第2話 限界レベル1

「ようこそ、勇者の皆様。あなた方は、大秘術、勇者召喚によってこの世界へと召喚されました」


 俺はその言葉の意味を少し考える。


 勇者召喚。

 アニメやラノベ、漫画でよくある展開だ。


 いわゆる、異世界召喚ってやつだろう。

 

 異世界にいけたらなー、なんて事は、確かに妄想していたが、現実に起こると混乱する以外にない。

 

 つーかこの状況は現実なのか? 夢なんじゃないのか?

 仮に現実なら、異世界召喚されたとでも考えなければ、説明がつかないが。


 ローブを身につけている女性は、さらに話を続ける。


「私はアーバス王国に仕える魔術師のミームと申します。この国は現在危機的状況に陥っており、このままでは滅亡してしまいます。そこで、私が王命を受け、勇者召喚で皆様を召喚したのですが……おかしいですね。召喚したのは4人だけだったのですが、何故か6人……まあいいでしょう話を続けます」


 その後、ミームは詳しい説明を始める。


 この世界には、エルフやドワーフ、オークなどなどの、多種類の種族が住んでおり、その複数の種族たちが限られた土地を奪い合い、年から年中戦争をしているらしい。


 そんな中、人間は戦いに負けに負けまくって、領地がものすごく少なくなっているらしく、もはや滅亡も時間の問題という状況らしいのだ。


 そこで、窮地を脱すために、俺たちに戦って欲しいとミームさんは言ってきた。

 

 戦えと頼まれているが、戦いなんて俺に出来るわけないし、そもそも、なんで言葉通じているの? とか、とにかくいろいろ言いたい事はあったのだが俺は何も言えない。


 俺は何も言えなかったが、金髪の不良は、ミームを睨みつけながら、


「ふざけんなーてめー! 今すぐ帰せ!」


 と脅すように言った。

 その脅しを受けてもミームは表情を変えず、

 

「申し訳ありません。元の世界に戻すのは現時点では不可能です」


 そう言った。

 

 その後、戻せない出来ない理由をミームは話す。


 話によると、勇者には帰還目標が定められているらしく、それを達成したら自動的に元の世界に戻されるが、達成しなければ絶対に戻れないらしい。


 ちなみに帰還目標は、人間の領地の復活。

 元々の人間領は今の数十倍はあったらしく、それらを全部取り戻す事が出来たら、元の世界に帰れるらしい。


 納得はいかなかったが、俺は文句を言えなかった。


 不良たちは「ふざけんなよ!」「ぶっ殺すぞ!」とか、しばらく文句を言っていたが、根気よく説得されていったん静かになる。


「それでは皆様の限界レベルを調べさせていただきます」


ミームがそう言った。


「限界レベル?」「なんだそりゃ?」


不良たちが聞き返す。


「まずレベルから説明しましょうか。レベルは戦闘や訓練をつむことで上げる事の出来る数値です。上げればステータスが上がったり、スキルを獲得したりして強くなれます。レベルは無限には上げられません。生まれつき上げられる限界値があります。それが限界レベルです」


 何かレベルとかステータスとかゲームみたいだな。


「勇者として召喚された方は、限界レベルが普通の者より遥かに高くなります。そのため強力な力を使う事が出来るようになります。ちなみに勇者として召喚された方は、最初のレベルが限界レベルの半分の数値になっております」


 ふーん。それで俺たちが呼ばれたのね。


「では、調べますね。『レベルサーチ』の魔法を使えば、レベルは簡単に調べる事が出来ます」


 ミームは「レベルサーチ」といい、金髪不良の限界レベルを調べようとする。すると、


「おー! 召喚には成功したのか!」


 大きな男の声が響き渡る。


 なにやら豪華絢爛な服装をして、王冠を被っている中年の男が部屋に入ってきた。


「国王陛下!」


 その場にいる、者が全員、頭をたれる。

 あのおっさんが、この国の国王みたいだ。


「よいよい。それより、この若造たちが我が国を救ってくれる、勇者なんじゃな、4人と言う話じゃったが、6人おるのう」

「原因はよく分かりませんが6人召喚されました。今から限界レベルを調べるところです」

「よいよい、数は多いほうがいいじゃろ! ワクワクしてきたわい」


 国王は王座に座る。


「さて、気を取り直して、限界レベルを調べましょう」


 ミームは限界レベルを調べ始めた。


「おお! あなたの限界レベルは99ですね!」


 ミームが驚きの声を上げる。

 周りで見ていた人たちからも歓声が上がる。


「素晴らしい数値です。ちなみに人間の平均的な限界レベルは25で、どんなに高くても60が限界点です。99はとんでもない数値ですよ」


 ミームは嬉しそうに言いながら、ほかの不良たちの限界レベルを調べ始める。


 95だとか98だとかどれも高い数値だ。


 一番高かったので125。ちなみにその数値を出したのは長髪の不良で、恐らくリーダー格なのか、やっぱ「山ちゃんはすげー」とかキラキラした目で、ほかの不良たちに見られている。


 次に、少女の限界レベルを調べる。


「ん? 48ですか。おかしいですね。高いですが、勇者の数値としては低すぎます」

「どういうことじゃ?」


 王様に聞かれてミームは少し考え、


「どうやら、勇者なのはこの4人だけで、ほかの二人は召喚に巻き込まれただけだったみたいですね」


 と結論を出した。


 は? それってどゆこと?

 俺は、強くないってこと? つーかそれって帰れるのか?

 

 や、まあ、俺は元の世界でも底辺中の底辺だったから、新しい暮らしになると思えばありっちゃありだが、この女の子はかわいそうじゃね?


「そうかそれは残念じゃのー」

「こんな例は初めてですが。悪い事をしてしまいましたね、帰す事はできませんし……」


 いやいや、悪い事をしてしまいましたね、じゃねーだろ!


「まあ、48なら十分高レベルじゃし、その子にもついでに戦ってもらえばよかろう。帰せないんじゃ仕方ないしの」

「そうですね」


 マジかよ。戻れないのに戦うのか? よく分からん異世界の国のために?

 まあ、この女の子も俺と一緒で、自己主張が激しいタイプじゃないだろうから、流されて戦う事になるかもな。


「では、あなたも勇者ではないでしょうが、限界レベルを調べさせていただきます」


 ミームが最後に俺の限界レベルを調べる。

 

「……これは」

 

 ミームは驚いたような表情を浮かべる。

 何だ? そんなに凄い数値になったのか? と思っていると、


「……限界レベル1です」

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