六十七日目・夜~六十九日目・昼
オクスシルダから凍原に入ってすぐ、守人の監視哨。吹雪をしのぐためにここで一泊させてもらい、翌朝、〈熱狂の酒〉をキメてから東へと進む。
……同じタイミングで、コロッサスも5のマスへとやって来た。どうやら考えることは同じらしいな。なら───早速だが、リベンジマッチといこうぜ。
先制判定、これは失敗。【ガゼルフット】と【ビートルスキン】を発動させた状態で敵の手番からスタート。
前回ほどボコボコにはされなかった(というか前回は脚も腕も全部回避失敗したせいでえらいことになった)ので、HP39/51の状態で手番が渡ってきた。〈熱狂の酒〉の効果もまだ温存できている。
まずは【ヴォーパルウェポン】、使うカードはもちろんSS。そして───〈コロッサスジャマー〉を起動。これで18ラウンドの間、奴の行為判定は-4だ。
だが、これで勝ち確定、とは言い難い。正直なところ、こいつを倒しきるのに18ラウンドで足りるかどうかは微妙だ。核以外の四部位を落とせるか、というのにも、確信を持って頷くことはできない。
回復リソースとして〈魔晶石(10点)〉を十個と緑S十枚を持ち込んではいるが、軽く与ダメ・被ダメの計算をした感じだと、どちらも使い切る覚悟をした方がいいだろうな、という感触であった。
……まだ1ダメージも与えていないのに、なんだか楽しくなってきたな。
敵の二手目、さすがに物理攻撃はすべて抵抗、ないし回避できた。核は【グレネード】を撃って、11点削られる。……抵抗してこれか。ジャマーが解けた後は、《魔力撃》を控えないといけなさそうだ。
こちら二手目、《マルチアクション》【アドバンストヒーリング】からの《魔力撃》で脚部の片方を削る。残り86点。【クリティカルレイ】が仕事をするかどうかで、『自爆プロトコル』による被害のほどが変わってくるが、さて……
敵の三手目、『踏み荒らし』に抵抗……できなかった。いくら-4しているとはいえ、《魔力撃》をすると固定値差が2しかなくなってしまうので、出目次第では素通ししてしまうか。
腕の攻撃も、『狙い打つ』をされているせいで中々〈ブレードスカート〉による反撃ができない。核に至っては、そもそも魔法ダメージでしか殴ってこない。
これは……かなり厳しそうだ。だがこれこそ、ソロプレイの醍醐味というもの。
そんな調子で戦い続けて、こちらの五手目。脚部の片方のHPが残り32という、絶妙な削れ方をしている状態だ。
コロッサスポーン相手で一番気をつけなければいけないのは、『中途半端に削ってしまい、フルパワーの自爆をくらうことになる』というパターン。それを避けるために、《魔力撃》を入れたり入れなかったり、《マルチアクション》で攻撃魔法を撃ったりして調整していく必要がある。今回は心配しなくて大丈夫そうだ。
Sカードで【ヒールスプレー】を使いつつ、まずは《マルチアクション》《魔力撃》。……残り11点、これなら放置しても問題ないなので、魔法部分で【バーチャルタフネス】、少しでも事故死の可能性を防げるようにしておく。
六手目、コロッサスの左脚が爆発四散。抵抗失敗で12点受け、続く右脚への回避はピンゾロして15点貰い───核の【グレネード】も抵抗ピンゾロ、二回転して31点のダメージが襲いかかる。
ここが〈熱狂の酒〉の切りどころだ。18点分をMPで肩代わりし、自身の手番でSの【ヒールスプレー】と【アドバンストヒーリング】、37点回復してぴったりフルヘルスに。よし、持ちこたえたぞ……!
《魔力撃》で残った方の脚を削り、19ダメージ。自爆プロトコルの発動ラインである30まで、あと64点。
八手目、敵のHPを今一度確認。上から順に、122/94/65/0/73。腕の片方に対して〈ブレードスカート〉が頻繁に発動している関係で、脚よりも削れていることに気がついた。
脚部は片方だけになると、毎ラウンド『踏み荒らし』を行ってくるようになるので、〈ブレードスカート〉での反撃ができなくなって……んん。削れ方が悪いと、脚と腕が同時に自爆するか、これ。
予定を変更し、先に削れていた腕を壊しにかかる。26点与えて、残り39。ナイス削りだ。MPと魔晶石を節約するため、魔法は使わずに手番を明け渡す。
敵の九手目、『踏み荒らし』も『光条』も直撃。HPが9になった。……不味いな、緑のSカードは後四枚なんだが。
【ヒールスプレー】【アドバンストヒーリング】で回復してから、腕に《魔力撃》。残り16点。
30を切ったので腕が自爆して、抵抗失敗。3点の方の守護石を砕きつつ、その他の部位の攻撃も耐えきって、本リプレイ初のラウンド数二桁へと突入する。
とはいえ、戦況はこちらの有利に傾いてきたので、ここからはダイジェストでお送りする。
敵の十三手目、二つ目の脚部も爆発。こちらの十五手目、クリレイパワーで二回転して、二つ目の腕部を自爆させること無く破壊。
そして十八手目、《魔力撃》からの【フレイムアロー】によって、ついに核の機能を停止させることに成功した。
……かった。勝ったぞ。良かったなSNE、フェンサー一人でもコロッサスポーンは倒せたから、君たちのバランス感覚はおかしくないぞ!!
いやあ、よかったよかった。……さて、寝るか。さっきの【フレイムアロー】でMPがぴったり0になったので、流石に今から魔域に入りたくはない。
ちなみに、どれくらいアイテムを使ったかというと……〈魔晶石(10点)〉を八個に、赤のSSカード一枚、緑はAもSも十枚、金はSを七枚。それに〈消魔の守護石〉の3点と5点を三つずつに、〈熱狂の酒〉を一杯で───総額、81380ガメル。
剥ぎ取り品の売却とクエストの報酬で68000ガメル手に入るので、結果マイナス13380ガメル。……やはり赤字か。これも本リプレイ初な気がする。
休憩を終えて、六十八日目・夜。次は魔域攻略だ。
内郭域に+1して、外郭域は【ザイの魔域Ⅰ】。……あれ、ザイ君まだ一回も出てなかったっけか。
◇ ◇ ◇
薄暗い通路の中で、灰色の長い髪を束ねた、ナイトメアの男と出会った。荒野の魔域ぶりの登場となる、義勇軍のスナイパー・ザイだ。
何をしているのかと訊ねると、「上官がこの遺跡で消息を絶った。捜索に協力してくれないか」と返される。
……恋人達を自分のせいで殺してしまった、と嘆いていたナナリィと、今度こそ彼女達を救うために力を貸してくれ、と奮起するザイ。対象的なこの二人に会話をさせたら、中々エモみが深くなりそうだ。ただのギスギスワールド2.5が発生する可能性もあるけど。
さておき、今更外郭域で詰まるようなこともないだろう。二つ返事で了承して、遺跡の奥へと向かうことにする。
最初の分かれ道、足跡を探してみる。……どうやら彼の上官は、北に向かった後に南へ向かったようだ。北に何があるのかは知らないが、見に行く理由も無い。迷わず南へ。
道を塞いでいたアンドロスコーピオンを惨死体に変えつつ、更に先へ。ザイの上官・スミアとその部下を襲っていたシザースコーピオンを細切れにしてやり、問題は無事解決。
……あまりにも戦力差がありすぎるので、もはや『自動失敗によって50点を稼げる可能性があるため、ダイスを振れば振るだけむしろ得』という状態。それで稼ぐのはどうなん、と思うので流石にやらないが。なんなら、討伐の経験点すら受け取っていいものかと躊躇ってしまうレベルだ。
そんな強くなりすぎてしまったが故の悩みを抱えつつ、ザイとスミアに別れを告げて、中央域【失われた結婚式】へと進む。
◇ ◇ ◇
今度の舞台は、太陽神・ティダンの神殿の前だった。魔域の中に第一の剣の神の神殿があるとは、なかなか奇妙な光景に思えなくもない。
……だが、あくまでロケーションがティダン神殿前なだけで、敵はしっかり魔神が務めるようだ。三つ首の魔犬・ケルベロスが、神殿の扉を塞ぐように待ち構え、六つの瞳でこちらを睨んでいる。
ちなみにこれは一体どういう状況なんだ、と隣にいたザイに尋ねてみると、「神殿の中に、ジュリエッタ……俺の恋人がいる。今日は俺達の結婚式なんだ」と教えてくれた。ほーん、結婚式か。
……ところできみ、会うたび会うたび一緒にいる女の子が違う気がするんだけど……史実では一体どれだけの女の子と付き合い、先立たれてしまったんだ……?ていうか彼女を何度も何度も亡くしてるのによく挙式できるだけのメンタル保ててるね……?
……まぁ、その辺は触れないでおいてやろう。百五十八年も生きてたそうだから、誇張や冗談抜きで「数え切れないほど付き合ってきたよ」とか返されそうだし、それを言われたら私もエルもどんな顔すりゃいいのかわからん。
戦闘開始、の前に、ケルベロスくんの能力についておさらいだ。
こいつは少々特殊な魔物で、三つある頭がブレスを吐くことで攻撃する。ちなみに胴体は『攻撃障害』用の肉壁部位で、攻撃能力は一切持たない。
……で。このブレス、火炎・吹雪・瘴気でそれぞれダメージが異なるのだが、デモンズラインによる『魔物の行動指針』に従って動かすと、何をどう頑張っても火炎のブレスしか吐かなくなってしまう(ダメージが一番高いため)。それは面白みにかけるな、と私は思った。
それに、ぶっちゃけエルの抵抗力だと、同じブレスを重ねて吐かなくてもワンチャン抵抗突破される可能性があるので───今回に限り、ある程度の行動内容は指針に従わずに決めることにする。
……自分で自分の首絞めてませんか、って?そうだぞ。コロッサスソロ討伐に挑んだことからお察しの通り、わたしは殺意の高いモブとGMが大好きな戦闘狂PLだぞ。難易度イージーとノーマルを用意されたらハードを要求するような奴だぞ。
特殊ルールも決めた所で、先制判定。いつも通り失敗───したかと思いきや、アレクサンドラ様が取ってくれた。やはり彼女こそデモンズラインの主人公だ。ちなみにフェロー二人目は、結局ナナリィ様に務めてもらっている。
こちらの一手目、エルとフェロー二人が動く前に、ティダン神による加護が我々に与えられる。……HP回復*2と、生命抵抗+2。まあ許そう。
あらためて一手目。まずはフェロー二人の行動を見る。アレクサンドラ様は【キュア・ウーンズ】、意味なし。ナナリィさんは《魔法制御》【ファイアブラスト】。
ふむ、抵抗こそ突破できないが、まあそこそこの削りは期待できそう───いや待て。炎属性って確か……無効だこいつ!!まずい、自分からスーパーハードカウンターを当てられに行ってたのかこれ。
……まぁ、対応力が高いのが売りのナナリィさんだ。【終律:蛇穴の苦鳴】や【レジスタンス】を使ってくれることに期待しよう。行動キャンセルしてエル本人の手番、せっかく抵抗力を上げていただいたので、ここは思い切って【ヴォーパルウェポンS】《魔力撃》を……胴体からやった方がいいなこれは。そこに打ち込み、21点。固いなこいつ……コロッサス程ではないが、それなりの長期戦になりそうだぞ。
お待ちかねの敵の行動。吐き出すブレスは───火炎、吹雪、瘴気を一つずつ。すべて抵抗できたが、それでも26ダメージ。……うーん、ブレス三発撃たれるのって想像以上にキツい。
二手目、ティダン神より生命抵抗+4を授かる。めっちゃ助かる。フェロー行動は、アレクサンドラ様がラピス召喚、ナナリィさんがアドヒ。悪くない。胴体を10削り、エルは21点回復。
エル本人は、一つでも抵抗に失敗すると一気に崩されそうだな……ということで、先に《マルチアクション》【バーチャルタフネス】を使っておく。そして胴体に《魔力撃》、そのあと【ヒールスプレー】で自己回復。HPは56、ティダン神の加護もあるのでこれなら安全か……?
敵の二手目。GM側の視点からすれば、抵抗力が高い今のエルに達成値勝負を持ちかけるのは得策ではないな……と考えて、ふたたび三種のブレスを放つ。トータルで19点受けた。ティダン神がいてくれなかったら、既に焼死体と化していた気しかしない。達成値がギリギリすぎる。
こちら三手目、ティダン神の加護は命中/回避強化、生命抵抗強化、攻撃。胴体を16点削っていただいた。アレクサンドラ様は再びラピス召喚、一回転して18ダメージ。ナナリィさんは【プライマリィヒーリング】で17点回復。
抵抗+2のHP45かぁ。……慢心しないでおこう。《マルチアクション》【アドバンストヒーリング】でフルヘルスにして、【クリティカルレイA】で《魔力撃》。胴体の残りが12点になった。
敵三手目。今のエルの抵抗力は13、火炎のブレスは基礎達成値12……仕掛けどころか。二つの頭に火炎を、残り一つには吹雪を吐かせる。
(GMの私の)目論見通り、火炎には〈陽光の魔符Ⅱ〉を使わされる。吹雪には抵抗したが、これでも17ダメージだ。
……さて、魔符の個数を更新したことで気がついた。持っている〈陽光の魔符Ⅱ〉はあと一枚だけ、Ⅰも二枚しかない。精神抵抗ばかりに気を取られて、こちらの枚数把握を全くやっていなかった。
もはや勝ちたいのか自分を殺したいのかよくわからなくなってきたが、PLとしてもGMとしても手を抜けない戦いが幕を開ける。魔符が尽きるのと、首を一つ落とすので、どっちが先になるかの出目勝負だ……!
四手目。ティダン神、まさかの命中/回避強化*3。今一番要らないパターンをピンポイントで引いてしまった。
が、ここでアレクサンドラ様、槍を四回転させて胴体を落とし切ることに成功。お見事にございます。マジで助かります。ナナリィさんも【プライマリィヒーリング】してくれて、なんとか耐えられそうな雰囲気にはなった。
なったが、流石にここで《魔力撃》をするのは自殺行為でしかない。【クリティカルレイA】を入れた通常攻撃で適当に頭を叩きつつ、《マルチアクション》で【ウォータースクリーン】を入れて少しでもダメージを減らそうと画策。
その後もしばらく、火炎*2/吹雪*1かそれぞれ一つずつ、という2パターンのブレスを耐えながら、じわじわとお互いの体力を削っていく。
七手目、ようやく首を一本落とすことができた後は、延々と火炎*2を耐えるだけになった。最終的に、三本目の首を落とすのには14ラウンドほどかかった。
いやぁ……〈カースレベリオン〉さまさまだ。ダメージ軽減のありがたみをかなり実感できる戦いだったと言える。
魔神が倒れると、ザイは神殿の正面扉を開けて、聖堂の中を駆けていく。そこには、花嫁衣装を纏った女性が一人、立っていた。
……彼女の「ザイ。やっと結婚できるね」という言葉、そしてザイの「今度こそ、彼女を幸せにする」という言葉に、いったいどれだけの思いが込められているのか、部外者である我々には想像も付かないが……せっかくハッピーエンドを迎えられたのだ、難しいことを考えるのは止めにして、素直に祝福してあげよう。
花嫁・ジュリエッタよりトスされた〈祝福のブーケ〉をキャッチして、参加者五人の結婚式を終えた後、二人に別れを告げて魔域を脱出することにした。
……あ。でもザイくん、その調子で他の女の子たちの責任も取っていこうとすると、最終的にいわゆる修羅場が完成してしまうと思うんだけど……大丈夫なのかな、今後。流石にそこまでは手助けできんぞ我々。
◇ ◇ ◇
現実世界に戻ってきて、六十九日目の昼。スカディから頼まれていた妖精姫様の救出任務があるので、もう少し凍原を探索していくか。
……と、ここでようやく私はやらかしていた事に気がついた。監視哨の守人から『魔域の脅威度測ってきてくれよな!』と言われていたのに、調べる前にぶち壊してしまった。
……えーと……Amaz○nレビューみたいなノリで『ケルベロスがいたので脅威度11です!』とか報告したんじゃ駄目かな……だめか……ごめん……
やってしまったものは仕方ないので、反省文を書きつつ東の氷結砦に向かう。
魔神の大集団に襲われ、MPはすっからかん、HPも33という有様に。このまま砦の調査に行くのは流石に危険か……
……いや、そういえば草いっぱい持ってたな。とりあえず地下への階段を発見してから、ひたすらに〈魔香草〉と〈救難草〉を使いまくり、なんとかHPMPともに最大まで回復。
さぁ、気を取り直していざ調査へ───行きたかったが、激闘続きで私が疲れたので一旦中断。次回、砦の地下の調査を行う。
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