第22話 戦闘開始

 参加する意思を告げると、受付の親父は、


「そっちの姉ちゃんは?」


 レーニャにも参加するかどうか尋ねてきた。


「あ、不参加です」

「兄ちゃんだけか……分かった、入れ」

「待て、何でわしには参加するかどうか聞かんのじゃ!?」

「どう見ても戦えるような姿じゃねぇだろうが」

「ぐぬぬ。まあ、別に不参加だから良いがのう……」


 メクは不満げな表情を浮かべていた。


「観戦は出来るのか?」


 メクが尋ねた。


「ん? 見るだけならタダだぜ、参加者と見物客は入り口が違うから、こっちから入れ」

「分かったのじゃ」


 俺と、メク、レーニャは、別の階段で地下に降りた。



 参加を決めた後、名前などを聞かれ、俺はテツヤ・タカハシと普通に答えた。

 その後、ルール説明をされた。


 地下闘技場での戦闘のルールは4人で乱闘をし、最後に立っていたものの勝ち。


 勝ったものに賞金1000ゴールドが入ってくる。


 殺しても問題ない。とにかく、戦闘継続が不可能な状態に相手を追い込めばいい。


 それと、参ったと一言いえば戦闘継続の意思なしと判断され、その時点で負けとなる。


 勝てる見込みのない場合は、自分の命を守るため参ったと言え、と忠告された。

 9割くらいは、参ったと言ったものには攻撃してこないらしい。


 逆に1割は攻撃してくるのかよと俺は思ったが。


 そして、案内されて控え室に行く。

 特に着替えなどはせず、このまま出ていいらしい。


 時間が来たら合図をするから、その時まで待っていろと言われる。

 それで数分経ち。


「おい、出てこい!」


 と合図があり、俺は出口を出て闘技場に出た。


 そこそこ広い空間だ。

 鉄格子で囲まれており、そこから観客たちが見ていた。

 レーニャとメクの姿を発見。レーニャが手を振ってきたので、俺は振り返した。


 対戦相手の3人が出てきている。


 全員男。

 狼の耳が生えたかなり毛深い獣人。

 普通の人間より一回りもふた回りもでかいやつ、多分巨人かなこいつは?

 それと人間の男がいるが、こいつはあまり強そうではない。


 巨人が正直強そうだけど、ジャイアントゴーレムに比べると、大きくはないし。

 とりあえず、全員鑑定しておくか。


 まず狼の獣人から鑑定、


『ライカンスロープ 個体名:バルガス 28歳 Lv.27/27

 狼の獣人。弱るとただの狼になる』


 続いて、巨人の男。


『ジャイアント 個体名:グーヴァ・サヴェルヴィン 44歳 Lv.23/24

 巨大な種族。パワーは桁外れに高い』


 最後に人間の男。


『人間 個体名:サーメル・エスリン 24歳 Lv.30/30

 頭が良く魔力が豊富な種族』


 人間の男が1番レベルが高いのか。

 まあでも、めっちゃレベルが高いやつはいないか。

 レベルはあくまで目安だから、実際どれくらい強いかは不明だけど。


 限界レベルとレベルの差が、野生の魔物たちより少ないな。


 野生の魔物たちは知恵がないから、効率よくレベルを上げるということが出来ないのだろう。


「お前見ねぇ顔だな」


 ライカンスロープの男が、そう言ってきた。


「人間カ。弱そうだナ」


 今度は巨人の男が、ニヤッと笑みを浮かべながら言ってきた。


 あんまりいい奴らではなさそうだな。

 まあ、その方が変に遠慮せずに戦えるから、いいけど。


 そう思っていると、


「……待て……こいつ限界レベル1じゃねーか!」


 人間のおとこが俺を見ながらそう言ってきた。


 なんだ? 知らぬ間にレベルでも見られたのか?


 男の声に、ほかの2人の対戦相手と、観客が驚き、ざわざわとし始める。

 最初は、限界レベル1で戦いに出るなんて、命知らずな真似するわけないだろう、みたいな感じの声が大きかったが、


「ほんとだ……本当に限界レベル1だあいつ」


 と、観客からも俺の限界レベルを見たものが、何人か出てきはじめる。

 何を使っているのかは知らんが、限界レベルって簡単に見れるのか、その割には受付の時に調べられなかったな。


 俺の限界レベルが1だと信じ始めてきた、観客も対戦相手も、マジかよこいつ……みたいな若干引き気味の表情で俺を見てきた。

 そして、表情が変わりはじめ、


「はははははは! マジかよあいつ! 限界レベル1!?」

「ゴミクズじゃねーか! マジで出るのか!?」

「ははは、さっさと、逃げた方がいいぞー!」


 と俺を嘲笑うような声が、観客と対戦相手から次々と上がってきた。


 限界レベル1ってのは、だいぶ嘲笑の対象になっているんだな。


 たぶん、この世界の人々は、他人のステータスはそう簡単に見れないから、簡単に見れるレベルで、相手の強さを全て判断しているんだと思う。


 それで、レベルが低すぎるもので、強いものってのはまずいないから、こうやって嘲笑われているんだろうなぁ。


 まあ、笑い声は、若干不快ではあるが、敵がものすごく油断しているようなので、良しとするか。


「オイお前、すぐ降参した方がいいゾ? 俺は手加減ができん男だからナァ」


 巨人の男がニヤニヤと、俺を思い切り見下すような目で、そう警告してきた。


「そうそう。俺は一応手加減できるけど、そいつは出来ないぜー? 死んじまうかもよ?」


 ライカンスロープの男も、一緒になって忠告してくる。

 まあ確かに細かい手加減などできなさそうだが。


 気の利いた返しが思い浮かばなかったので、俺は無視した。

 すると、巨人の男は、


「どうなっても知らねーゾ」


 と言ってきた。


「まあ別に限界レベル1のゴミがどうなろうと、知ったことではないか」


 興味を失ったように、ライカンスロープの男がそう言った。


 やっぱすげー下に見られてるのな、限界レベル1ってのは。


 ちなみに試合開始前に誰が勝つかを予想する、賭けが始まった。

 俺のオッズが凄まじい高さになっている。

 ただ俺に賭けている奴が、一応1人はいるみたいだ。


 レーニャとメクは、金を持ってないので、もしかしたら賭ける奴1人もいないか? と思っていたが、超大穴狙いの奴がいたみたいだ。


 そして、試合開始を告げるゴングが鳴って、戦いがスタートした。

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