第4話これから

 朝の電車はやっぱり苦手だ、明日からもう一本早くするか……それにしても朝から嬉しい事があったもんだよ。手作り朝食にお弁当か、もう何年もなかった事だな。ヤエありがとう仕事頑張るよ、段々と混んでくる車内に辟易していると電車が終点につき今度は一斉に降りていく人の濁流に流されて行く。目的の駅ビルは歩いて2分とかからない、さて行くか……

 数時間後お昼休みに休憩室でグッタリとした俺がいた。オリエンテーションなげぇよ! さっさと研修させてくれ! 忙しい方が良いんだよ! 俺はそう言いながらヤエの手作り弁当を取り出すと、少しだけ疲れが取れた気がした。蓋を開けると焦げた鮭と野菜炒めがおかずだった、素朴だが作ってくれた事が嬉しくて美味しかった。こんな気持ちも死んだと思っていた、もしかして俺はもともと死んでいたのかも知れない。ヤエとヒエの存在が俺の感情を揺さぶる、ちゃんと上手くやれるかなこの先……休憩時間も終わり午後から本格的な研修の始まりだ、アイツラの食扶持も稼がなきゃな!

 今後のスケジュールが発表された1週間の研修の後OJT期間が始まるらしい。まぁこんなもんだろうコールセンタースタッフ何てさ……今日の研修が終わり帰りの電車が来ているがあまりにも混んでいるので一本見送った。

 そう言えばヤエとヒエ何してるんだろう? スマホまで持ってないよな確か、後アパートから出かけられたら鍵はどうするよ。オートロック何て無いぞ、そもそもあの二人に鍵を掛けると言う概念は有るのか? 何かヤバい気がして合鍵を慌てて2本作った。時間も丁度良く電車も空いていて快適に帰宅できたが……

「ごめん〜ヤエ〜許して! お願い開けて!」

「何やってんだヒエ?」

「たっ健〜一緒にヤエに謝ってお願い! 玄関が開かないの」

「ちょっとどけ」

 玄関の鍵を開けると普通に開いたが……ヤエが普通にキレて仁王立ちしている。

「なっなぁ入ってもいいか? 俺の家なんだけどさ」

「健はね……良いわよ入ってもヒエは駄目よ!」

「ごめんなさい! もうしないから許して! お願い健助けて!」

「風邪を引いたら面倒だからさっさと入れ!」

「ちょっと! 甘やかさないでよ健!」

「ちょっと落ち着けヤエ! お前何でキレてるんだよ、あんなに仲良かったじゃないか」

「だからこそよ! これを見てよ!」

 ヤエが俺にスマホを見せる……んっ!?

「ちょっと待て! 何だこのスマホ一体何処で」

「必要でしょ? 念話が使えなくなった私達には……それなのに!! ヒエ! アンタって女神は!」

「元な……でスマホがどうしたんだよ」

「ヒエのスマホの画面を良く見てよ!」

「何だよ……ヒエ? ゲームにハマったのか良いんじゃない?」

「良く見てココを!」

 ヤエが指差す先は良くあるスマホゲームの画面だが……ちょっとマテヨ? 良く見るとゲームにありがちなガチャに必要な宝石が……

「おい……ヒエお前課金したのか? 怒らないから言ってみ?」

「えっとね、よく分からないけど買えるボタンが表示されてたから……押しました……」

「ヤエ? お前等のスマホ決済出来るのか?」

「私にも詳しくは分からいのよ全部京子に任せたから……」

「ちょっとヤエのスマホ貸してみ?」

 ヤエのスマホを確認すると確かに契約上……

「ヒエ様? どうやらやっちゃったねぇ〜」

「ごめんなさい良く分からなかったの! 気が付いたら宝石が無くなっててボタンを押したら増えたのよ! 何回か押したら押せなくなって……」

「それは限度額まで使ったからだよ!! 何してくてんだ! 5万円も使いやがって家賃二ヶ月分近くじゃねぇか!」

 駄目だヒエは絶対に駄目だ! カードとか渡したら絶対に破産コースまっしぐらだ! ヤエがキレてる理由がわかった。本当に元女神か? このままじゃダメだコイツは早く何とかしないと……

「とにかく部屋に入って座ろうか……ヤエいいな?」

「怒った理由わかったみたいね? さぁヒエ懺悔の時間よ」

「違うの! ちょっと押しただけなの先っちょだけ押してみた……」

「だったら限度額までいかねぇよ!! 取り敢えず会議しようか」

「はい……」

 本当にこの元女神達は……世話が焼ける、あれ? 俺ちょっと楽しい? 気のせいか……取り敢えず5万円何とかしないとだな。恐らくはキャリア決済の都合上次の請求で一括払いのはずだが……

「ヤエ、契約書見せてくれるか?」

 確認すると大手メーカーのスマホ、しかもサポート窓口俺の勤務先だぞ。目眩がしてくる……え〜っと基本使用料と機種料金の分割払い合わせて1万超え!! 俺の利用料金2千800円何だけど約3倍! 落ち着け俺、落ち着いて計算しよう。二人のプランを合わせると約2万6000円プラス5万円が一括払いで引き落とされる、はっ8万円近く消えるって事か?

「ヒ〜エ〜様? もう一回賽銭箱漁って8万持ってこい!!」

「馬鹿なこと言わないで健! ヒエ反省してる?」

「ヤエ! 反省してるのよこれでも!」

「健、私は今日アルバイト先を見つけてきた。ヒエの使ったお金も私が働いて返す……」

「ヤエ甘やかしたら駄目だ。取り敢えずヒエのスマホは決済出来ないように設定してやる! 後ゲームもさく……」

「止めて! 折角レアキャラってのが出たのお願いゲームだけは消さないで!」

 コイツ反省してんのか本当に!?

「わかったよゲームは消さない、その代わりバイト先を探せ。見つけるまでヤエに預かって欲しい」

「私は木曜日からアルバイトなのよ」

「じゃあ2日で仕事を探しなさい! もう俺は知りません!!」

「にしてもヤエ良く気がついたな?」

「そりゃ最初は分からなかったわよ、ヒエがご機嫌でスマホの画面を見せてレアキャラがどうとか言って来てね」

「そのうち画面がボタンがって言い出してね」

「その時嫌な予感がして京子に電話したのよそうしたら……最初の電話は健にしたかったのに……」

「なぁヒエ? お前は女神だったよな、こうやって人生が狂う事も有り得るんだ、次からは気を付けてくれよ?」

「それに課金は自分で稼いだ金でやれば俺もヤエも怒らないから」

「じゃあバイト見つけて5万円払ってバイト続けてお金入ったらゲームで課金しても良い?」

「お前本当に反省してんのか? まぁ良いや自分の分は自分で稼ぐなら文句は言わないぞ? 一杯稼いだら沢山遊べるかもね」

「わかったバイト探すよ私!」

「この際だハッキリさせとこう! アパートの維持費は俺の給料でやり繰りする、ヤエとヒエが稼いだお金は自分達の支払に当てろ!」

「家計はヤエ頼めるか?」

「私!?」

「ヒエに任せられるか?」

「それもそうね……わかった任せて! ちゃんと管理するから。私達のお給料も家計に足すわね」

「良いのか? 自分達で稼いだお金だぞ?」

「良いのよ……ヒエ? 来月からはお小遣い制だからね! しっかりバイト探しなさい!」

「はい……」

「じゃあこれ俺の通帳と判子とキャッシュカード、ヤエに預けとく任せたよ!」

「預かって置くわね……何だか夫婦見たいね……」

「モジモジしないでくれるかなヤエ、ほらヒエ! バイト探すの手伝ってやるよ」

 二人のスマホに、Wi−Fi接続が出来るようにしておく。

「健、夕飯食べるでしょ? アルバイト先のお惣菜買っておいたから食べましょう支度するから」

「お願いするよ! アルバイト先って惣菜屋さんか……何か似合ってるなヤエに」

「じゃあ待ってる間にヒエのアルバイト先探して上げてね!」



「任されたよ! さてヒエ様……一緒に探しましょうか?」

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