第9話 2学期開始 クラスメイトの反応
9月 二学期開始。
夏祭りや海から一カ月弱がたち、肩書だけの恋人から「らしい」恋人になった俺とすみれは朝から手を繋いで登校…なんてことは無く。
俺は朝練で、すみれは俺の分まで弁当を作ってくれてから家を出る。家が隣の俺たちが会うのは教室だ。
「朝練おつかれー、はいあんたのお弁当。」
「おはようすみれ、いつもありがとな。」
本当に頭が上がらない。すみれは料理がどんどん上達し続け、最近では母さんの味とほとんど違いが分からなくなってきている。すみれいわく「手間が減ったから楽になったわ。」とのこと。母の味に近づいて手間が減るのはよく分からないけど学校の弁当以外でもすみれの手料理を食べる頻度が増えているこの頃。
「シンカー習得練習進んでるの?」
「え、シンカー強化練習のつもりだったんだが…」
「いやいや、あんたのはプロ行ったら『今のはチェンジアップでしょうか?』とか言われちゃうなんちゃってシンカーでしょ。放課後付き合うからちゃんとモノにしなさいよ。」
「そろそろ秋の新人戦だしそれまでには最低限モノにしたいな…」
「いや、プロ基準の最低限を高1秋に目指すんじゃねぇよ…しかも高校に入ってから覚えたろお前のシンカー…」
観音寺の声が聞こえた気がするが気のせいだろう。俺はすみれと談笑しながら指を掴みあう方が大事なので聞こえない。
すみれの手っていいよなぁ、右手は包丁を半年握り続けた手、左は俺のボールを受け続けた手。恋人と相棒の両方が感じられる。
すみれが料理を始めたのは自分で美味しいご飯を食べたかったからだし、俺の弁当を作ってくれるのは練習だったからだけど。今はもう栄養学も学んでスポーツ選手向けとか成長期向けとか色々考えて弁当を作ってくれている。プロ野球選手に慣れてこんな嫁さんと結婚出来たら幸せだろうなぁ……いかん、惚気がすぎる。気を引き締めねば。
「なんか夏休み前と違くない?」
「手を触りあっているだけなのに胸やけしてくる…!」
「つーか武田くん体デカくなってない?180近くありそう。」
「あいつらぜってー進展したろ」
「入学当初から距離近かったのに更にラブラブとか何があったんだよ」
「「「ナニがあったんだろ」」」
「すみれっちに武田ー久しぶりー☆」
「ギャル子久しぶりー!」
厳島ギャル子とすみれがキャッキャと手を叩きあう、放置される俺の手。寂しくなんかない。
「あんたら距離近いけどついにヤっちゃったの?」
シンと鎮まる教室の音。なんでギャル子の声こんなに教室に響くんだよ。みんなこっち気にしてるじゃんか…
「そんなことするはず無いだろ?高1だぞ?」
「そ、そうだよ!するわけ無いでしょ!もう、なんてこと言うの!」
「えーでもすみれっちは可愛くなってるし、お互い意識しまくってるし絶対なんかあったでしょ?ヤって無いの?」
夏祭りとか海のこと教えるのは恥ずかしいから完全に誤魔化すかボカして一部言うかかな?俺もすみれもお互いがいると安心していたのが今はドキドキして落ち着かないのでこの辺の話題はうっかり余計なことを言いそうで俺はあまり返事をしたくない。
「ヤるわけ無いでしょ!どれだけ避妊しても万一があるんだから女子高校生を孕ませたりしたらそれだけで浩二がプロ野球選手になれないかもしれないでしょ!!」
「てー事は高校卒業したら?」
「そりゃぁ……もう…聞かないでよ…」
すみれさん、爆弾発言と自爆からのしおらしい反応やめていただけないでしょうか。夏前までそんな姿見せたことなかった事実をお忘れでは?
俺の心に致命的な一撃と、クラス中への無差別爆撃になっています。
男子の呪詛にも似た目線と、女子の憧れるような目線がやばい。なんで全部俺の方目線くるの。
「「「武田ァ…妬ましい妬ましい妬ましい…」」」
「「「武田くんの3年後とか絶対やばいくらい逞しく…キャー」」」
プロになれたら契約金で指輪用意しなきゃなぁ…さて、今日もしっかり鍛えるか!まずはシンカー覚えなきゃな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。