第16話GW a gogo!その5

 ヒエがシャワーを終えて出て来ると。コンビニへ買い物に1人で出掛けた、今日の思い出を楽しく語る為に必要なお酒だ! ヒエは飲めるけど……ヤエって飲めるのかな? 甘いカクテルでも買っていくか、1人一本だけにしておこう。明日もあるしな、ポテチをおつまみに買って部屋へ戻ると二人が待っていた。

「今日はお疲れ様! お酒買ってきたよ、ヤエも飲めるよな?」

「うん、いただくわ!」

「ほいっヒエ!」

「ありがとう!」

 3人で乾杯をすると、今日撮った写真を見ながら飲みながら語り合っていた。二人の笑顔に見惚れる、酔ったかな? 何十年ぶりかに飲んだ酒のせいかな……二人が艶っぽく見えて来た、いかん! ソファーベッドに飛び込む。

「おっ俺もう寝るわ! お休み!」

「ちょっと健……寝ちゃうの……?」

「明日もまだ観光しなきゃだからな!」

「違うでしょ……ねぇ……もう少し……」

 なんかヤエの様子が……

「ヤエはね……酒癖が悪いのよ……私以上にね」

「はぁ!?」

「だから普段からお酒を飲まないのよ……どうしてくれるの健?」

「私達を酔わせておいて……何かしら……とっても熱いの……」

「じゃあエアコンを強め……」

 二人が俺の上に伸し掛かってくる。ヤエに怪しい手の動きで顔を撫でられる、背筋がゾワッとすると二人に背を向ける。ヤエの目が女の目だ! ヒエに布団ごと抱き締められる、こっちもか! ズクンっと腹の傷が痛む、思った以上の痛みに苦悶の声が出る。

「ぐがっ!」

「どうしたの健……?」

 二人に気付かれないように堪える、何で腹の傷がこんなに痛むんだ!

「あっ明日もあるんだ……もう……休め……」

「そんな事言わないで……ねぇ」

「「お休みのキスをして」」

 ほっ……そんな事か、腹を抑えながら起き上がるとヤエからキスしてきた、いつもと違う濃厚な……そのままヤエのベッドまで行くと押し倒して。

「はい! お休み!」

「ちょっと!」

「ヒエ……おいで」

 呼ぶとヒエからも濃厚なキスを求めてきた、そのままヒエのベッドに押し倒して。

「ヒエもお休み!」

「ちょっと!」

「明日もあるんだよ? 楽しい事が、これ以上先は帰ってからね!」

「「もう! バカ!」」

 二人とも布団を被ると直ぐに寝息が聞こえて来た、まったく疲れてるくせに……それよりも、この痛みは……手で押さえて見ると熱い液体が掌に伝わる、傷痕を見ると血が流れていた。押さえてもどんどん傷口が広がっていき血が流れていた、傷口を除くとそこには内臓はなかった……空っぽの体内にあるのは鈍色の光を放つ『結晶』だった。




「お……きて……起きてってば!!」

「何で床で寝てんのよ……」

 えっ……アレ? 俺は一体……傷口を触って見るが何ともない床に溢れた血もない。

「もう! 今日も行く所あるんでしょう? 朝御飯食べに行きましょう!」

 お酒のせいか……

「おっけ! 顔洗って来るから、ちょっと待ってて」

 冷たい水で顔を洗う……この感触は本物だ……鏡の中に映る自分の表情は、自信の欠片もない暗い顔だった。もう一度洗って気分を何とか変え、二人の前に出て不安を消す為にキスをする。唇の感触、溢れる吐息……全て本物だった。

「ちょっと!」

「いきなりはやめてよ!」

「ごめんな、確かめたくてさ! さあ行こうかレストラン!」

 3人でレストランで朝食を取り、時間を確認すると……7時半か、節々が痛い事を伝えると。

「床で寝てればそうなるわよ……ねぇヤエ?」

「そうよイビキ何て普段してないのに……どうかしたの?」

「久し振りのお酒と疲れが出ただけだと思うよ、気にしないで」

「なら良いけど……」

「今日はどこに連れってくれるの?」

「スカイツリーだけど……そうだな……ヤエ、予算はどう?」

「結構残ってるわよ」

 ヤエから残りの予算を聞くと、これならバスを気にしなくても良いな……

「良し! 予定変更だ、スカイツリータウンを観光だ!」

「荷物は、ホテルからシロネコヤマトでアパートに送る。手ぶらで気楽に行こう!」

「美味しいものあるかしら……」

「スカイツリーにも登るの?」

「全部だ! 全部楽しんで、明日からまた頑張って働いて生きていこう!」

「「うん!!」」

 部屋に戻り荷物をまとめてホテルから宅急便で送り出す。

「支度は終わった、さあ最終日楽しむぞ!」

「ねぇ大丈夫なの健?」

「大丈夫! 手持ちは結構あるから!」

「ヤエ! 健もこう言ってるんだし楽しもうよ! 行こう!」

 ヒエに手を引かれホテルを後にすると、電車を乗り継ぎ、上野から東京スカイツリー駅に降り立つと3人で見上げる。

「高いわねぇ〜」

「本当に……」

「いや、ヤエ達は空飛べてたよね良く考えたら」

「今は、ただの人間よ? それよりこんな建物を作る人間に感動するわ……」

「確かにそうよね……」

「高さは……確か634メートルだったかな?」

「先に登りましょうよ! 私見てみたい!」

「ヒエに同意するわ! 健、行きましょう!」

「人混みが凄いから二人共手を離すなよ!」

 チケット売り場で入場券セットが販売されていた、この際だ聞いてみるか。

「ヤエ、ヒエ、星と魚どっちが見たい?」

「星?」

「魚?」

「え〜と……健に任せるわ、ねっヒエ」

「そうね!」

 時間を考えると、プラネタリウムは上映時間があるから今回は水族館でいいかな? 水族館の入場券セットを買うとエレベーターに乗り込む、結構早いな……あっという間に天望デッキに付くと。二人が窓際まで駆け寄る、眼下に広がる昼間のビル群に圧倒されているようだ。

「これが東京……ここまで繁栄をもたらす何て……」

「私達……未熟者だったのね……」

「気にするなよ、今は人間なんだからさ」

 何だか二人が凹み始めたので、さっさと手を引き天望デッキを見て回る。天望回廊もあるが流石に予算オーバーだ、二人を元気づける為に写真を撮る事を伝えると。腕を組んできた少しは元気出たかな……フォトサービスで写真を撮る。

「思い出がまた1つ増えたな二人とも」

「「うん! ありがとう!」」

「それじゃ腕を離してくれるかな?」

「嫌よ! 今日はこうしていたいの! 何でか分からないけど……」

「どうせ知ってる人間もいないし気にしないの!」

 観念すると天望デッキを降りて水族館へと向かう。周りはカップルだらけだ、もういいや……二人とも俺の大事な人だ。

「ほら水族館ってここさ」

 暗いフロアに幻想的にライトアップされた万華鏡トンネルの水槽が並んでいるのを見てヤエがポツリと

「綺麗……」

「これは……不思議な空間ね……」

 そりゃそうだよ俺も驚いてる、こんなにも綺麗だなんてな……来てよかった! ペンギンが居るエリアに着くと。

「「かわいい!!」」

 でしょうね……そんな気はしてた、俺の腕から離れて一気にペンギンに向かって行った。丁度ペンギンの赤ちゃんが産まれて公開されたばかりらしい、二人とも目が釘付けだ……ゆっくり見ると良いよ、微笑ましく見守る。

 …………ちょっと長いかなぁ? 声をかけるか

「お二人共、お昼にしませんか?」

「えっ? もうそんな時間!?」

「写真をもう1枚だけ! 赤ちゃんペンギンが可愛いの!」

 まったくもう……ヤエとお昼のお店を考える事にした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る