第40話 王都に入る

「メ、メク様……」

「おお? お主はレマではないか。大きくなったのう。なんじゃ将軍と呼ばれておったが、だいぶ出世したのか?」


 どうやらあのレマと呼ばれた女エルフの将軍は、メクの知り合いみたいだった。


「メク様ー!」


 と叫びながらレマ将軍が、メクに抱きつこうとする。

 しかし、ちょうど抱きつく寸前、メクの体がぬいぐるみになってしまう。


「あれ?」

「あーあ、効果が切れてしもうた」


 レマ将軍は下を向く。


「あの、メク様は?」

「わしじゃわし、わしがメクじゃ」


 レマ将軍の表情が凍り付いた。しばらく、そのまま黙り続け、


「メク様ーーーー!?」


 と絶叫した。


 ○


「何と、呪いのせいで……ああ、おいたわしや……そのような姿になってしまって……」


 レマ将軍がメクの姿を見て、涙を浮かべながらそう言った。


 とりあえず俺たちは、レマ将軍の手引きでエルフの国に入れてもらった。

 一度元の姿を見られたメクは、ぬいぐるみの姿になっても、メクであるとは信じてもらえたようだ。

 そして、俺とレーニャについては、信用のできるものだから入れてくれとメクが説得したら、入れてもらえた。

 まあただ、町中を歩くときはかなり敵意の視線を向けられて、居心地が悪かったのだが。


 現在俺たちは、エルフの王都の王城まで通された。その城の一室でレマ将軍と話し合いをしているところだった。


「しかし、どのようなお姿になられようともお戻りになられたのはよかったです。もう死んでらっしゃるのかと思っておりました」

「すまんな。このような姿で帰ってもどうしようもないし、完全に呪いを解いてから戻ろうと思っておったんじゃが。今回の事態では見過ごせず来ることにした」

「そうですか……それで、その呪いをそちらの人間の方がお持ちになるスキルで、一時的に解けるようになったと」

「そうじゃ。名前はテツヤ・タカハシじゃ」

「テツヤ・タカハシさんですか。私はレマ・オーレドアと申します。この度はメク様の呪いを一時的にでも解いていただきありがとうございます。テツヤ様は人間であられますが、メク様が信用に値する者だとおっしゃったのでそれを信じることにいたします。よろしくお願いします」


 握手を求められる。


「よろしくお願いします」


 俺は握手に応じた。


「そちらの獣人の方も、メク様の友人との事ですが」

「友人ではなく弟子にゃ! あたしはレーニャにゃ。よろしくにゃ」

「お弟子さん……ですか。よろしくお願いします」


 レーニャもレマ将軍と握手を交わした。


「それでメク様……しかし、その呪いはいつ誰に掛けられたのです?」

「ある女に掛けられたのじゃが……今はそれについて詳しく話している暇はないじゃろう。わしらは勇者を討ちに来た」

「そうですか……メク様が来られるなら百人力でございます」

「今、勇者はどこにいる?」

「現在、ラクフェナを制圧した後、王都より南西にある、ブラクセルに進軍中との話です」

「ラクフェナからブラクセルへか、まだ遠いがもしかして、王都に向かって来るつもりなのか?」

「分かりません。いかんせん行動が読めなくでですね……攻めてくると思った場所が、ことごとく外れるのです」

「ふむ」


 たぶん、軍人から見たら、ただの素人である勇者の行動が意味不明なんだろう。適当に近くにあった城を攻撃しているとか、たぶんそんな理由なんだろうけど。


「勇者どもがブラクセルに着くまで、あとどれくらいじゃ?」

「7日ほどかかるかと」

「それなら間に合いそうじゃな。ブラクセルの救援に向かい。そこで勇者を討つ」

「勇者を討ちにいかれるのなら、精鋭兵をお貸しします」

「ぬ? わしこんな姿なのじゃが、付いてくるものはおるのか?」

「大丈夫でございます。皆、国への忠誠が厚い者ばかりでございますゆえ、私がきちんと説明すれば、必ずメク様の指示に喜んでしたがうでしょう」

「そうか、それなら良いのじゃが。何人ほど貸してくれるのじゃ?」

「100人お貸しします」

「ふむ、頼もしいのう。では出発は明日とするか」

「は! 大急ぎで準備を開始します!」


 レマ将軍がそう言って、準備を開始した。

 明日ここを経ち、ブラクセルという場所に向かうことになった。


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