第7話3人の生活サイクル ヤエ編
私のアルバイトが始まってから5日が過ぎた、朝は健とヒエの朝食を作ってから健のお弁当を作っておく。健が起きてくると同時にヒエがアルバイトから帰ってくる。
「おはよう〜」
「ただいま〜」
「二人共おはよう!」
ヒエは朝食を食べるとスマホを片手に布団へと直行するとそのまま遊びながら寝落ちするつもりだろう。健は朝は強いらしい、どんなに寝不足気味でも起きると決めた瞬間一気にエンジンが掛かるらしい。それもどうかと思うけど……しっかりと朝食は全部食べてくれる好き嫌いも無いらしい。ヒエにも見習ってほしい……健が出社すると私の番だ!
惣菜キッチンサイトウへと出社すると私のタイムカードを打刻する。
「おはよう御座います店長!」
「おはようヤエちゃん! それといつも言ってるでしょ? 私の事はミホさんと呼んでね」
「ちょっとまだ馴れなくてすみません! ミホさん」
「おはようヤエちゃん」
「おはようございますシゲコさん」
「おはようです皆さん!」
「ヒトミちゃんも来たね」
店員は私を含めて4名、店長のミホさんに小野寺茂子さんに山田仁美ちゃん。ミホさんが全体を仕切り、和惣菜をシゲコさん。洋惣菜をヒトミちゃんが担当して私は洗いものにレジ打ちが仕事だ。全員で明日の献立を決めて行く、私は何時もメモを取る。何が役に立つか分からないからだ、献立は基本的に前日に翌日分を決めておくが都度追加がある事もある。開店前の清掃を行っているとミホさんとシゲコさんが
「ヤエちゃん今日は昨日の続きやる?」
「はいっ!」
「じゃあ今日の課題も決めとくから! 掃除終わらせちゃって!」
アルバイトを始めた時から開店前と閉店後に少しだけ料理を教えてくれる。シゲコさんがお休みの時はヒトミちゃんが洋食を教えてくれる。作った料理は新人コーナーに陳列されお店で売られている、売れる時もあれば閉店まで残る事もある。それでも皆が根気よく教えてくれる。
ヒトミちゃんは17歳で洋食を任せられている学校は夜学と云うのに通っているらしい。シゲコさんはミホさんの師匠で、ミホさんが店を始めるときからの付き合いらしい。本人達は腐れ縁なんて言ってるけど縁ってあるんだな……私達みたいに……
新人コーナーの料理を作っている時にヒトミちゃんに気になる事があり聞いてみた。
「ヒトミちゃんって先月休んでたって本当?」
ヒトミちゃんは調理をしながら
「結構キツかったんですよ風邪が、ねぇミホさん!」
「そうだったね……それで1人増やす事にしたんだよ」
それって……私達のせいだとは言えない……ごめんなさい。でもこれも縁よね……
「ほらヤエちゃん手が止まってるよ!」
「すっすみません!」
私が作った料理は冷めないように温めておきお昼に並べる。どうか売れます様に!
開店時間の11時を迎えると、ご近所のお客様が結構やって来る、正直忙しい! でも慣れてきたのか接客とレジ打ちは慌てずこなせる様になって来た。健が言ってたっけ、レジ打ちは慌てたら駄目だって……あっ! 私の作った料理が売れた!
忙しいお昼の時間が終わると、私達の休憩時間になる。基本的に賄い料理が無料で出るので御飯を持っていくだけで足りてしまう、家計に優しい……雑談を交わせる位には迎えてくれているのだろうか?
「ヤエさんの彼氏ってどんな人なんですか?」
ヒトミちゃんが突然聞いてきた、ミホさんやシゲコさんでさえ聞いてこない事を躊躇なく……
「普通よ? 多分」
「見た目は? 年齢は? 仕事は?」
「う〜ん見た目は普通なのよね……歳は今年厄年って言ってたわね」
「はっ!?」
「ちょっとヤエちゃんの男って41歳なの!? 私の同級生だったりして……」
「ヤエさんって年上好き何ですか!?」
歳で言えば私の方が年上とは言えないか……
「おやおや……どんな男何だろうね心配になるよヤエちゃん……」
「普段は……でもいざって時には助けてくれるそんな人です……」
「ヤエちゃんの男の名前はなんて言うの!?」
ミホさんがグイグイ来る正直に答えたほうがいいのかな?
「ヤガミタケシって言います」
「ヤガミ……帰ったら卒アル見てみるか……」
「ヤエちゃんヤガミタケシって八神健って書くのよね……まさか……」
シゲコさんまで喰い付いた!? まぁこの辺で話は切り上げないと危険かも……
「いけない! ごめんねヤエちゃんのプライベートにまで踏み込んじゃって」
「気にしないで下さい大丈夫ですよ!」
「じゃあ夕方の仕込み始めようか! ヤエちゃんは新人コーナーの調理を……今日はヒトミちゃんから教えてもらって」
「よろしくおねがいしますヒトミちゃん!」
「ビシバシ行きますよ!」
そのまま夕方までヒトミちゃんの理想の男性像やら、何やらを聞かせられながらグラタンを教えてもらいながら作った。殆ど男の話だったけどね……年頃か……
出来たグラタンを並べて、夕方の準備を整えミホさんが看板を営業中に変えると。お客さんがやって来る……
その日の閉店を迎え、売れ残ったグラタンをミホさんから貰ってアパートに向かう道中、健の事を想う何故こんなにも気持ちが溢れてくるのだろう。百年以上過ごしたから? 私とヒエを助けてくれたから? 良く考えたら41歳何て私から見たら赤子以下だ……笑みが溢れる。それでも良い! 今私は八神健を愛している! この気持ちは本物だ誰にも負けない。それを胸に抱いて……いつか受け止めて貰おう。
アパートに付くと茉希の部屋にも明かりが付いていた。そう言えばあの娘の食生活も……ドアをノックして名乗ると茉希が出て来る。
「なにか用?」
「これ残り物だけど分けてあげるわ」
グラタンを差し出す、すっかり冷えてしまっているが……
「電子レンジ位あるでしょ? 温めて食べて」
「へぇ~随分と家庭的になって来たじゃん」
「どうせカップラーメンしか食べてないんでしょう?」
「ありがとう、貰っとく」
「ねぇ……まだ健の事好きなの?」
「悪い? 私は執念深い女でね」
「もうあの歴史では無いのよ」
「関係無いよ、師匠がアタシを助けてくれた事は憶えている。修行の記憶もあるよ」
「無いのは霊力とその後の記憶……でも想いは心に刻まれてる、感謝してるんだよ元女神様には」
「感謝?」
「アタシを師匠にまた合わせてくれた事!」
「ふんっ! 風邪なんか引くんじゃないわよ!」
「師匠は渡さないからね……」
「そうね……そこは同意見だわ」
階段の下から呑気な声がしてくる……この声の主が私を惚れさせた男だ。
「何やってんだよ二人共風邪引くぞ?」
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