第4話 熟練の手抜き
昨日は大変だった…
特別メニューを組まれえんえんとフィジカルトレーニング。付き合ってくれた先輩(彼女がいる)には感謝しかない。
なぜ俺達だけ特別メニューだったのかはよく分からないが監督の許可も出ていたし信じてトレーニングを積むのが正解だろう。
監督は30年前にプロ野球選手を引退、20年前にプロ野球のコーチを引退。20年ぶりにプロ野球のコーチに戻る足掛かりに高校野球のコーチと監督をやっている62歳の超人だし。
公立高校になんでこんな人が来たのかは野球好きのおっさんこと顧問の先生の伝手らしい。
練習はきついけど信じてついていけば成長できる環境なんだ。今日も美味い弁当を食べて頑張ろう。
すみれside
今日のお弁当はあたしも浩二も…あたしが昨晩作った物がつめてある。といっても作ったのはから揚げだけだけど。
問題はそれを浩二が美味しいと思うかどうかだ。なんせあたしの高校生活はこいつを支えて強くすることなのだから。もしお昼が美味しくなかったら?やる気が出ずに練習にも悪影響が出るよね…。
武田ママのから揚げに勝つのは無理、互角も絶対無理。せめてやる気が低下しない程度のから揚げだと思ってもらえますように…
そう祈るあたしの前で浩二はからあげを口に運ぶ。違和感を感じたのかどこかしっくりこないような顔をする。
「浩二?から揚げがどうかしたの?」
「なんかいつもと違うんだけど…いつもより美味しいかも?」
「は?」
思わず間抜けな声が出てしまったが何言ってるんだこいつ。それ私の手料理だぞ?武田ママの劣化コピーだぞ?
どこら辺がいつもと違うのか問う。
「食感はいつもの方が美味しいんだけど、今日の方が匂いがしっかりしてて味も良い気がする。」
「ちょっと武田ママに問い合わせる。」
何がどうなっている?本当にあたしのから揚げをたべたのかこいつ?いや確かにあたし自身は美味しいと思っているけどさ、同じく一晩経過したものが私の弁当箱にも入っているし。でもこれは自分で作ったからこそ美味しく感じていると思ってたのだけど…あたしは武田ママにメッセージを飛ばす。
『武田ママ、緊急、浩二がからあげをいつもより美味しいと言っています。なぜでしょうか。』
『いつもは手抜き工程で作っているけどちゃんとした工程で作ったからじゃない?後は味が違う事での新鮮さかしら。』
『手抜きでいつもあれだけ美味しかったの!?』
『そのうち手抜き版も教えてあげるけど最初はちゃんとした工程から教えるわね~』
料理初心者が熟練者の指導の下しっかり作るのと、武田ママの手抜きが互角くらいかー…手抜き版の再現してみたいなぁ、半年とか1年とかかかってもいいから。今はまだ全然無理だけど。
「あー…浩二。美味しいなら今後もしばらくこのクオリティで問題ないかしら?」
「美味しいから全然問題ないぞ?どうした?」
「それさ…あたしが作ったから揚げなんだよね…」
「初めてでこれとか凄いな。毎日食べたいくらい美味いぞ。」
自分の作った料理を美味しいと言ってもらえるのは意外と恥ずかしくて嬉しいのね…
とりあえずあたしのお昼兼、こいつを支える目的で料理修行はどんどん頑張りたいところだ。
「手料理だと…実質愛妻弁当…」
「毎日お前のご飯食べたいってもうプロポーズでしょあれ。」
「入学早々進みすぎでしょ。微妙に恋っぽさが無いのが不思議だけど」
「「「とりあえず羨ましい」」」
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