“アイ”して止まないもの

私には、気になってる人がいる。

とても綺麗で、小柄で、古風な雰囲気を持っている人だ。

だけど彼女は、意外と可愛いものが好きだと私は知っている。

彼女のそんな側面を知ったのは、会社の近くにある雑貨屋さんだ。

仕事で必要な文具を取り揃えていたところに、やけにファンシーなものが置いてあるコーナーでキラキラとした目でそれらを見つめている彼女を見かけたのだ。

あまりにも雰囲気が違うものが共存していて、不思議な雰囲気だったことを覚えている。

「葉月さん、意外とそういうの好きなんですね…」

思わずつぶやいたその言葉は思ったよりも大きな声で言っていたらしく、彼女に聞こえてしまった。

彼女はビクリと肩を震わせると、怯えた様子でこちらを振り返った。

「あの、えっと…違うんです!その、め、姪っ子が好きそうだなって思って!プレゼントしようかなって見てただけなので!その、決して好きとかではないので…!」

恥ずかしいので見ないのでくださいと言わんばかりに、彼女は少し涙目で訴えていた。

あまりの必死さに申し訳ない気持ちになってしまう。

「あ、いえ、そうなんですね。すみません。私もこういうの好きなので、一緒だったら嬉しいなと思って…。」

自分で言うのもなんだが、女性にしては高身長で声がハスキーな私も葉月さんに引けを取らずファンシーで可愛らしい物が似合わない。

「そうなんですか!?この、これのシリーズが好きで、新しいの出てたみたいで見てたんです!」

そんな私を同士と思ったのか、彼女は嬉しそうに目を輝かせて話した。

社交辞令と受け取らない無邪気さも意外で、より一層彼女に惹かれた。

そこから話が盛り上がり、今となってはすっかり可愛いもの好きの同士として彼女に認識されている。

「葉月さん!ランチ行きましょ!こないだ雑貨屋さんでめちゃくちゃ可愛いの見つけたんですよ~!」

そう言って今日も彼女をランチに誘う。

でも最近は、可愛い物のことで目をキラキラと輝かせて話す彼女がどんな可愛い物よりも可愛いなと思っていることは秘密だ。

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その“アイ”は何を視る あいむ @Im_danslelent

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