第8話3人の生活サイクル ヒエ編

 八幡ヒエの朝は早い午前2時から彼女は働く、入社3日で配達ルートを記憶し誰よりも正確に配達をして誰よりも早く帰社する。入社1週間で既に猪口新聞のエースと云われている。



 ふっ……まぁ午前2時何て余裕だし、そもそも夜は寝てないし。アパートに帰って朝御飯食べ終わったら布団に入り、ヤエがいない分グダグダゲーム出来るし。この仕事天職よね〜配達ルートが村松方面で助かったけど……村松なら地図なんていらないし余裕よ。チラシを入れるのが面倒くさいけどね。社長も喜んでくれてるしヤエそれに健! 見てなさいよ、この私の稼ぐお金を! 5万円払って残りは何にしようかな? 課金は懲りたしな……そうだ! いつかお金を為めて二人に何かプレゼントしようか! そうすれば二人からもきっと……ムフッ


 お昼すぎに目が覚める、寒くて布団から出たくない。昨日コタツが欲しいと健に頼んだら、あと一ヶ月もしたら暖かくなるって言われて断られたんだ。ストーブまでは遠い……もうこのまま布団から出ないでおこう、スマホでネットを漁っていると。面白そうなゲームが紹介されている、ふむふむスマホでは出来無いのか……あ〜ゲーム機がいるのね健持ってないかな? 部屋を漁ってみようか? でもエッチな本とか出てきたら嫌だなぁ……どうせなら私と……ごめんねヤエ……私も健を愛してるの……普段は気持ちを抑えてるのにヤエが健にあんまりベタベタしてると嫉妬してしまう……

 でもこの前私達に正直な気持ちを健が打ち明けてくれたの嬉しかったなぁ、録音を聞いてみる。ヤッパリ嬉しいちゃんと私達を見てくれている、ずっと一緒かぁ……私も抱きしめてもいいかな健の事。

 最初は頼りない奴がよくも『呪い』の中にまでノコノコ入って来て、私を解放してヤエを救い出して……私の罪を背負って死んで……全てにケリはついたけど、健は自分の命を軽く見過ぎるのは過去のせいだろうか……そうはさせない。健は幸せが何か分からなくなっているだけ。私達が教えてあげないと……

 外が暗くなって来た。外から盛大なくしゃみが聞こえるとノックされる、茉希? 玄関を開けると。

「ヒエだけ?」

「悪い? ここは私達の家よ」

「まっ良いか、これ回覧板ね師匠に渡しといて」

「それにしても元女神様がジャージって……」

「うっっさいわ! 快適なのよ!」

「人間界は楽しい?」

「健みたいな事聞くのね……楽しいわ……特に愛する男と一緒に暮らせるっていうのはねぇ!」

「チッ! あんまりチョーシに乗ってると後で痛い目にあうわよ?」

「じゃあね師匠によろしく!」

 ふぅ~相変わらず可愛い娘ね、茉希の執念深さはどうかと思うけど……

 回覧板ねぇ取り敢えず台所に投げて置く

「とうっ!」

 健の布団にダイブしてみた、1回でいいからやってみたかったんです、下心なんて無いんです……健の匂いがする。アレ……何でヤエの匂いもするの……? まさか! 既にヤッてる? そんな健に限ってそれは絶対に無い、でもヤエが私の寝ている間に……今のヤエならやりかねない、それで健と私の知らない内に……

「そんなの駄目ぇぇえええ!!」

 絶叫を上げると。ガタン、ドアをノックする音が聞こえる。

「どうしたヒエ!! 何かあったの?」

 茉希の声がすると玄関を開けて泣きついて布団の前まで案内する。

「どうしたのヒエ? なんか出たの?」

「ヤエが……健と……やって……」

「はぁ!? 何いってんの? 師匠がヤるわけ無いじゃん!」

「じゃあ! 茉希もダイブすれば良いのよ!」

「いっ良いの? やるよアタシは?」

「じゃじゃあ一緒にイキましょう!」

「「せーの」」

「「とうっ!!」」

「しっ師匠!」

「健っ!」

「んっ!? 確かに泥棒猫の匂いがするわね」

 茉希と健の布団に包まる。

「でもさ……スンスン師匠は……ハァハァ絶対にしてないと思うよ」

「クンクンでもさ……スーハー……ヤエの匂いはどう説明するのよ」

 ガチャリと玄関の開く音が聞こえる……しまった! ヤエの帰宅時間だ……


「何してるのよ二人共……」

「それはこっちのセリフだよ! 抜け駆け禁止って言ったのにヤエの事信じてたのに! ヒエが可哀想だよ!」

「ヤエ……私達また争うのね……」

「はぁ!? 二人共取り敢えずそっから出なさい!」

「いやぁ! 寒い!」

 布団を剥ぎ取ったヤエがストーブを付けると振り返る。

「貴女達が思ってる事なんてしてないから! だって健よ? そんな事すると思う?」

「じゃあ何でヤエの匂いがするのよ!」

「そうだよ!」

「そりゃ私だって抱いてもらいたわよ……断られたけど」

「「断られた!?」」

「ヤエ……ヤッパリ争うしかないのね……私達」

「ちっ違う! 落ち着いてヒエ! ちゃんと話すから!」

「私も潜り込んでたのよコッソリと……」

 布団を丁寧に敷くと

「こんな風にね!」

 ヤエが健の布団に入り込んだ! 開き直った!? 茉希も潜り込もうとするが私が止める。

「ヤエ分かったからさっさと出なさい!!」

「嫌よ!! これは私のお役目なの!」

「聞いたことないわよそんなお役目!」

「なぁ3人で入れば良くね?」

「「「嫌よ!!! あっ……」」」

 しまった! ヤエが帰ってくると言う事は勿論……

「人の布団に何してくれてんだ! ヤエも出て来い!!」

「嫌よ!」

「駄々っ子か!? 出て来たらオデコ合わせてやるよ」

「ホント!!」

 ヤエの好きにさせるか!! 私だって健が好きなんだ。茉希に目で合図する、茉希が頷くのを確認すると。

「「せーの」」

「「とうっ!」」

 健の布団に入り込み二人がかりでヤエを抑え込む。

「さあ! 健いらっしゃい! 私達3人を出してみなさい!」


 少しの沈黙の後

「俺さ腹減ってんだよね、別に良いよ俺の事なんか放っておいて3人で楽しんでなよ」

「待って健! 今夕飯にするから!」

「いやお気遣いなく、どーぞ俺の布団に包まってるといいよ3人でな!」

 ヤエと茉希に、小声で

「謝っておこうか……せーので」

「「「ごめんなさい!!!」」」

「全く! 反省して!」


 3人で謝り、その日は茉希を含めた4人で夕飯を食べた。健は困った顔してるけど……

「楽しいわね毎日!」

 誰からも見られないようにそう言うと健とオデコを合わせるでなく頬にキスをした。

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