第39話 王都

「いやーエルフの国を攻めて正解だったな」


 勇者武井駿は、城の最上階にあるイスにふんぞり返りながら座っていた。


 彼の傍には大量のエルフの女達が、首輪に繋がれた状態で佇んでいた。


「こんな大量にいい女を抱けたし、さらにエルフの野郎ども、よえー癖に意外と殺したら貰える経験値がすげーうめーんだよな。80超えてから殆どレベルは上がっていなかったけど、エルフども殺しまくったおかげで、90超えたんだよな。このステータスすげー伸びて今のステータスヤベェーまじで。今ならなにが来ても負ける気しねーわ」

「私共もシュン様のお強さには、驚かされるばかりです」


 駿の目の前には複数の部下達が跪いており、その部下の1人がそう言った。


 彼は自分のやっている行為を一切悪びれた様子もなく言った。

 駿は椅子から立ち上がり、


「さてと、そろそろ出撃するか。王都にいる女王はそれはもう絶世の美女らしい。早くそこまで侵略しねーと」


 そう言って城から出ようとする。


「あ、それとそこにいる女ども、飽きた。てめーらで好きにしていいぞ」


 駿はそう言い残して城を出た。


 ○


「王都についたな」


 俺達はしばらく歩いてエルフの国ファラシオンの王都に到着した。

 王都には門がありかなり厳重に警備されている。


「なあ、これって入れるのか? 俺、人間なんだけど」


 よく考えれば、そもそも人間の俺は今はエルフに恨まれる立場だろう。

 王都に入れてくれるとは思えないし、それ以前に捕まって処刑される可能性すらある。


「今はわしが2分だけだが元の姿に戻れるじゃろう。わしがテツヤが害の無い人間じゃと説明すれば、入れてくれるはずじゃ。何せわしはこの国の女王じゃったからのう」

「つっても結構昔の話だろ? メクのこと知っているエルフは今もいるのか?」

「エルフは長命の種族じゃ。まだまだわしのことを知っておる者も、大勢おるじゃろう」

「それならいいけど」

「では【解放】をわしに使ってくれ」

「わかった」


 俺は【解放】を使って、メクの元の姿に戻そうとする。


「お、やっと師匠の元の姿が見れるにゃん!」


 ようやくメクの姿が見れそうで、レーニャはわくわくしているようだ。


 そして、俺は【解放】を使い、メクを元の姿に戻した。


「よし、戻ったな」

「おー! すっごいきれいにゃん!」


 見たのは二度目だが相変わらず、すげー美人。やはりどうしても元の姿のメクといると、緊張してしまうな。


「じゃあ、行くぞ」


 メクが門に向かって歩いていく。俺たちも付いていく。

 門の前には武装した門番が2人立っている。


「メク・サマフォースがただいま帰還した! お主ら門を開けるのじゃ!」


 メクは門番の前に立ちそう言った。

 2人の門番は、メクの姿を見た瞬間、恐れひれ伏し門を開け……ず、はぁ? 何だこいつ? と言いたげな目でメクを見る。


「おい、お亡くなりなられた元女王様の名を語るとはどういう了見だ。ふざけているのかお前は」

「な、なに? わしがその女王様本人じゃ! 見たことないのか?」


 そうメクが言うとまたも何言ってんだこいつというような表情を2人の門番は浮かべて、


「あのな。戯言を言うのもいい加減にしろよ。現女王様に容姿的に似ているから、騙そうと思っているんだろ?」

「これ以上言うと不敬罪で捕まえるぞ」


 あのー、メクさん。自信満々で言ってたけど全然知られてないようなんですが……?


「……っていうか、貴様の後ろにいる奴! 1人はケットシーだが、もう1人は人間じゃないか!」」

「なぜ人間を連れてきた! 怪しい奴だ! 全員捕らえろ!」


 ちょ! 捕まえられる流れになってしまってるじゃん! やばいじゃん! かなりやばいじゃん!


「ちょっと待たぬか! わしは本当にメク・サマフォースじゃ! おぬしらが知らぬのなら、昔からおるエルフを連れて来い!」

「もう戯言は聞き飽きた! 後ろにいる人間ともども、一緒に来てもらう。まったく何をたくらんでいるのだか……」


 ど、どうすんだよメク! そう思いを込めた視線をメクに送る。メクもどうしたものか悩んでいるみたいだ。もうすぐで2分経つ、そうなるとどうしようもないぞ。

 捕らえられそうになった時、


「何を騒いでおる」


 誰かが来た。一際豪華な装備を身につけている女エルフだ。メクがその女エルフの姿を見た瞬間、「あやつは……」と呟いた。


「レマ将軍! 実は怪しいやつらが」

「ん? 怪しい奴ら……?」


 レマ将軍と呼ばれた女エルフが、メクを見たその瞬間。


「メ、メク様……?」


 信じられないものを見たかのような表情を浮かべて、呟いた。

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