第27話 冒険者生活
最初の依頼を達成してから20日ほど過ぎた。
それから、依頼を次々と達成する。最初の依頼ほど簡単な依頼はやらなかったものの、ブロンズランクの冒険者が受けられる依頼はたかがしれており、そこまで難しい依頼を受けられなかった。倒した魔物も全て弱い魔物だった。
そのため、そこまで大金が溜まったわけではないのだが、とりあえず1900ゴールドほど溜まった。
あと、1回依頼を達成すれば、情報を集めるのにうってつけの、南にある自由都市「ヴァーフォル」まで、行けるとメクは言った。
それと、依頼を遂行しているあいだ、魔物を何体も倒したので俺のステータスもかなり向上している。
ただし、弱い魔物では上げられるステータスに限界があるのか、ある一定の数値までいったら、いくら吸収しても、ステータスが上がらなくなった。
まあ、上がらなくなったステータスは防御とHPだけで、ほかはまだ上がる余地を残している。
弱い魔物はスキルを持っていないらしく、スキルを獲得する事はできなかった。
ただスキルポイントを使って、いくつかのスキルを強くしている。
ちなみに今の俺のステータスは、
名前 テツヤ・タカハシ
年齢 25
レベル 1/1
HP 350/350
MP 219/219
攻撃力 233
防御力 250
速さ 232
スキルポイント 13
スキル【死体吸収】【鑑定Lv4】【
耐性 【毒耐性Lv2】【雷耐性Lv1】【炎耐性Lv3】
HPが350、防御力が250でカンストしている。
先ほど弱い魔物を吸収しているから上がらないといったが、あれはあくまで予想である。というか願望と言ってもいい。
もしかしたら、この死体吸収のスキルは、上げることができる数値に限度がある可能性もある。
もしそうだったらかなりがっかりだ。まあ現状でもかなり強くなっているので、あんまり文句を言ってはいけないかもしれないが。
それとスキルだが、鑑定をレベル4まであげた。
鑑定を上げた事で、鑑定したものののHPとMPまで表示されるようになり、さらに説明が詳しくなった。
ほかのスキルもそれぞれ強化し、強くなっている。
しかし、自力で新しいスキルって習得できないものなのだろうか? 何か方法ないのかな? 今度メクに聞いてみよう。
○
早朝、俺たちは泊まっていた部屋から出て、一階の冒険者ギルドまで降りた。
「次がこの町で受ける最後の依頼か」
「にゃー、次はヴァーフォルって町に行くんだったかにゃ? どんな町なのにゃ?」
「そうじゃな。ヴァーフォルは人が多くて、規模もこの町の数倍はある。さらに世界中から本が集められている、世界最大の図書館がある。そこに行けば何か有力な情報を得ることが出来るかもしれんな」
「おっきい町なら、ここよりももっとおいしいもの食べれるかにゃー」
相変わらずレーニャは食べる事で頭がいっぱいのようだ。
まず、依頼を受ける前に朝食を食べる。
朝食は、マーマレードを塗ったパンに、コーンスープだ。朝はパン派だった俺は、元の世界でもこんな朝食をよく食べていた。
食べていると、ほかの冒険者の会話が耳に入ってきた。
「なあ、あの噂聞いたか? 勇者の噂」
「あー、人間の」
「そうそう、人間共が領地を取り返すために召喚した勇者。そいつらが、今、暴れまわって、既に城を6つ落としたらしい」
「らしいな。めちゃくちゃ強いらしくって、千人の軍勢を一人で叩きのめしたりしてるらしいだろ? やべーの出てきたな」
「強さだけでなく、乱暴らしいぜ。殺すのに全くためらいも無ければ、綺麗な女がいたら、片っ端から犯して、持ち帰っていくらしい。ふざけた奴らだぜ」
勇者。
あいつらか……
聞く話によると、やりたい放題やっているようだ。
やつらの話を聞くと、最近忘れてきていた、胸を締め付けるような黒い感情が、少し蘇ってきた。
「勇者か。人間共はそのような奴らを召喚したのか……ぬ? ど、どうした、テツヤ?」
「な、何か怖い顔してたにゃん」
どうやら、感情が顔に出てしまっていたようだ。俺は慌てて笑顔を浮かべ、
「な……何でもない」
と、誤魔化した。
「勇者と何かあったのか?」
「……」
誤魔化しきれなかったようだ。
どうしよう。話すか?
話してもどうなるものでもないけど、メクとレーニャは仲間だ。
俺の事情もある程度、教えたほうがいいかもしれない。
「実は……」
俺は話すと決め、勇者召喚に巻き込まれてきたこと、そして限界レベル1だから、谷底に落とされたこと全て話した。
「そのようなことがな……」
「ひどいにゃ! テツヤを追い出すにゃんて!」
「そうじゃな……限界レベルの低い者はどこでもひどい扱いを受けるは受けるが、低いから殺すというのは人間くらいじゃ。人間の限界レベルの低い者への仕打ちは、度を越しておるからの」
どうやら、人間は特別限界レベルの低い者を差別していたらしい。俺の受けた仕打ちはこの世界の基準からしても、理不尽なものだったようだ。
「お主は、勇者と人間を恨んでおるか? 復讐を考えておるか?」
とメクが尋ねてきた。
「どうだろう。確かにむかつくけど、復讐したいというほどじゃない。今はメクとレーニャがいて、毎日それなりに楽しいからな」
本心だった。確かに名前を聞くと黒い感情がわくが、抑えようと思えば抑えられる。
復讐したいとまでは思っていなかった。
「そうか。仮に復讐したいというのなら、元の姿に戻った後でよければ協力してやろうと思ったが、する必要がないならいいのじゃ。まあ、復讐は何も生まんからな。やらんでいいならその方がいいじゃろう。個人的にそのような理不尽な事をする輩は許せんので、叩きのめしてやりたいがの」
メクも俺を谷に落とした人間と勇者達に怒りを抱いているようだった。
メクとレーニャが、怒ってくれて何だか少し嬉しかった。
「それよりにゃ。テツヤはゆうしゃしょうかん? ってのに巻き込まれて来たって言ってたけど、召喚される前はどこにいたのにゃ?」
「そういえばそうじゃったな。わしも気になるぞ」
「えーと、日本だけど……」
「にほん?」
「聞いたことない場所じゃの」
「話すと長くなるんで、あとで話すよ。朝食も食べ終わったし、さっさと依頼を受けよう」
「にゃ~。気ににゃるにゃ~」
日本の話はまたあとでしよう。
俺達は席を立ち、貼り紙を見て、依頼を探す。
「これなんか良さそうだな」
「どれどれ? サマキ洞窟に生えている、サマキキノコを20本収集。報酬250G。結構報酬がもらえるの」
「サマキ洞窟ってどんなところにゃん?」
「あまり有名でない洞窟なので詳しくは知らんが、たいした敵はいないじゃろう。それで、これだけ報酬がもらえるのは、中々いい依頼じゃぞ」
「じゃあ、ここに行くか」
俺達はこの街での最後の依頼を達成するため、サマキ洞窟に向かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます