第17話 ジャイアントゴーレム

 俺たちは洞窟の出口に向かって進んでいく。


 先ほどの黒い騎士への恐怖は覚めておらず、口数少なく歩いていた。


「そうだ。もしかしたら、さっきの黒い騎士、ジャイアントゴーレム倒したんじゃないか?」


 俺はふとそう思ったので、呟いた。


「……確かにのう。ジャイアントゴーレムは出口付近に居座っておるから、倒さねば入ってこれんし……倒したとしか考えられるぬな」

「じゃあ、戦わないでいいのにゃー?」


 倒されていたのならラッキーだ。

 意外とあの黒騎士がここに来ていたことは、ラッキーなことだったかもしれない。


 そう思って、出口の方に歩いて行ったのだが、


「いるな……」


 出口付近ジャイアントゴーレムを発見。

 方法は不明だが、あの黒騎士はゴーレムを倒さずにこの洞窟に侵入したらしい。


 馬鹿でかい、人型の岩を発見。


 一目見てアレがジャイアントゴーレムだと分かった。

 3階建ての家くらいの高さがある。


「あ、あれがジャイアントゴーレムでいいんだよね……?」

「そうじゃ」

「倒せるのあれ……」

「大きさから与えられる印象ほどの強さはない」

「そうなのか?」


 俺は鑑定してみる。


『ジャイアントゴーレム 33歳 Lv.42/46

 岩で出来た巨大な魔物』


 相変わらず見れば分かるという説明はさておき、レベルは今まで見た魔物の中で、1番高い。


「レーニャ。【獣化ビーストモード】を使うのじゃ」

「うにゃ~……やっぱりあれを使う必要があるかにゃー。疲れるから嫌いにゃんだけどにゃー」

「なんだ【獣化ビーストモード】って?」

「獣人が使える固有のスキルじゃ。獣のようになり、ステータスが一定時間大幅にアップする。じゃが、効果が切れたら、反動でしばらく動きが大幅に鈍くなり、まともに戦闘を行えなくなる。レーニャが獣人と化しているあいだに倒すのじゃ」

「どれくらいなの?」

「10分くらいじゃな。まあ、いけるじゃろう」


 いけるか? 10分。

 ここは、メクを信じよう。


「じゃあ、行くにゃー! にゃぁぁぁああああ!」


 レーニャが大声でそう叫び出す。

 すると、全身から黒い毛が生えてきて、猫というより、少し大きめの真っ黒い虎というような姿になる。


「にゃああああああああああ!」


 レーニャがジャイアントゴーレムに向かって突撃する。声質は今までと変わらない。


 レーニャに気付いたジャイアントゴーレムはゆっくりと立ち上がる。


「テツヤ。奴の胸の辺りにある、赤い球体が見えるか?」


 メクがそう言ってくるので、俺はジャイアントゴーレムの胸の辺りを見る。

 確かに赤い球体がある。


「あれは、ゴーレムコアというものじゃ。あれを壊せば奴は死ぬ」

「分かった、あの赤い球体を狙えばいいんだな」

「いや、そうではない。あの赤い球体は見えない結界で守られており、そう簡単に攻撃が通らないようになっておるのじゃ。なので、その前に奴の頭を攻撃する。ゴーレムの頭は全身の動きを統率する機能があり、頭に強打を加えられると、それが狂い結界を解いてしまうのじゃ。なので、まずはお主の【隕石メテオ】を奴の頭に落とすのじゃ」

「分かった」


 妙に詳しいなと疑問に思いつつ、俺は【隕石メテオ】を奴の頭に落とそうとする。


 が、出来ない。

 奴がでか過ぎるせいで、いくら天井が広いこの洞窟とはいえ、落とすスペースが足りないのだ。


「ごめん、奴がでか過ぎて、落とせないみたい」

「なぬ?」

「どうしよう」

「……そうじゃな。ならば、奴の足を攻撃して膝をつかせれば、落とせそうか?」


 それならいけそうだと思っていたので、俺は頷いた。


「レーニャ! そやつの足を攻撃して、膝をつかせるのじゃ!」

「分かったにゃー!」


 レーニャが返事をする。


 後ろに回りこみ、レーニャはジャイアントゴーレムの足を攻撃しようとする。


 ジャイアントゴーレムは、両手を横に伸ばし、一回転して、攻撃してくるレーニャをなぎ払った。


「うにゃ!」

「レーニャ!」


 攻撃を受け吹き飛ばされるレーニャを見て、俺は思わず叫ぶ。


「あの状態のレーニャはそうそうやられん」


 メクの言うとおり、レーニャは元気よく立ち上がった。


「しかし、簡単に隙を作ってくれんのう」

「俺がいったん敵をひきつける」


 そう言って俺はゴーレムの前に出る。

 そして【炎玉フレイムボール】を撃ちゴーレムを攻撃した。


 ジャイアントゴーレムの視線が俺のほうに向く。

 レーニャは俺の意図を察したのか、少し下がる。


 俺は何度も【炎玉フレイムボール】を撃つ。


 ダメージは無いみたいだが少し苛立っているようだ。

 敵は足を上げて、俺を踏み潰そうとしてくる。


 そして、その時、ゴーレムの背後からレーニャが突撃。

 上げていない足のほうに全速力で走っていき、思いっきり突進した。


 ゴツ! と言う音がする。

 ゴーレムはバランスを崩して倒れ始めるが、レーニャは大丈夫なんだろうか?

 結構平気そうだった。普通に走って倒れるジャイアントゴーレムを回避する。


 そして、俺は【隕石メテオ】の魔法を倒れたジャイアントゴーレムの頭に落とした。


 ガシャアアアアン! という轟音が鳴り響く。

 スキルレベルが1上がった事で、威力がだいぶ上昇している。


 頭を強打したジャイアントゴーレムは、しばらく動きが止まる。


「今じゃ! 胸の球体を攻撃するのじゃ!」


 俺は【炎玉フレイムボール】をジャイアントゴーレムに当て、そしてレーニャが鋭い爪で球体を攻撃した。

 すると、球体は割れる。


 その瞬間、ジャイアントゴーレムはガラガラと崩れ出し、ただの大きな石くれになった。


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