三十三日目・夜~四十三日目・昼

 とりあえず湿地に向かおうかなぁ、と思いながらイーサミエのページを眺めていると、情報収集の項目に『ヘリテの友人宅の情報』というのがあることに気がついた。確か、平原の廃村で見つけた日記の所有者の妹だったか。

 せっかくだから寄ってみることにして、情報収集。情報をもとに友人宅へ向かうと、ヘリテはそこにいた。

 日記を渡すと、涙を流しながら感謝の言葉を述べた。……それと、ギリギリ使い切っていなかった8000ガメルの遺産も引き渡す。あぶねえ、〈魔晶石(10点)〉あと一個買ってたら足りなかったわ(残金840ガメル)。

 改めて、日が昇ると同時に湿地へ向かって出発。北の街行きの船が出ていたようだが、用事があるのは道中なので今回は遠慮しておく。


 湿地に着いてすぐ、道に迷っていた偵察兵と遭遇する。着いてくるのは構わんが、たぶんそのまま真っすぐイーサミエに向かった方が安全だぞ、きみ。

 一晩明かして、三十五日目の昼。毎度毎度遅いが、主のステータスを確認。……勝てなくは無さそうだが、セメタリーの毒の対策をした方が良さげだ。ノマリ族から薬を仕入れてから挑むとしよう。

 そんな主・セメタリー&ゴーレムのコンビが4のマスで待機しておられるので、迂回していくために2のマスへ。遺跡の前で、今度は冒険者が道に迷っていた。ソロプレイのはずなのに三人パーティが結成された瞬間である。

 遺跡の扉を開けると、中から毒ガスが溢れてきた。……予想だが、早めにノマリの薬を買わないと、湿地を抜け出すまでずっと毒に悩まされることになるんじゃないか、これ。

 ごほごほと咳き込みつつ、遺跡の内部を調査。北へと続く通路を発見した。……マップ上には表記されていないので、イベント用か。

 何か良いものが見つかるといいな、と呑気に通路の先へ。すると天井から突然、シールンザーレィが降下してきた。やべぇ、天敵だ。フェンサーは魔法ダメージに大変弱いとされている。


 偵察兵くんのおかげで、先制は無事奪取。さて、どうするか……ザーレィの光条は貫通攻撃であるため、おそらく偵察兵も冒険者も吹き飛ばされることになるのだが。

 ……まあいいか。着いてきたお前らが悪い。無慈悲なエルシオンさんは、彼らを自軍後方エリアに置いたまま戦うことにした。

 防護点は低めだし、通常攻撃は余裕で〈ブレードスカート〉を狙えるライン。ならばさっさとケリをつけよう、と意気込んでAのカードで【ヴォーパルウェポン】、からの《魔力撃》。

 偵察兵と冒険者は、どうせまともな戦力にならないので動かさずに放置して、敵の手番。左の発射筒は偵察兵に、右のは冒険者に光条。中央のはエルに近接攻撃。

 これは後ろ二人は死んだかなあ、と思ったのだが、奇跡的に巻き込まれ判定のダイスが全て4以上を出し、なんとか両者生存。よし、いいぞ───そのままデコイとしてもう2ラウンドくらい立っててくれ。


 戦闘が思ったより長くなったので、ダイジェストで報告。3ラウンド目、二発の光条を受けた偵察兵が無事死亡。4ラウンド目、冒険者もチャージ光条によって死亡。ナムライフォス。

 7ラウンド目、全ての部位を破壊して戦闘終了、犠牲者二名。通常のセッションであれば同行NPCが死亡するなど、バッドエンドルートまっしぐらの展開だが、あいにくこのゲームのNPCにそんな価値はない。強いて言えば★を2つ逃してしまったのが勿体無いなあ、くらいである。


 死体二つを弔いつつ、一旦野営(?)を挟む。翌日、更に北へ進み、鍵のかかった扉を開けると、小さな村の倉庫に繋がっていた。村長の娘にその瞬間を目撃され、井戸端会議に連行されることに。

 どうやらあのザーレィは村人の悩みの種であったらしく、破壊したことを感謝された。棚からぼたもち。

 そのまま聞き込みを行うと、6のマスに魔域があることと、4のマスがセメタリーの巣になっていること、そこには抜け道があることを教えてもらえた。もちろん魔域に向かうつもりだったので、有効活用させてもらおう。セメタリー&ゴーレムは……一旦保留で。


 一晩泊めてもらい、三十七日目の朝。村人に別れを告げ、苔どもの巣へと向かう。ロックゴーレムは……二日前から6のマスに鎮座し続けている。早くそこ退いてくれませんか。

 日が沈み、一旦足をここで止めてゴーレムの移動を見る。……こちらへやって来た。が、抜け道に隠れていたので問題なくやり過ごせた。サンキュー村人。

 翌日、今のうちにと6のマスへダッシュ。ゴーレムは苔と戯れていた。

 棄てられた集落の外れ、丘の頂上に、“奈落の魔域”が確認できた。村人から形見の品の回収を頼まれているが───済まない、魔域を攻略した方が実入りがいいんだ。後にさせてくれ。

 装備点検を終えた後、魔域へ突入……の前に、魔域の目の前に立てられていた石碑を確認する。……ザイという守人の墓であるようだ。つまり、この魔域は君の記憶の世界ということだな。覚えておこう。

 改めて、魔域に突入。外郭域に選ばれたのは、【カティアの魔域Ⅰ】だ。


 ◇ ◇ ◇


 そういえば〈古ノマリのバンダナ〉って、詳細が特に書かれてないけど、普通に頭に巻いといていいんだろうか。いいよね。ということで、着けていたバンダナとお守りからカティアさんとアレクサンドラ様を召喚。

 準備ができたところで、あたりを見渡してみる。建物こそ荒れ果てているが、それなりに人気のある賑やかな街の中だった。

 街の様子を眺めていると、目の前にカティアがもう一人現れた。ダブラブルグか、それともドッペルゲンガーか、と身構えるが、呼び出した方のカティアが「まだあのクソ緑を信じていた頃のわたしです」と教えてくれた。見た目にあまり違いが無いので、そう遠くない未来に雪原での出来事が起こるのだろう。

 そんな昔のカティアが言うには、キャラウエイ様を探すのを手伝って欲しい、とのこと。……あのクズに"様"付けかぁ。DV男に騙される駄目な女の子感がすごい。

 出没箇所を聞くと、酒場、カジノ、花街、金貸しのところ、だそうだ。駄目男要素欲張りセットじゃんもう。今の時点で殺しておいたほうが世界のためなんじゃないか??

 ……まぁ、あくまで"今の時点のカティアは"あのクズのことを英雄だと信じているので、ちゃんと助けてあげることにしよう。アレクサンドラ様も多分頭を抱えていらっしゃるとは思うけど。


 酒場、カジノ、花街と巡っていくと、突然魔域生まれの方のカティアが「キャラウエイ様!」と叫んで走っていく。無事に見つかったようだ。

 感謝の言葉と共に、〈悪魔の血晶盤〉を頂いた。ソロプレイだと完全にフレーバーでしかないけど、まあありがたく貰っておこう。

 彼女はそのまま、ゴミ人間、もといゴミエルフを引っ張って、どこかへ去っていってしまう。二人を見送った後、中央域へ続く魔域へと進むことにした。……カティアさん、街中で【ゴッド・フィスト】構えるのは駄目です。せめて【フォース】にしましょう。


 ◇ ◇ ◇


 この地を訪れた日のような、がたんごとんという音がする。どうやらここは列車の中のようだ。

 目の前には、黒髪のレプラカーンの少女。そしてエルの背後には、灰色ロングのイケメンナイトメア。会話から察するに、レプラはゾーヤ、ナイトメアはザイという名前らしい。……ザイ。魔域の外の石碑に書いてあった名だ。

 さて、そんな二人の表情には、なにやら焦りの色が見える。聞けば、「秘密兵器の魔動核爆弾の運搬中なんだけど、蛮族がこれを狙って襲撃してきている」「万が一の場合は、自爆してでも連中に渡さない」とのこと。……すいません、自分帰ってもいいですか?


 駄目です、とアレクサンドラ様に引き止められて、迎撃作戦に参加することに。一応増援として、そこそこの戦闘能力を持った兵士が四人も協力してくれるようだ。

 アレクサンドラ様もカティアさんも、《魔法拡大/数》で【キュア・ウーンズ】を撃ってくれることを考えると、敵を食い止めるには十分すぎる戦力だろうか。最悪の場合、エルも【サモンフェアリーⅡ】でスプライトを呼ぶことができる。

 うむ、これならなんとかなりそうだ。ということで、各員配置に着く。


 敵軍は自軍の前後に展開しており、前方にダルグブーリーとボルグヘビーアーム、後方にはミノタウロスとボルグヘビーアームの二体目。こちらは、腕利きの傭兵*4と共に出撃、という布陣。

 片方はエルだけでなんとかなるので、反対側を傭兵達に抑えてもらうことにして、先制判定。無事成功し、こちらの先行となった。


 1ラウンド目。カティアさんはキュアウだったのでキャンセル。エルは警戒すべき能力もないので《魔力撃》を前方のヘビーアームにぶっぱなす。アレクサンドラ様も追撃を加えたが、仕留めるには至らず。さすがヘビーアーム、防護8とかいうイカれたステータスはそう簡単に突破できない。

 続いて、後方の傭兵部隊。ヘビーアームへ順番に《全力攻撃Ⅰ》を叩き込んでいく……と、三人目の時点で撃破できた。思ってたよりもやるじゃないか。

 余った四人目がミノさんに全力を撃って、敵の手番。後方のヘビーアームが、傭兵Aに向けて《全力攻撃Ⅰ》を返す───出目11、痛恨撃まできっちり乗せての大打撃になった。

 そこへミノさん、容赦のない【マッスルベアー】乗せ《全力攻撃Ⅰ》《薙ぎ払いⅠ》。幸いにして、ヘビーアームに殴られた傭兵は対象にならなかったが、平均HPが35になってしまった。やはりヘビーアームとミノさんは、低レベル帯における最強モブの一角である。……あ、ダルグブーリーさんはそのまま一生〈ブレードスカート〉で斬られててください。


 2ラウンド目、まずはカティアさんが【キュア・ウーンズ】で傭兵を癒やす。……カティアさん、しれっと自動失敗出すのはやめましょう。傭兵B君泣いてますよ。

 回復しきれなかったところはアレクサンドラ様が担当してくれて、傭兵部隊無事全快。ヒーラー二枚体勢の安定感よ。

 問題が無さそうなので、エルもそのまま《魔力撃》を続行、ヘビーアームを無事に撃破。後方の傭兵部隊は、《全力攻撃Ⅰ》を四発全て叩き込むも、ミノを落とし切ることはできなかったが、回復したおかげで死ぬことはなさそうだ。


 その後も、フェロー二人が適切なタイミングで【キュア・ウーンズ】を撃ってくれたおかげで、死者を出すことなく戦闘は終了した。なんなら傭兵部隊がダルグブーリーに《全力攻撃Ⅰ》をする余裕すらあった。

 剥ぎ取り作業をしていると、ザイが「今度はゾーヤを死なせずに済んだ。感謝している」と言って、付けていた〈マギテックベルト〉をくれた。部下を救うことができた、という感情と言葉が真っ先に出てくるあたり、さては聖人だなオメー。

 遺品を手に入れたので、ザイのフェローデータを確認してみる。……《鷹の目》持ちのスナイパーか。上級戦闘、かつパーティプレイなら強かったかもしれないが、あいにくエルには必要のない仲間だ。機会があればまた会おう。


 ◇ ◇ ◇


 魔域から脱出して、三十八日目の夜。形見の櫛を回収するために一旦待機、主は3のマスへ移動。今がチャンスだ。

 無事に櫛を回収して、翌日。再び苔の巣へと戻る。ゴーレムも戻ってきたが、相手をするのはまた今度だ。

 抜け道を通って、夜に村へと帰還。櫛を持ち主の夫に返して一泊し、四十日目の夜、鉄道都市・リイネスへと到着した。


 いつも通り、クエストの報告・確認をした後に、かけらの清算をして成長処理の時間に。

 フェンサーを8、アルケミを3にして、賦術は【クリティカルレイ】を習得。ダメージを加速させて戦闘をさっさと終わらせることができれば、格上相手に喧嘩を売るのもやぶさかではないな、という判断からだ。

 そしてマテリアルカードの補充。かなりのガメルが余っているので、奮発してSカードを何枚か買ってみた。エリクサー症候群を発症させず、景気良くバンバン使っていきたい。


〈アビスシャード〉が17個もたまっていたので、これの強化もしていくことに。〈ヘビーマレット〉〈アラミドコート〉〈バックラー〉(バックラーだけはカース再決定の加工)の全てをアビス漬けにしてやるぞ。

 強化内容は、順に『命中+1』『スカウト運動判定+1』『回避力+1(変更なし)』。付いたカースは挙げた順に、"鈍重な""脆弱な""嘆きの"。脆弱が少し気になるが、鈍重と嘆きはほぼノーリスクだ。

 スカウト技能をあまり上げていなかったが、これで少しはマシになっただろう。命中も上がり、主狩りが捗るというもの。


 アビス強化が終わるまでの丸一日が暇なので、情報収集で時間を潰す。次に向かうつもりの荒野の話でも聞くか。……主はキマイラ。倒せないことはない、ぐらいの強さだ、喧嘩を売りにいくことにしよう。邪教徒集団とやらが、魔神召喚のために生贄となる少女を誘拐しているそうなので、それの調査も忘れないでおく。

 もうひとつ聞き込みして、今度は北の雪森の情報を仕入れる。……主はレッドヘルム。この地方にだけ生息している大熊らしいが、レベルが9になって、《回避行動Ⅱ》を手に入れれば完封できそうな雰囲気がある。雪森に向かうこと自体はしばらく後になってしまいそうだが。


 そうして一日経って、アビス強化品三つが手元に返ってきた。一泊してから、荒野を目指して街を後にする───といったところで中断。次回、荒野の攻略から。



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 この手のゲームは、攻略を安定させるまでの初期段階が一番楽しい、とはよくいったものだ。安定して敵を倒せるようになってきた反面、『あ、こいつブレスカで叩いてたら勝手に死ぬじゃん。ざぁこ♡』という感想しか出てこない敵が出てくるようになってしまった。

 もっとも、それだけでは倒せない敵もたくさんいるので、まだまだ気は抜けないのだが。残り三十日余り、果たして何事もなくラスボスまで辿り着けるのか。

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