“アイ” see.

〈それ〉を見た時、「そうだ」と思った。

「まさしく〈それ〉だ」と思った。

きっと、多くの人は〈それ〉を〈希望〉と言うのだと思う。

今までの人生が絶望的だったかというと、そういう事ではなかった。

ただ、平凡で、つまらない人生だった。

特別なんてなくて、平和だけど、ただただ、何も無い人生だった。

誰かには平穏なそんな人生が羨ましくて仕方のないものだと思う。

だけど、私にとって私の人生は、ひどくつまらなかった。

だから〈それ〉を見た時、とても心が震えたのを感じた。

今まで一度も感じたことのない感情だった。

〈それ〉のために生きたいと思った。

〈それ〉のためなら頑張ると思った。

私はようやく〈それ〉のお陰で世界が彩ることを感じた。

辛い仕事も頑張れるようになった。

悲しい事も乗り越えられた。

〈それ〉が私に生きがいと生きる希望をくれた。

初めて人生を豊かに感じた。

きっと友人が言っていたのはこういうことだ。

彼女は「楽しみがあるからそのために頑張れる」と言っていた。

これまでは理解できなかったが、ようやく理解できた。

キラキラと輝く〈それ〉を見た私の目もキラキラと輝いたのだ。

〈それ〉のための時間が堪らなく愛おしく、大切なものとなった。

きっと私にとっての〈それ〉と同じようなものを他の人も持っているのだろう。

恋人かもしれない。推しかもしれない。

その人にとっての〈それ〉が何であっても、それがその人にとっての希望である事は変わりのない事実なのだ。

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