高校1年目
第2話 彼女です♪
「大蛇南中野球部から来ました。ピッチャー武田浩二です。よろしくお願いします!」
俺とすみれは昨年県ベスト4の地元公立高校、大蛇高校へ進学した。通称オロ高。
野球部に入って新入生の挨拶が一通り終わった。
「南中の武田が来たかぁ…」
「来年以降のエース候補だな。さすがに今年は秋の新人戦までに使い物になればって所か。」
「あれ?そういやまだ監督の横にいる可愛い子の紹介無くね?」
「マネージャーかな?ショートヘアボーイッシュ美少女キタコレ」
「なんか見覚えある気がするんだよな…」
「じゃあ上杉くん、最後に自己紹介を。」
「はい、武田浩二専用捕手の上杉すみれです。投げ込みで壁が必要な時などに参加させていただきます。よろしくお願いします。」
ざわざわとしてマネージャーかなと期待していた先輩方の目がぐるりと俺の方を向く。
すみれは現役時代ほど練習をしなくなったからなのか戦士から戦える町娘くらいの雰囲気になっていた。
「「「おう武田ァ!お前新入生の癖して彼女連れたぁいい度胸してんじゃねぇかぁ!!」」」
彼女じゃないです。練習相手というかサポーターというか。俺が言っても火に油な気がするからすみれに弁解してくれとアイコンタクトを送る。
すみれはこくんと頷き、いい笑顔で――
「武田浩二投手こと、浩二くんの彼女のすみれです♪せんぱぁい、彼のことむかつきません?3打席勝負しませんか♪」
「「「やったらぁ!!」」」
盛大に煽った。あーあ、俺は反論をするのをやめてしまいました。すみれのせいです。
ウッキウキにプロテクターを付けてマスクを被りだすすみれ。監督の許可も降り、準備体操やキャッチボールの後。俺&すみれと先輩方の勝負が始まった。
うーん…圧力が違う。昨年県ベスト4は伊達じゃない。
マウンドから見下ろすバッターボックスに立つガタイのいい先輩は雰囲気があった。
少し離れて雰囲気のある先輩が20人くらい並んでいた。多くない??すみれの煽りが強すぎる。。
さすがに緊張するな…さて、どうしたものか。
見かねたのかキャッチャーとして座るすみれから元気づけの声がかけられる。
「へーいピッチャービビってるーぅ!」
「お前が言うんかい。」
あいつほんと…少しだけ力が抜けたが第1球はまだ肩に力が入っていたようで手元が狂う、投げたストレートはボールゾーンに行く。
「もしや肩に力を込めたら球速が上がる宗教にでもご入信されている?」
「お前ほんといい加減にせぇよ。」
ああもう、あいつのこういうタイプの軽口好きだわ…
緊張なんてどこへ行ったのか。俺は自分に出来る全力投球を先輩方に投げ続けることが出来た。
まあまあ打たれた。高校野球ヤバい。
ある程度投げて俺とすみれは別の新入生と交代した。もしかすると最初から監督とすみれでこういう練習にしようと打ち合わせ済みだったのかもしれない。
マウンドから降りた俺は周囲に聞こえないようすみれの耳に口を寄せひそひそと話す。
「でもすみれさ。彼女って嘘つく必要あった?」
「だってどうせ私の高校生活はあんたに捧げるんだから同じような物でしょ。」
言われてみればそんな気がしたし、俺たちは『武田浩二』を育てることに高校生活を使う気でいるのでお互いに恋人に使う時間は無いので無駄に告白されるくらいなら確かに彼女ということにしておいた方が効率が良い。
「確かに余計な時間を取られないようにって考えると上手い牽制だな。」
「どこかの牽制へったくそなピッチャーとは違うのよ、ふふん。」
放課後の練習メニューが決まりました。あーあ。俺が牽制へたくそなせいです。
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