第32話お祭り! その1

 あれから数週間が過ぎた、3人とは相変わらず騒々しい日々が過ぎていった。俺の仕事先は未だ変わらずヤエには不満そうだが、こればっかりは縁だと思っているのでしょうがない。そして熱い夏が過ぎて秋彼岸が近づく頃だった。

「そろそろ私のお祭りね!」

「はぁ? どうしたの急に」

「その次の週が私のお祭りね!」

「八幡様の祭りと日枝神社の?」

「そうよ! 今年は楽しめそう!」

「あ〜今年まで……2人ともな」

 この二人、元々ヤエとヒエは五泉市を治める女神だったが……まぁ今はこうして一緒に暮らしてる。

「そう言えばさ……いい伝えだとさ祭の前には、2人で相撲をして勝った方の祭りが晴れるって聞いてたけど?」

「毎年やってたわねヒエと」

「楽しかったわねヤエ!」

「そうなんだ、本気でやってたの?」

「「勿論!」」

「たっだいま~!」

 今日も元気な茉希ちゃんが帰ってきた、折角の祭りだもんな楽しめるなら楽しもう。

「おかえり茉希ちゃん、丁度良かった八幡様の祭り皆で行かない?」

「えっ? うん良いよ」

「じゃあ皆で行こう!」

「じゃあさ、全員浴衣で行こうよ!」

「あっ俺はパス」

「何でさ!」

「あのさ……スースーするのが嫌なんだよね」

「アナタ……一緒が良いな……」

「そうだよ!」

 まったくもう本当に苦手なんだよなぁ、何とか説得して作務衣で納得してもらった。

「着付けできるの?」

「アタシできるよ?」

「そうなの!?」

「何で驚くのさ……アタシだって女だよ、昔お母さんが教えてくれたんだから!」

 そう言えば茉希ちゃんの家は……それなら納得がいく。

「じゃあ浴衣と作務衣買いに行かないとね、ヤエ! 予算は?」

「大丈夫よヒエ! 可愛いの3人分揃えましょう!」

「アタシの分迄買ってくれるの?」

「当たり前じゃない、私達は家族じゃない……良いわよねアナタ?」

「当然!」

 祭りは来週だ、まだ夕方だし五泉で服買うなら……

「取り敢えず、しまむら行くか?」

「そうね、今日は外食にしましょうか?」

「キャッほう!」

 ヒエと茉希ちゃんがハイタッチしてる、ヤエの料理好きなんだけどなぁ俺、4人でしまむら迄歩いて行くと、夕方なのもあるが大分涼しく感じる様になった。おかげで歩くのも苦にならない……ちょっと遠いだけで、遠くから太鼓の練習だろうか? 音が聞こえると突然ヤエとヒエのテンションがおかしくなって来た。

「おい……2人共どうした? 何かおかしいぞ?」

「そうだよ、何でそんなに?」

「漲るわ!」

「滾るわ!」

「落ち着け! ヤエとヒエはいま人間でしょうが」

「ふっふふ! アッハハハ! ヒエ帰ったら分かってるわね!」

「アッハ! 久しぶりね手加減なしよ!」

 俺と茉希ちゃんは眼中に無いらしい……しまむらにつくと、3人が一斉に浴衣コーナーに向かって行くのを見て、俺は1人作務衣を探し始めた。適当にサイズだけ合わせてヤエの元に向かうと、茉希ちゃんが2人の浴衣を選んでいた、元々の育ちは良い娘なんだよ審美眼も良いんじゃないか? 普段着はアレだけど可愛いしカッコいい、結構モテそうなんだがなぁ今度聞いてみようか? 3人共浴衣を選んで俺の作務衣と合わせてお会計してもらう、買い物が終わり外に出るとすっかり暗くなり全員お腹が空いて来たようで。

「お腹が空いたよヤエ」

「夕飯何処で食べる?」

「つるみ食堂で良くない? 帰り道だしさ」

「あそこの料理も中々よね……行きましょう!」

 歩いていくと何処かの町内会の練習だろう祭囃しが聞こえてくる……

「ヤエ、ヒエ帰るまで我慢してな」

「うっうう……」

「何か怖いよ師匠……」

「ご飯食べたら落ち着かないかなぁ?」

 暫く歩いて、つるみ食堂で美味しく定食を食べながら何かエキサイトしてる2人は放っといて茉希ちゃんに聞いてみた。

「あのさ……茉希ちゃんってモテてるでしょ?」

「うん? まぁ声をかけて来る男はいるけどさアタシは師匠一筋!」

「女の子にもモテてるよね?」

「へっ!? うっ……まぁそれなりには……」

 まぁこの娘を好きにならない男は居ないだろう女も……

「そっか……他に好きな……」

「それはないよ! アタシは執念深いんだ今だって我慢してる、それ位好き!」

「ありがとう茉希ちゃん、嬉しいよ」

 食べ終えると店を後にする、アパート迄はすぐそこだ、が……通り道に町内会があった祭囃しの音が近づくに連れて大きくなる、2人の様子がヤバい!

「茉希ちゃん! ヒエをお願い!」

「わかった!」

「ちょっと何すんのよ!?」

「アナタ!?」

 俺がヤエを、茉希ちゃんがヒエを抱きかかえてアパート迄急いで帰ると玄関に放り投げる。居間に入るとすぐさまヤエとヒエが2人でシャワーを浴びに行った。

「ねぇ師匠……ヒエとヤエ何だけど……」

「黙って2人でシャワーに行ったね、初めてじゃないかな?」

「嫌な予感しかしないけど……」

「茉希ちゃん俺とゲームしようか?」

「うん! 今日は何を狩ろうか?」

 2人でゲームを遊んでいるとガラッと風呂場から勢い良く裸のまま出て来る元女神2人、するとそのまま布団へ……おいおいおい!

「アナタごめんなさい……愛してるわ……でも……こうするしか無いの……見ないで」

「健ごめんね……私達……我慢が……見ないで」

 相撲勝負じゃなくてコッチの勝負? ちょっと始めないで!? じゃあ雨ってまさか……茉希ちゃん空気に当てられてモジモジしないで!

「ストーップ!! 落ち着け2人共! もう女神じゃないんだから!」

「駄目……身体が火照って……」

 止めてる間にも既にもつれ合っている……祭囃しに当てられて!? そんな馬鹿な! 2人に誘われる様に茉希ちゃんが服を脱いでヤエ達の中に加わって交わり始めると。

「ちょっと!?」

 俺を無視するのは良い! でもこれはおかしいよ助けてっ! 大女神様っ! とにかく引き離そうと近寄ったのが不味かった。

「アナタも? ……良いわ……脱がしてあげる……」

「違うって! 落ち着いて!」

「健……勝負の邪魔するなら……アンタも……」

「師匠も……一緒に……きて……」

 服を脱がされ、俺の……我慢が……色々限界でも……本当に助けて! こんな風にしたくない望んで無い! それでも遠慮無く俺の身体を擦る。

「良いのよ……アナタ……我慢しなくて……交わりましょう……」

「フグっ! ム〜ッうん!」

 茉希ちゃんが口を塞ぐ様なキスをして来る、それでも流されてたまるか! 正気じゃない娘と何て出来ない! 本当にお願いします大女神様っ!!

『まったく……しょうがないですね……』

 部屋を眩しい閃光が光ると近所の避雷針に雷が落ちた。

『流されても別に良かったのですよ』

「よくねーよ! はっ!?」

 3人共気絶してる……助かった……本当に良かった。もし若ければ喜んで交わってただろうだが……いや今でも、まっいいか……3人を布団に寝かせてタオルケットを掛けておく、風呂場に向かいシャワーを浴びて出ると、俺の布団の上に茉希ちゃんが座っていた。

「師匠……アタシ……」

「良いよ別に、ちょっとヤバかったけどね」

「うん……今は正気だから、だから……」

「わかったよ、そんな泣きそうな顔しないで……おいで」

「うん……健さん、大好き」

 茉希ちゃんを抱きしめて横になり迎え入れた。


「ありがと健さん……」

「師匠って言ってくれた方が」

「普段はね、今ぐらい良いでしょ……健さん、もう……」

 時計は午前零時だ、流石に……

「バイトあるでしょ?」

「徹夜する位良いでしょ? 早く……」

 そう言うと俺に抱きついてきて、そのまま茉希ちゃんは眠りについた。


 そのまま俺はヒエと茉希ちゃんがバイトの時間まで起きていて、全員に説明するハメになった……

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