「焼け野原」と「拾う」と「積み木」Part1

その日、街でひと仕事終えて帰ってくると、一面焼け野原だった。

どの家も燃えていて、火の森に入ったようだった。

ドサリとどこかの屋根が燃え落ちた音で我に返る。

「うちは…?」

戸惑いながらも自分の家へと向かった。

自分の家の前に着いて呆然とする。

他の家同様、大きく燃え上がっていた。

「父さん…母さん…いちた…」

火を避けながら、家の中にいるはずの父と母と弟を探した。

見つからない。

どこかに逃げたのかもしれない。

他を探そうとしたところで火の柱が自分めがけて倒れてきた。

「ッ!!!」

すんでのところで避ける。

「あ…危なかった…」

火の柱が倒れてきたせいで家の中はこれ以上踏み込めそうにない。

「はな!!!」

その時後ろから聞き覚えのある声が聞こえた。

振り返るとそこには母と弟がいた。

「母さん!!」

母と弟に駆け寄る。

「よかった、無事で。」

そう声を掛けると、母は笑顔で返してくれた。

弟はお気に入りの積み木をぎゅっと握りしめ、母に抱かれていた。

どうやら逃げる時に咄嗟に拾ったらしい。

「父さんは?」

「まだ帰ってきてないの。」

母は不安そうにそう告げた。

「探してみよう。」

そう言って燃え上がる村の中を探し回った。

しかし、父の姿は見当たらない。

そう思っていると、村のみんなが集まっているところに合流することが出来た。

「ああ、無事だったのね。」

そう笑いかけられる。

「父さんを知りませんか?」

「あんたのお父さんなら、逃げ遅れた人を助けてるよ。」

そう言われて救護している人の方に目を向けると、父がいた。

「父さん!」

「おー、お前たちも無事だったか!」

父は嬉しそうに駆け寄ってきた。

「消火しようにも火の手が多くてな…村を建て直すのは無理そうだ…」

そう悔しそうにつぶやいた。

「…どうなっちゃうの?」

「街か他の村に移り住むしかないなぁ…」

不安そうな様子を見て取ったのか、父は明るく言った。

「なあに、なんとかなるさ!新しいところもきっと楽しいぞ!」

父にそう言われるとなんだか大丈夫な気がする。

父と話終えると、自分も他の人を助けて回った。

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