六十九日目・昼~七十五日目・昼
文字通り、凍りついたように静かな砦の地下は、転ばないように歩くだけでも一苦労だ。壁に寄り添いながら、ゆっくりと階段を下っていく。
下りきると、大きな部屋に出た。向かいには、豪華に装飾された両開きの大扉が見える。それを守るように中空を漂っているのは、淡く光る謎の球体。魔法生物、フォスファースフィアだ。
加えて部屋の中には、なにやら意味ありげな魔法陣が三つ描かれている。あの魔法生物と関係しているかもしれない、詳しく調べるために見識判定───ピンゾロしないでくださいエルシオンさん。『合法的に50点稼ぐチャンスだ!!』とか言ってる場合じゃないんですよ。
ともかく、戦闘開始だ。先制は取られるも、〈ブレードスカート〉でカウンター……した場合って、『毒の体物質』の判定はどうなるんだろう……?
……『自身の手番の終了時に』と書いてあるということは、こちらの手番中に殴らなければセーフということで、ノーダメージでいいのかな。オーケー、じゃあこちらの手番───何もしない。お前はブレスカだけで殺す。覚悟の準備をしろ。
敵の五手目、無事爆発四散。いやあ、ここへ来て〈ブレードスカート〉がこんな役立ち方をするとは思わなんだ。クルツホルムに着いてすぐこれを買ったのは、本リプレイ最大のファインプレーだったんじゃないだろうか。
自画自賛しつつ、大扉を開くと、今いた大広間とは比べ物にならないほどに大きな空洞が、目の前に広がった。
その中央の空間に、巨大な氷の球体が浮かんでいる。フォスファースフィアや、その近似種ではなさそうだ。……近寄ってみると、その中には、輝く羽を持った美しい少女が囚えられていた。
エルはこれでもれっきとしたフェアリーテイマーだ。彼女こそが妖精姫・ムーンライトプリンセスであると自信を持って断言することが出来た。迷うこと無く、彼女の前で〈妖精姫のティアラ〉を掲げる。
すると突然、ティアラが金色の光を放ち、球体に向かって吸い込まれていく───それと同時、氷は溶けてなくなり、少女が目を覚ました。
「お礼したいから後で妖精の門まで来てね」とだけ言うと、彼女は姿を消した。よし、これでスカディからの依頼も無事完了だ。
それじゃあ、言われた通り門まで戻るか……と言いたかったのだが。タイムリミットまであと十日を切っている。いい加減、オクスシルダに到着するまでのルートとその必要日数を前もって確認しておくべきだろう。という訳でさんすうのじかんだ。
現在時刻、六十九日目の夜。現在地点が凍原6。ここからまっすぐ門を目指したとして、着くのが七十一日目の昼。
で、クエストの報告をして最後の成長処理を行いたいので、そこからリイネスまで一度戻っていって……七十三日目の夜に到着、そこから列車でオクスシルダを目指せば、七十五日目の昼に最終決戦に挑める形になる。二日も余裕があれば、多少足止めを食らってもなんとか間に合うか。ならば問題無し。
まずは監視哨に寄っていって、コロッサスの破壊を報告。……はい。魔域の脅威度が二度と計れなくなったこともご報告させていただきます。
一泊して、翌日妖精門へ。妖精姫から御礼の品として、なにやら凄そうな宝石をいただいた。ルルブにもETにも載ってないやつだな……詳細みてみるか。
…………????(書いてあることが滅茶苦茶すぎて宇宙猫の顔になる)
なんでこんなヤバいアイテム四個もくれたのこの人??救済措置にしたってバランスぶち壊しすぎてない??
……うん、流石にこれを使ってしまうとヌルゲー化が半端じゃなさそうなので、丁重にお返ししておきましょう……こんなもんがあったら【ヒールスプレー】くん泣いちゃうよ……
妖精姫様に別れを告げ、森を反時計回りに進む。魔神の大群を二回ほど退けて、予定通り七十三日目の夜、リイネスに到着した。
クエストの報告と、それから貯めにためた〈アビスシャード〉と〈悪魔の血〉を納品。★30個に、討伐経験点とピンゾロボーナスを合わせて7620点を獲得。これを使って最後の成長処理に入る。
成長は精神が上がった。22か……ラルヴェイネシリーズを装備しまくって、ボーナスを4にしても良さそう、か?
技能の成長は、まずはフェンサーを11に。エンハを4にして【マッスルベアー】を習得、火力の底上げを図る。残り1240点……【エンチャント・ウェポン】や【プロテクション】が役に立つかもしれないので、コンジャラーを取っておくか。
戦闘特技は……今更装備習熟を取ってもなぁ、というのと、ラスボス戦にあたってちょっとした理由があるので、ここは《頑強》を選択する。
続いて、装備更新についてを考えよう。正直、回避力はかなり余裕があるので、〈アラミドコート〉で回避を稼ぐよりも、〈荊のローブ〉で更にカウンターダメージを加速させてやろうかな、と思いついた。我ながらクソみたいな戦い方をするPCだなこいつ。
ついでに、弱点を突いたらもっとダメージを伸ばせたりしないかな?と考えて〈ウィークネスリビーラー〉も購入。1ラウンド目だけこれを使って、その後は今まで通り〈ヘビーマレット〉で殴るとしよう。
ほか、装飾品も色々と入れ替える。〈ラル=ヴェイネのマナリング〉〈ラル=ヴェイネの肩掛け〉などを買い揃え、精神抵抗力を上げつつ戦闘能力を上げた。特にマナリングは、〈カースレベリオン〉と合わせて+5点になるため、適当な攻撃魔法を撃つだけで、半減されてもそれなりにダメージを稼ぐことができる。
ブレスカとローブに乗らないのは残念だが、まぁ乗ったら強すぎるな。そんな仕様だったらブレスカローブフェンサーワントップ構成が最適解になるまである。
その後、最終決戦に必要のない装備品を売り払い、その金で〈消魔の守護石(5点)〉を四個購入。緑Sを買うべきか、とも悩んだが、なるべく賦術の枠はクリレイに割きたかった。回復はアレクサンドラ様か妖精魔法にお任せの方針で。
最後に、リイネスに来た最大の理由である情報収集を行う。元冒険者・ウルシュマの消息についてを聞き込み、本人を直撃。「アレクサンドラが使ってた槍か?欲しければ譲ってやるぞ。三万ガメルでな」とのことなので、即決で購入。
これで魔槍・〈ミュラッカ〉をエルも使えるように……はならないが、アレクサンドラ様本人に使って頂くことはできる。アレクサンドラ様唯一の範囲攻撃、かつ魔法攻撃を行える行動なので、あって損はしないだろう。
ウルシュマに感謝を述べて、いよいよすべての準備が整った。保存食をいくらか買ったら、翌朝、オクスシルダ行きの列車の座席に着く。
長いようで短かった、二ヶ月と少しの旅に、いよいよ終わりの時がやってきた。
要塞都市を目指して、列車が走り出した。見送ってくれている町民や鉄道ギルド、冒険者ギルドの者達に、窓から身を乗り出しながら手を振り返す。
さぁ行くぞ、エルシオン。故郷のため、人々のため、そして、魔域の中で出会ってきた守人たちのために───次回、最終決戦。
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