第3話 追放

 限界レベル1?


 まさかの1?


 マイナスなんてないだろうし、1って一番低いんだろ?

 


 じゃあ俺はこの世界じゃ最弱の存在って事?


 ざわざわと、周囲の人間が騒ぎ出す

 先ほどのざわめきとは、また違った種類のざわめきだ。


「ふざけるな! 限界レベル1じゃと!?」


 王様の怒声が響く。

 あまりにも大きな声だったので、俺は身を怯ませる。


「欠陥品ではないか! そのようなものが我が王宮にいること自体が非常に不愉快じゃ! 即刻処刑せよ!」


 は? は!?


 え? なに言ってんのあのおっさん。

 処刑って、え? 殺すって事?


 は? おかしいだろ! 好きで召喚されたわけじゃないんだが!? お前らが勝手に召喚してきたんだろ!?


 あまりに理不尽な展開に俺は絶句する。


 しかし、王の家来たちは、その命令に疑問を持つどころか、すみやかに遂行しようと、剣を構えて俺に近づいてくる。


 俺はあまりの展開に身動きすら取れない。


「待て待て! ここを欠陥品の血で汚す気か! そのようなものは近くにある、死の谷にでも落としてしまえばいい」

「はっ」


 家来は剣から手を下ろし、今度は俺に近づき、何の抵抗も出来ない俺を抱え上げてきた。


 あっさりと担ぎ上げられる。

 そのまま、俺をどこかに連れて行こうとする。


 死の谷に落とすって、はぁ!? 本気で言ってんのか!?


 それ確実に死ぬだろ!? 異世界に来ていきなり殺されんの俺!?


 俺は抵抗を試みる。

 しかし、凄い腕の力でロックされており、どれだけ抵抗しても無駄だった。


「た、助けて……!」


 泣きそうになりながら、不良たちを見てみると、あざ笑うような目で俺を見ている。

 そりゃそうだ。あんなクズみたいな連中が助けてくれるわけない。


「ま、まま待ってください!」


 そう思ってたら、女の子がそう大声を出して、制止した。

 彼女は涙目で震えながらも、


「こ、こここんなのおかしいです。い、いきなり殺そうとするなんて……その人を離して下さい!」


 そう叫んだ。


 よ、良かった。俺にも味方がいた。


「そ、そうだ! おかしいだろ! なんで俺が殺されなきゃならないんだ!」


 俺も必死で叫ぶ。


「あなたがたの世界にはレベルという概念がないのでしたね。この世界ではレベルの上がらない存在に価値はありません。レベルが上がらなければステータスが弱く、さらに『スキルポイント』を得られないので、スキルも獲得できません。初期スキルというものもありますが、人間の場合、強い初期スキルを持って生まれてくるものはおりません。限界レベルが低いものは欠陥品なのです。なので、この国ではレベルが一桁のものは廃棄することになっているのです」


 ミームは無表情でそう説明した。


「そ、そんな欠陥品だなんて……」

「納得できませんか。あなたは勇者でないので納得させる必要はございませんね。ただ、勇者である四名の中に、あの欠陥品を救いたいという方がいるのなら、特別に延命させてもいいでしょう。王様、よろしいですか?」

「まあ、勇者殿たちの機嫌を損ねるのは、困るからのう。殺すのが嫌なら生かしてもよいが」

「だそうです。で? どうですか? 勇者様たちの中に、彼を処刑するのは嫌だという方はおられますか?」


 何だかまずい展開に……

 いやいや、奴らだって同じ日本で育った人間じゃないか!

 見知らぬ人だろうと、人が殺されるのに抵抗は持っているはずだろ!?


 そう俺は淡い期待を抱く。


 長髪のリーダー格の不良が、


「そうだなぁ……人が死ぬってのはなぁ……出来れば助け……」


 思いが通じたか!? 俺がそう思ったのも束の間、


「ははは、何て言うかボケェー! そいつ、うぜーからぶっ殺しちゃって!」

「レベル1だって! ははは、ゴミは異世界に来てもゴミなんだな! さっさと死んだほうがいいよマジで! おっさんの人生なんて生きる価値ないんだからさ!」


 ほかの不良も同じく、俺の死を望んだ。


 何だこいつらは。なんで平気で笑っているんだ。

 死ぬんだぞ本当に。

 分かってんのか? 人の命をどれだけ軽く見ているんだ?


 言いたい事は色々あったが、悔しさのあまり何も口に出来ない。


「そうですか。では、予定通り死の谷に落としてきてください」

「了解」


 再び家来の男は歩き出す。


「待ってください! おかしいですこんなの!」


 少女が止めようとするが、その後、剣を首元に突きつけられ、


「これ以上とめようとするのなら、あなたも死にますよ?」


 脅される。少女は「ひぃ!」と悲鳴をあげその後、動けなくなった。


 そのあと、助けなど来ず、俺は王宮を出て谷まで運ばれた。





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