第17話GW a gogo!その6

 ヤエとお昼のお店を考える、昨日は中華料理だった。夜も朝も洋食だったとなると……

「和食ね!」

「回転寿司でも行くか!」

「寿司!? 食べたい食べたい! まだ食べたこと無い!」

「決まりだね行こうか!」

 回転寿司屋は混み合っているが、少し待つと3人一緒に案内される。テーブル席に着くとヒエの目がキラキラしている。

「そう言えば生魚料理って初めてか?」

「そう言えばそうね、ごめんなさいヒエ、健……」

「何で謝るんだ? なぁヒエ?」

「ヤエは別に悪くないでしょ?」

「私の料理のレパートリーの少なさに気づいたのよ……」

「そんな事ないよ? ヤエの料理って美味しいし、刺し身や寿司何て特別な日だけで充分!」

「って事は今日は特別ね!」

「そう! ヒエの言うとおりだ、ヤエも楽しんでくれ」

「うっうん! でもどれから食べればいいか……お皿が並んで回ってるし……」

「そっかヤエ達は……任せて!」

 一皿に4貫の盛り合わせを適当にレールから取って並べる、ヒエが取りたそうにしているので取らせてあげるとテーブルは賑やかになっていく。比例して財布の中が寂しくなっていくのが実感出来る。

「はい! それじゃいただきます!」

「ねぇどうやって食べるの?」

 そこからかよ! 二人に説明しながら食べる、二人は初めての食感に驚いているようだ。ヒエは山葵にやられて涙目になっているが文句無しの様だ、二人共気に行ったネタを見つけたのか注文する様になった……よかったお金多めに持ってきて……喜んでくれたならなりよりだ。

「ごちそうさま! 美味しかったねヤエ!」

「うん! ありがとう健!」

「よっし帰るか我が家へ!」

 お会計は……言えないなこれ……気を取り直して駅へと向かうと。

「あれバスじゃないの?」

「もう出たよ予約したバスは」

「ちょっと! どうするのよ!?」

「大丈夫! 予算があるから帰りは上野から新幹線だ!」

「「新幹線!!」」

「なにそれ! バスとは違うの?」

「食いつくなぁヒエは、新幹線ってのは物凄く早い電車だよ」

「だから残りの予算を聞いてきたのね」

「そうだよ、折角だからね」

「早いってどれ位?」

「新潟まで2時間位だったかな」

「バスだと7時間位だったわよね?」

「ヤエは興味ない?」

「想像も付かないわね、神としての場合飛ぶ速さは光速を超えるから……」

「だから……人間の作った物がどの程度の速さなのか見せてもらおうじゃない!」

 あれ? 俺の知らないヤエの琴線に触れたらしい、ちょっと興奮気味だ。とりあえず3列シートの切符を買うとホームで新幹線を待つ。お茶とコーヒーを買っておく、さあやって来ますよお二人共……ホームに新幹線が入ってくる。

「随分と滑らかな形をしているのね」

「流線的って言ってね、さあ乗って! 指定席だから余裕で座れるよ」

ヒエが窓側、ヤエが真ん中、俺は通路側の席だ。新幹線が動き出すがまだ地下だ、本番は大宮を過ぎてからだ……大宮を出発すると流れる景色が速くなっていく、どんどん過ぎ去るビル群にヒエではなくヤエが興奮していた。二人は窓の外をじっと見つめている、俺はコーヒーを飲みながらスマホで撮った写真を見ていた。そろそろか高崎駅を出発すると。

「二人共もうすぐトンネルに入るよ30分位外の景色は……」

 二人共手を繋いで寝ていた……電池が切れたかな? 新潟までお休み……



 車内アナウンスが新潟に着くことを告げると二人を起こす。

「もう着いたの?」

「着くよ、降りる支度して」

 新幹線を降りて在来線に乗り換え五泉へ向かう、先程とは比べられない程の遅さにヤエが戸惑っているのがおかしい。

「新幹線速かったでしょ?」

「本当に速かったのね……人間って凄いのね……」

「便利になった分不便になった事もあるよ」

「そうなの?」

「うん」

「私また行きたいなぁ」

「じゃあヒエも頑張ってお金貯めようね」

「まかせて!」

「ヤエもね」

「うん!」

 終点の五泉駅に着くと3人共に伸びをしてから歩き出す。改札を出ると地元の空気を吸う。

「そう言えば東京は空気も水も不味かったわね」

「五泉はヤエとヒエのおかげで美味しんだよ空気も水もね」

「そうかしら?」

「きっとそうだよ……帰ろう、地元だから腕組まないでね」

「「ぐっ」」

「組む気だったのか……手を繋ごうか?」

「「うん!」」

 3人でアパートまで暗くなった道を歩く、旅行の話をしながらアパートのイリグチを曲がると、茉希ちゃんの部屋は暗かった……お土産買ってきたのにな明日ヒエに渡してもらうか、玄関の前まで来るとヒエが

「ちょっと健!」

「どうしたヒエ?」

「これ見て!」

 ん? 


 『空き部屋入居者募集中』


 茉希ちゃん出て行ったのか……ヒエが手を強く握って来るヤエも……なんだかんだ言って楽しくやってたんだな……優しく二人の頭を撫でると玄関を開けたと同時に電気が付く

「なっ!?」

「おかえり〜師匠」

「「「何で!」」」

「茉希ちゃん何で俺の布団の上に……じゃない! どうして部屋に!?」

「さてね〜誰かおマヌケさんがこれ落として行ったのよね〜」

 鍵を見せて来ると……ヤエが

「あっ!」

「ちょっと犯罪よ茉希!」

「良いでしょ別に……見たよね私の部屋?」

「出て行ったって……ちょっとまって」

 ニヤリと笑う茉希ちゃんを見るとヤエが

「ちょっとこの荷物何よ!」

「そうなるのか……茉希ちゃんあのね俺達」

「関係無い、アタシは師匠が好きだ傍に居たい」

「わがまま言わないの! ご両親はどうするの!?」

「うちはゴタゴタで離散状態なの知ってるでしょ!」

「ぐっ……」

「まっ良いんじゃない? 健」

「ヒエ!?」

「私は構わないわよ……もちろん渡さないけどね」

「どうせ旅行中に何かあったんでしょうが!」

「ふふん」

 鼻で笑うヒエが茉希ちゃんをおちょくって取っ組み合う、どうするんだよこれ……

「ヤエ……俺の気持ちは変わらないよ」

「知ってる……でも楽しいかもね、今この時は……襖外さないとね」

「良いのか? 俺は気が進まないんだが」

「茉希! 家に居るつもりなら生活費位入れなさいよ! さぁこの襖外して!」

「ありがとう! ヒエ、ヤエ宜しくね!」

 バタバタと襖を外され俺の部屋とヤエ達の部屋が繋がってしまう、俺のプライバシーは何処へ行ったのだろうか……

「おおぅ結構広くなったね! これで2人に抜け駆けされなくてすむ!」

「それはどうかしらね? 目の前で見せつけてあげてもいいのよ?」

 結構過激な事をおっしゃる元女神様だ、ヤエとヒエが茉希ちゃんに何やら耳打ちをして終わると、茉希ちゃんが珍しく顔を真っ赤にして目の前まで来て頭を下げる。

「お願いします! 師匠、アタ……私をここに置いてください!」

「いつもどおりで良いよ、もう襖を外しておいて……ヤエ、ヒエ良いのか?」

「私達はもう平気よ、ねっヤエ」

「ちゃんと生活費を入れてくれるならね」

「茉希ちゃん、俺は茉希ちゃんの気持ちにこた……」

 茉希ちゃんからキスされた、ヤエ達よりも濃厚な……


 ビキィッ!?

 

 今不穏な音がした様な……茉希ちゃんから身体を離すと……

「やっぱり目の前でされると腹が立つわね」

「そうね……でもこれで気が済んだでしょう茉希」

「ありがとうニ人共! 師匠大好きです!」

「えっ……?」

「よろしくね茉希」

「生活費を忘れない事、それとちゃんと大学に通いなさいよ?」

「アタシの稼いだお金はヤエに全部預けるよ」

「そんな事を言ってると厳しく行くわよ?」

「アタシを受け入れてくれたんだ、安いもんだよ」

「と言う訳で良いわね健!」

「おっおう……」

 俺の気持ちはどこかに吹き飛ばされ同居人が一人増えた……



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