第25話厄介事 その1
うん? ここは何処だろう森の中だ……見渡すと見覚えが有る様な無い様な……木々の陰から光と共に美しい女性が現れる。
「お久しぶりです八神さん」
「あ〜大女神様?」
「はい……貴方にお願いがあって、こうして夢の中に参上しました」
「あの……厄介事ならお断りですが、そうもいかないんでしょ? こうして現れるって事は?」
「はい、ヒエとヤエは今は只の人間です……頼れるのは八神さんだけなのです」
「あいつらと茉希ちゃんを守る事になるならやりますよ」
「ありがとうございます八神さん、早速ですが新潟駅周辺の異変についてです」
「まだ終わってなかったの!?」
「はい、ノエの力が日に日に弱まっているのです。それどころか……」
「弱まっている? 瘴鬼でしたっけ、彼奴等のせいですか」
「そうです……既に戦ってくれている人間にも大怪我を負って入院しており」
「まさか……瘴鬼とやらが強くなっていると?」
「少なくとも五泉市に現れた幽鬼よりも弱いですが、瘴鬼共に地脈を押さえられてしまいました……故にノエの力が……」
「解決策は?」
「地脈に神気を流し込み満たせば瘴鬼は消滅します、八神さん貴方の身体に漲る神気をどうか……ノエ……に……もう……」
そこまでで目が覚めた、寝汗が酷い……起き上がるとヤエが朝食を作っていた、何故か我慢しきれず後から抱きしめる。
「きゃっ! ちょっとビックリする、あっ……んっ……」
ヤエの唇を塞ぐ乱暴にならない様に、少しの間ヤエを抱き締める。ヒエと茉希ちゃんが帰ってくるまで……
「どうしたの健? 私は何処にも行かない健の側にいるわ……それに……二人が帰ってきちゃう……」
「あっ……そうだな……ごめんよ、ちょっとシャワー浴びて来るよ」
シャワーを浴びながらさて……なんて言い訳しよう、仕事帰りに直ぐに解決するなら苦労はしないが……ヤエは勘が鋭い下手な言い訳は通じない残業って事で行くか? 悩んでいると二人共帰ってきたようだ、慌ててシャワーから出ると4人で朝食を食べながら。
「あのさ……今日帰り遅くなるかもしれないから夕飯先に3人で食べてて」
「どうしたの? 仕事忙しいの?」
「うん、流石に仕事に慣れてきちゃうとね、こき使われるんだよ」
「へ〜じゃあ朝は一緒に行こうよ師匠」
「うん、良いよ」
「じゃあそういうことで」
「本当に残業?」
ヤエの目が怖いが、他に言いようがないし3人は巻き込めない。
「残業だよ、頼られてるって前向きにね考える事にする」
「そう……」
ちょっとヤエそんな顔しないで!
「でも! ヤエの夕御飯は食べたいから残しておいてくれよ! 帰ったら食べるから」
「うん……わかった」
朝食を終えると支度を済ませてアパートを出ると、いつもの様に駅まで茉希ちゃんと手を繋いで歩くと
「師匠……何か隠してない?」
どうして女の人って今日に限って感がいいんだ?
「別に何も隠してないよ、隠す必要もないし」
「そう? 嘘ついたら……もし師匠に何かあったらアタシ達は絶対に許さないから」
アタシ達か……怖いなぁ3人掛かりで説教されるのか。
「大丈夫だよ、只の残業だよ! ほら、もう駅だ手を……」
「ヤダ! 今日は離したくない!」
繋いだ手に力がこもる、ヤッパリ何か勘付いてるのか?
「わかったよ、離さないからついておいで!」
茉希ちゃんの手を引き駅まで走り出した。こっそりと、茉希ちゃんに神気で作った探知機を付けておいた、これで彼女に何かあっても把握出来る……実は一応ヒエとヤエにはもう付けてある身体の奥深くに……それは別の話だ。新潟駅で茉希ちゃんと別れて会社に向かうと、いつもの様にロッカールームで栄養ドリンクを飲んで頑張るか!!
夕方頃、早めに仕事を終えると。茉希ちゃんの気配を探ると、付近少なくとも駅周辺には感じられない……動くなら今か……駅のコインロッカーに荷物を放り込むと、早速動き出す、さっさと帰ってヤエの手料理が食べたいからな! さてと……地脈とか言ってたな大女神様は……霊脈とは違うのか? 細かい事はどうでも良いさっさと探るか、人気のない所で地面に左手をつけて神気で周囲を探ると、随分と弱々しい霊気の流れとそれに沿う様に流れる『ナニ』かが流れている、これか? 少し駅の手前あたりで流れが交差してる場所がある、向かって見るか……やだなぁ怖いなぁ。
近づくにつれて何やら騒がしい気配が漂ってくる、街の喧騒では無く誰かが『ナニ』かと戦っている気配だ。この土地の管理者に選ばれた人間だろうか……そっちに敵が引き付けられるなら引き付けて貰って、俺は俺のお手伝いをしましょうかね……
こっそりと何も知らないフリをして目的地に近付くと、小さなお社があったが……随分と寂れているな手入れぐらいしてやれよ可哀想に。手を出そうとすると不意に目の前に敵意が集中してくる、きやがったか! 辺りに散らばっていた敵意がどんどん集まって来る、面倒くさい! 集まるだけ集まりやがれ瘴鬼が集まるまで神気を集中させて限界まで凝縮させていく、左腕が熱いがまだだ目一杯蓄えろ。目の前に瘴鬼が姿を顕現させるがまだだろう? 襲い掛かってくるが幽鬼や呪いとなったヒエの比ではない、余裕で躱し続けていると瘴鬼がまだまだ集まって来る、そこに6人組の男女が現れ何か言っているが無視する。それにしてもこの瘴鬼の敵意が……違和感がある。
「おい! お前等このバケモン何か知ってるか?」
「そっそれは……ってあんたは何者だよ!」
「通りすがりのオッサンだよ! 良いから答えろコイツの正体を!」
「それは……姫様だよノエ様って言う名前の……」
呪いの塊だったヒエと似たような状態か、あらかた瘴鬼が集まったのだろう巨大な鬼が姿を表した……もう良いか、この瘴鬼を纏めて吹き飛ばす!! ちびっ子女神は神気を当てれば起きるだろう……多分
「おーい! これからコイツ吹き飛ばすから離れてろ!」
「まって! そんな事をしたらノエ様が」
「良いから離れてろ!」
しかし……呪いと言い、瘴鬼と言い産み出しているのはひょっとして……おっと! 鬼が腕を振るうのを避けると近くのコインパーキングに止めてあった車が吹き飛ばされていく、流石に当たったらただじゃ済まないな……今の一撃から狂った様に鬼が暴れ始めた、ヤバい! 余裕カマしている場合じゃ無かった、6人組がそれぞれの武器を持って鬼に向かって行くがその武器じゃ……案の定焼け石に水だ、全く……鬼の攻撃を躱しながら6人組のリーダーを探すと
「おい! あんたがリーダーか?」
「何のようだ!」
「今からあの鬼を吹き飛ばすから社まで誘導してくれ」
「何だと!?」
「それぐらいは役に立てよ、あんた等がしっかりしてればノエはこんな姿にはならなかった!」
「ぐっ! おい! 皆で鬼を社まで押し込め!」
きっと人間の愚かさが招いたのだろう、そして怒りに触れた……女神の。
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