限界レベル1からの成り上がり ～廃棄された限界レベル1の俺、スキル【死体吸収】の力で最強になる～

第23話 圧勝

「サテ……最初に邪魔なのを潰しておくカ」

　巨人の男、確かグーヴァとかいったか。

　そいつが俺を見てそう言ってきた。

　巨大な手で俺に殴りかかってくる。

　……遅い。

　俺は拳をあっさりと避ける。

「ナニ！？」

　グーヴァは驚愕している。

　いや、あんな適当なパンチ避けただけで、そんなに驚かれても。

　俺は反撃する前に、少し考えた。

　スキルの使用は、実は禁じられていない。

　魔法だろうがスキルだろうが、何でもありだそうだ。

　ただ、殺すのはさすがに嫌なので、【隕石（メテオ）】やら、【強酸弾（アシッドショット）】などは使えない。【吸い取り糸（アブソーブスレッド）】では、倒すまでに無駄に時間がかかるし。

　普通に殴って倒せるか？　と、どう攻撃したものか悩んでいると、ライカンスロープのバルガスが、後ろのほうから俺を蹴ろうとしていた。

　避けきれず喰らう……が、まったく痛くはなかった。

　本当に全然痛くない。ちくりともしない。

　逆に蹴ったバルガスが、「痛ええええええ！」と足を押さえながら痛がっているくらいだ。

　何かこれ、想像以上に力の差がありそうだな。

　思わぬ戦闘の展開に観客から、

「何やってんだてめぇーら！」「さっさと潰せ！ 限界レベル1のゴミなんか！」

　と野次が飛ぶ。

「てめぇ……いったいどういうトリックを使いやがった」

　バルガスが睨みながら、俺に向かってそう言った。

　トリックも何も、普通に突っ立ってただけなんだけどな。

　これほど、実力差があるならスキルもいらないし、本気で殴る必要も無いな。

　軽く顎の辺りを殴るか。

　俺はバルガスとの距離をつめる。

　バルガスが俺を認識したとき、すでに俺は懐に入り込んでいた。

　そして、軽く顎を殴る。

　すると、

「ガハッ！」

　とバルガスは声を上げながら、上に向かって吹き飛んで、地面に落ちる。

　完全に白目を剥き気を失っているようだった。

　何か思ったより吹き飛んじゃった。やりすぎたかも。

　観客がザワザワと騒ぎ始める。

　まったく想定外な展開なんだろうな。

　さて、次は巨人のグーヴァか、人間のサーメルか。

　一瞬でバルガスがやられたのを見て、二人ともかなり動揺しているようだ。

　とりあえず近くにいた、グーヴァから倒そう。

　俺はまず、グーヴァの足元に近づく。相手はまったく反応できず、俺を見失っている。

　そして、脛の辺りを軽く蹴る。「いダっっ！」と痛みにグーヴァは悲鳴を上げて前のめりに倒れこむ。巨人も脛は弱点のようだ。

　倒れたグーヴァの首の辺りにのり、後頭部を軽く殴る。さっき、バルガスを殴ったときより軽く殴る。

　すると、一瞬ピクッとなりそのまま動かなくなった。気を失ったようだ。

　俺はグーヴァから降りて、最後の敵であるサーメルに標的を移す。

　サーメルは動揺から立ち直っていたみたいで、

「炎弾よ！　燃やし尽くせ！」

　と呪文を唱え、大きな炎の弾を俺に向かって飛ばしてきた。

　少し、回避するのが遅れて、当たってしまう……のだが、これも全くのノーダメージ。

　炎耐性Lv3持ってるからな。この程度の炎属性の魔法では、俺には一切ダメージが通らないみたいだ。

　サーメルは信じがたいものを見るような目で俺を見ながら、

「お、俺の最強の魔法が……！」

　と震えながら呟いていた。

　その後、何度も同じ魔法を俺に向かって放ってくる。

　避ける必要は無い。俺は炎の弾を体で受け止める。3発ほど当たったが、当然無傷。

　俺は無言でサーメルに近づいて、殴るそぶりをすると、

「ま、参った！」

　と降参した。

　俺の勝ちが決まった瞬間、地下闘技場は静寂に包まれる。

　観客は全員、信じられないものをみるかのような目をしていた。

「しょ、勝者テツヤ・タカハシ……」

　俺の勝利を告げる声だけが、その場に響いた。