に刻まれた刻印を思い出した。


「これをお持ちになられていてください」


 サクが何かを手渡して来た。

 それは青い宝石がつけられた金のネックレスだった。


「なんじゃこれは?」

「これは宝具でございます。いざという時は、これの宝石の部分をテツヤ様に押し当ててください」

「……お主、何か知っておるのか? テツヤに付いている不吉な何かのことを」

「……今はお話出来ません。確証がございませんので」

「……そうか」


 メクはネックレスを首にかけた。


「私からのお話は以上です。あと、姉上の呪いを完全に解く方法は私からも探しておきますので」

「いや、それに関しては迷惑をかけるつもりはない」

「姉上がその状態だと現時点で私に迷惑がかかっています。私のために、元に戻る方法を探しますので」

「そ、そうか……でも、やっぱ女王面倒じゃな……戻ってもそのままお主が……」

「ごめんじゃ! 戻ったら姉者がやるのじゃ!」

「わかったわかった。じゃあ、またのう」


 怒るサクから逃げるように、メクは王の間を後にした。


 ○


 一晩過ごして翌日になった。

 今からブラクセルに行く所だ。


「よし、では行くぞ!」

「はっ!」


 精鋭エルフ兵達100人が俺たちの仲間になった。メクがエルフの前に立ち大声で叫び、エルフ兵達がそれに応えた。

 まあ、メクの姿はぬいぐるみなんで、若干締まらない感じもするが……

 そういえば、メクの首にネックレスがつけられている。女王様にプレゼントされたらしい。結構綺麗なネックレスだった。


 そして、俺たちは王都を出て、ブラクセルに向かった。


 歩いて向かい、到着するまで4日かかった。

 ブラクセルにある城は少し小さめだった。俺達はエルフ達を伴ってブラクセルの城に入城を求めた。事前に事情が書かれた伝書が届いてたらしいので、簡単に入城する事が出来た。


 ブラクセルの城主に面会する。女のエルフだった。エルフは女の方が持っている魔力が多く、女のほうが強くなりやすいという特徴があるので、だいたい上の立場についているエルフ達は、女である可能性が高かった。


「ようこそおいでくださいました。私はブラクセル城主のルーファ・シレルピアンと申します。伝書によるとなんとそちらの方はあのメク様だそうで。これだけ精鋭兵をつれてきていただき誠にありがとうございます」


 礼儀正しい人みたいで、深々とお辞儀をしながら言った。俺たちも挨拶を返す。


「礼はよい。それで状況はどうなっておる。勇者は今何処におるのじゃ?」

「もうすぐここブラクセルまで来ると報告を得ています。早くて明日の昼辺りには到着すると」

「明日の昼か……それまでにどうするか決めておかねばな」


 作戦会議が始まる。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る