「運命」と「トマト」と「図書館」
飲食店を営む私は、自分の店で出す新メニューを考えていた。
人々の目を引く奇抜な、それでいて味は馴染みがあって安心感を与えられるような…そんなものは無いだろうかと頭を悩ませる。
平凡なものではダメだ。
新しい目玉商品になるような人気が出るメニューがいい。
とは言ってもなかなか思いつかず、私は店の中で悩むのをやめて散歩に出ていた。
近くの公園を散歩していて、ふと思い立つ。
「そういえばこの公園には図書館が併設されていたな…。ちょっと、覗いてみるか。」
着想はどこで得られるか分からない。
私は早速、図書館へと足を運んだ。
市営の図書館であるそこは、それ程大きくないながらも足を踏み入れると独特の静けさと雰囲気を醸し出していた。
図書館内には常連らしき年配の方や子連れの母親が慣れた様子で過ごしている。
私は何を探すでもなく、ぶらりと本棚の間を歩いた。
あまり図書館に来ることは無いが、こういう雰囲気は落ち着くものがある。
私がたまたま歩いていた本棚は、外国の作家が書いたファンタジーの本が並ぶ本棚らしい。
何気なく、一冊の本を手に取る。
その表紙には、地上に向かって墜落しようとしているであろう大きな火の玉のようなものが描かれていた。
その絵を見た瞬間、運命を感じた。
その大きな火の玉が私にはトマトのように見え、墜落しているような様に衝撃を受けたのだ。
「これを皿の上で表現できないだろうか…」
静けさ漂う図書館でぽつりと呟く。
考え始めるうちに、みるみると新しいメニューについて思い浮かんできた。
「よし!」
そう小さく呟くと、私は足早に図書館を後にし店に戻ると、思いつくまま料理を作り始めた。
「茹で時間はこれくらいで…湯むきをして…そうだ、ソースは…」
あの表紙を見てから発想が止まらない。
まさに運命の出会いだったと気持ちを高揚させながら私は新メニューの開発に向き合った。
そうして出来上がった新メニューは、まさに新しい目玉商品に相応しい出来となった。
三題噺 あいむ @Im_danslelent
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