第21話 メーストス

 メーストスの町に着いた。


 不思議な雰囲気の町だ。

 俺の想像していた、異世界の町とは少し違う。

 西洋風の家もあるのだが、見たことの無い変わった感じの建物もある。


 町を歩いている人たちは、耳がとんがっているエルフがいたり、レーニャと同じく獣人がいたり、人間がいたり、角が生えた鬼みたいな者もいたりと、とにかく多種多様だ。


 そのせいか、動き回っているぬいぐるみであるメクも、特にめずらしいと思われていないようで、皆スルーしている。


 とにかく、町には着いた。着いたはいいのだが。


「さて、町に着いた……が、何をやるにしても、我々には金が足りておらん」

「つーか無一文だしな」


 そう、俺達は一切金を所持していなかった。

 当然の話だが、金が無ければ飯も食えなければ、住む場所もない。

 俺の右手に刻まれた、正体不明の刻印のことを知るのにも、金は必要だろう。


「お金ないと、ご飯食べれにゃいにゃ?」

「当然」

「うにゃ~」


 レーニャが悲しげな目で俺を見る。


 うーん、どうにかして稼がないと。


「金を簡単に稼ぐ方法ってなんだ? 冒険者になるとか?」

「冒険者か……悪くは無いが、今すぐ金を得るには少し時間がかかる。ダンジョンに行って魔物を倒したりせねばならんからのう。今日の宿泊費や、食費を稼ぎたいところじゃろ? まあ、わしは、何も食わんでもいいし」


 そうだな。もう少し簡単に稼げる方法がいいな。

 俺は何かないかな? と周りを少し見回してみる。

 すると、


「あれは……」


 俺は近くにある建物の看板に目をつけた。


 地下闘技場、飛び入り自由、勝者には賞金1000ゴールド。


 看板にはそう書かれていた。


「メク、地下闘技場ってのがあるんだけど」

「ぬ? ああ、あれなら今すぐ、金を稼げそうじゃが……ただ、参加費用がかかるのではないかの? あの手のものには、あまり詳しくないので分からぬが」

「そうか……1回入って聞いてみるか」


 俺は、建物の中に入った。


 中にはスキンヘッドのコワモテの男が、受付をやっていた。


「見ない顔だな。飛び入り希望者か?」

「そうです」

「参加費用は200Gだ」


 やっぱり金がいるのか。

 少し残念がっていると、そんな俺の態度を見て金が無いのを察したのか、受付の男は、


「金が無い場合は、自分の体を賭けてもらう」


 と言ってきた?


 体って? なんかやばそうだな……

 奴隷にされるって意味か?


 まあ、勝てばいいんだけど……負けるのは……

 少し悩んでいると、


「お主のステータスなら、負ける事はまずないじゃろう。受けるべきじゃな」


 メクがそう言ってきた。


「本当か?」

「ああ、間違いない」


 メクが言うのなら、間違ってはいないかな。


「アタシも戦うにゃ!」


 とレーニャがやる気を出すように、ファイティングポーズを取る。


「待て待て、お主の場合は万が一負ける可能性がある。今回はやめておけ」

「にゃー」


 メクがそう言って参加を止める。

 俺としても心配なんで、レーニャは今回は見ていてほしい。


「そういえば1000ゴールドって、どのくらいの価値なんだ?」

「お主なぜその程度の事も知らんのじゃ。世間知らずなのか? 1000ゴールドあれば、1人なら20日は生きるのに不自由しないぞ」

「じゃあ、3人だから7日は生きていけるか」

「待て待て、わしは飯を食わんでいいぶん、お主らより金はかからん。宿泊費はかかるかもしれんがな」

「あ、そっか」


 とりあえず、それだけあれば十分だな。

 俺は受付の親父に


「俺、参加します」


 と言った。

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