第41話 サク

 ブラクセルまでいくと決めた後の事。

 俺達はエルフの国、ファラシオンの女王に会うことになった。


 実は現在のファラシオン女王はメクの妹になるらしい。年齢は7つほど下だそうだ。

 レマ将軍が、女王様にメクの来訪を告げた所、今すぐ会うと言ったそうだ。


 俺達は女王の間まで通される。


 王座に女王が腰をかけていた。

 金色の長い髪。豊かな胸と白い美しい肌。豪華な服を着ており、頭には複数の宝石がはめ込ませた、サークレットをつけている。

 メクが元に戻った時の姿と非常に似た容姿で、姉妹であるということを感じさせる。


「おお……、サクよ……立派になったなぁ」


 メクが感動したように呟いた。何十年ぶりの再会なんだし、そりゃあ感動もするか。

 名前はサクというのか。メクと少し似ているな。


「その声は……姉上……どのような姿になろうとも、私には分かります……」


 サクさんも、感動したように震えている。

 彼女は立ち上がり、メクに向かって駆け寄る。


「姉上!」

「サク!」


 姉妹が感動の再開をして抱擁を交わす……と思ったら、


「今までどこいってたんじゃボケェええええ!」

「ぐへっ!」


 いきなり豹変したサクさんが、メクを思いっきり蹴飛ばした。

 蹴飛ばしたあと、全速力でメクが落下する地点まで移動。

 見事にキャッチし、


「てめぇ、どんだけ、わしが迷惑を被ったと思っておるのじゃ! やりたくもない女王なんぞやらされ、天才だとか史上最高だとか言われた先代の女王と比べられ、ストレスにさらされる毎日。三回くらい胃に穴が開いたんだよ! どうしてくれるんじゃこらぁ!」


 ボコボコとメクを殴りながら叫ぶ。


 えぇぇぇ!? 女王様こんな人だったの!? すっげーおしとやかで大人な感じだったのに、えぇ!? バイオレンス過ぎないかこれ!?


「待て待てサク! わしも好きでこんな姿になっとるわけじゃないし。だいたいさっきから殴っておるが、無駄じゃし。全然痛くないし。お主が疲れるだけだからやめとけ」

「うるさーい! だったら何でこんな姿になっとるんじゃ!」


 今度は地面に置いて踏みつけ始める。


「踏んでも無駄じゃて! 謎の女にやられたんじゃ! 決してわしは悪くないぞ!」

「この姿になっても戻ってくればよかったじゃろーが! その姿で女王やっておればよかったじゃろーが!」

「無理を言うでない! どこの世界にこんな珍妙な格好をした女王がおるというのじゃ!」


 疲れたのか女王様は肩で息をし始める。

 そして、俺たちの方を向いて。


「あら、お見苦しいところをお見せしました。私こそファラシオンの女王をやっております。サク・サマフォースといいます。よろしくお願いしますね」


 ペコリと大きく頭を下げて、サクは俺とレーニャに挨拶をした。


 さっきのアレは見間違いだったのでは? と思うほど、上品な挨拶だ。


 俺とレーニャは、呆気に取られながらも「よろしくお願いします……」「よろしくにゃ……」と挨拶を返した。


「全く相変わらずじゃのう、サクは。お転婆なやつめ」


 転がっていたメクが立ち上がりながらそう言った。

 やっぱさっきのが本性なのか。


「……まあ、姉者が戻ってきた事は嬉しいのじゃ……よく戻ってくれたのじゃ」

「すまんな……迷惑をかけて」


 今度こそ感動の再会の抱擁を交わした。


 その後、これからブラクセルまで行くという事で、女王様から激励を受けた。俺達は激励を受けた後、女王の間から出る事になったが、メクだけが取り残された。なにやら話があるらしい。まあ、積もる話でもあるのだろう。


 俺とレーニャは今日泊まる部屋まで行った。

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