「南瓜」と「歌う」と「菜っ葉服」

ふんふふーん♪と鼻歌を歌いながら、よく菜っ葉服の似合う男性が子気味いい音を立てながらカボチャを切っていた。

「えらくご機嫌だね。」

そう言って、同じように菜っ葉服を着た男性が声を掛ける。

ご機嫌な男性の隣りでジャガイモを剥き始めた。

「まあね~。」

そう返事して鼻歌を続ける。

ご機嫌な理由を教えてはくれないらしい。

「ねえ、知ってる?」

ご機嫌な男性は唐突にそう問いかけた。

「なに?」

「カボチャって、南の瓜って書くじゃん。なんでか知ってる?」

二人とも手を休めることなく会話を続ける。

「いや、知らない。」

「カボチャって昔カンボジアから伝えられたらしい。だから、〈南蛮渡来の瓜〉って意味で南瓜らしいよ。」

「へえ。」

ご機嫌な男性は自慢げにそう語った。

そして無言になる。

「え?それで?」

自慢げに語られるだけ語られて、拍子抜けた男性は続きがあるのかと思い問いかけた。

「ん?それだけだよ。」

事も無げに男性はどう告げると、ご機嫌そうに鼻歌を続けた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る