カノジョ
僕には自慢の彼女がいます。
顔は芸能界に入っても天下を取れるくらいの美人さんです。いや、天下は言い過ぎかもしれませんが「彼氏だから」とか、そういう贔屓目なしに考えても大人気女優になれると思います。
しかも、すごい家庭的で、芯があって、優しくて、あんまりぶりっ子しないけど甘え上手で……。
……え? 嘘つけって?
確かに顔も良くて性格も良くて、料理は上手いし、おまけにスタイルも抜群! ……なんてことを聞いたら「マンガじゃん……」って言いたくなるのもわかります。
でもね、残念なことに現実なんです。
ああ、「リア充死ね!」とか言わないで。なんでそんな彼女が僕なんかを好きでいてくれるのか、一番不思議に思っているのは僕自身だから。
ちなみに僕のスペックは……興味ない?
まあ、とりあえずこれだけ聞いてください。自分で言うのも変ですけど、僕はどこにでもいそうな至って普通の青年です。
報道番組で、犯人の家の近所の人のインタビューとかあるじゃないですか。容疑者の普段の生活態度を聞くやつ。ああいうので、
「そうですね〜、ゴミ捨て場で一緒になる時なんかはちゃんと挨拶をしてくれましたよ。しっかりしてる好青年って感じでしたねえ……。まさかあんなことをするとは夢にも思いませんでした」
って言われそうなタイプ。なんとなくの想像はついたと思います。
……あ、そうそう。今日は彼女が僕の家に泊まりに来てるんです。
さっき甘え上手だと言いましたが、僕にとって朝起きるときが一番彼女が甘えてきてくれて、一番幸せな時間なんです。
少し広めのベッドで、起きているのがバレないよう目を瞑って寝たフリをする僕の背中に、ゆっくりと身体を寄せるカノジョ。
少し意地悪をしてカノジョから少し離れてみます。するとカノジョは僕の脇腹に手を置いて、ゆっくりと身体を近づけます。
息が首筋にかかって少しくすぐったいですけど、まだまだ寝たフリはやめません。
寝たフリをやめない僕に、しびれを切らした彼女は僕の名前を呼んで甘えてきます。けれど、今日はカノジョも寝ぼけているのか、ただただ無言で抱きついてきます。
背中に触れているカノジョの感覚を楽しみつつ、僕は彼女に声をかけます。
「おはよう。そろそろ起きようか」
「うーん……まだ寝る。あと五分……。ねえ、ギューして……」
その声を聞いて、彼女の寝顔が見たくなった僕は、彼女を起こさないよう、身体を動かさずにそのままの姿勢でゆっくりと目を開けます。
僕の目の前には、スヤスヤと眠る、いつもと変わらない彼女の可愛い寝顔。
ああ、今日もいい一日になりそうです。
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