第3話ヤエとヒエのとある1日その2
惣菜キッチンサイトウの奥の事務所へ入ると思ったより狭かった。椅子に座るように促されると礼をしてから着席した。
「私の名前は斎藤美穂、この店は私が個人で経営している店なんだよ。店は見てくれたよね?」
「はいっ! とても美味しそうな料理が並んでいて素敵でした」
この店はカウンターを挟んでキッチンがあり、お客様の前で調理して並べると云う店だった。店に並ぶ惣菜は基本の3品以外は決まっておらず、後は日替わりもしくはオーダー制だそうだ。従業員は店長含めて3人
「このご時世に飛び込みでアルバイト応募なんてやるじゃない? 料理の自信あるの?」
「無いです! 料理が上手くなりたくて、お店に並んでいる様な料理を食べさせたい人が居……あっすみません……」
「ふ〜ん料理できないの? それならウチの店の惣菜を買って食べさせれば?」
「それじゃ意味がないんです! 私が作ってそれで……お腹を満たしてあげたいんです!」
「両親は?」
「居ません」
「そっか……じゃあ男の為ってところかなヤエさん?」
「はい!」
「う〜ん……ハッキリと云うね? 男って、どうしようかな……熱意は認めるけどさ仕事って料理だけじゃないのよ? 掃除皿洗に接客レジ打ち。出来る?」
「全部纏めて教えて下さい! 私何でもします全部経験ですから! 覚えて見せます!
」
「じゃあ、身分証明書ある?」
「免許証で良いですか?」
「ちょっと確認するわね……あら? 結構近所ね……連絡先は?」
「すみません、まだ携帯電話持ってなくって……これから買いに行く所でした」
「ちょっと大丈夫!? 色々心配何だけど! ちょっとヤエさん! 貴女もうここで働きなよ! ご近所だし色々不安になってくるわ!」
「良いんですか?」
「ヤエさん見たいなあぶなっかしい娘ほっとけ無いわよ! 良い? 携帯電話買ったらもう一度お店に来なさい18時迄お店開けておくから、良いわね!」
「あっありがとうございます!」
「じゃあ、行っておいで! それまで書類作っておくから」
「失礼します!」
頭を下げて事務所を出ると11時半を過ぎていた。慌ててお店の人にお礼を言いヒエと市役所を目指した。
「どうだったヤエ?」
「一応携帯電話買ったら雇ってくれるって!」
「へぇ〜こりゃ絶対必要じゃない! 私が働く為にも携帯電話!」
「そうね!」
市役所につくと既に待っていた京子がいた。早速仕事の話をすると
「なるほど……では携帯電話を買いに行く前にお話がてら御飯を食べませんか? マッグ以外で!」
釘を刺される……主にヒエがダメージを受けていた、私も好きだけどなマッグ……京子に連れられ鶏王という定食屋で昼食を取ると。これまた美味しい料理だった人間ってずるい! こんな美味しいの食べていたなんて、ヒエも同意見らしい。食後のお茶を飲んでいると
「お二人共本当に人間になったんですね……私も霊気が無くなりましたし、やっぱり?」
「そうね健のおかげね、私とヤエも感謝しているのよアイツには」
「ヤエさm……さん、八神さんとは?」
「まだ何にもないわよヤエと健には、昨日引っ越したばかりじゃない京子の家からね」
そう調理器具の使い方、家電の使い方。洋服の買い出しに必要な家具と寝具を京子から教えて貰い用意したのだった。
「あの時は驚きましたよ……真っ先に八神さんの元へ向かうと思っていたので……」
「まぁ行きましょうか? 携帯電話を買いに!」
鶏王から京子の車に乗り、携帯電話販売店のNUへと連れて行って貰い中に入ると。健が使っている様な携帯電話が幾つかあった。
「お二人共好きなのを選んで下さい」
と言われても……ヒエと相談する。お揃いにするのは決めていたが……種類が多すぎて目が眩む。ハッキリ言って訳がわからない……
「ごめん京子が選んで……ヒエと私じゃわからない」
「仕方が無いですね……色とか気にします?」
「私は青かな……ヒエは?」
「白かな?」
「わかりました! 早速選びますが……お二人共何時までこちらに居るんですか?」
「健が死ぬまでね……ふふっ」
「ヒエさん怖いです主に顔が……まぁ長くいるのなら。それなりの機種が良いですね!」
京子が目を輝かせながら携帯電話を吟味している。機械に興味が有るのかしら? ヒエとぐったりしていると京子に呼ばれた。
「お二人共こちらの機種がおすすめです、色もバッチリ何よりもメモリ……」
「ごめん京子説明は良いからこれにするわ」
京子は何やらショックを受けているようだが、あのまま話させると危険だと私の直感が言っている。店員を呼び購入手続きを京子にしてもらい、プラン? 等も京子に任せるとアクセサリーとしてスマホカバーをおまけしてもらったのでヒエとお揃いにする。程なくして遂に……
「こっこれが携帯電話ことスマホ! ヤエどうしよう電話していい?」
「お二人共まだ終わってませんよ? これから楽しいスマホの使い方講座の始まりです!」
「「まさか……」」
「さぁ大好きなマッグへ行きましょうか! 夕方までみっちり教えて上げますね!」
問答無用で京子にマッグへと連れ去られ、使い方を教え込まれる。少し手こずったが私は何とか使えるようになり自主練中だが……ヒエが京子にまだ教え込まれている。器用なはずのヒエが手こずるなんて……これだけ長い間一緒に居たのに、まだお互いに分からないことがあるのかもね……ヒエこれからも一緒に過ごそうね健も……
夕方になる頃にはヒエはもうゲームにハマっていた。
「京子? なんでゲームを教えたのよ……」
「あの……ほら! 興味がある事から教えて行ければと思ったのですが……一応基本機能が使える様にはなってますよ!」
さっきの私の気持ちを返してほしい……時計を見ると17時を過ぎていた。いけない! お店に行かないと! 京子に頼んで車に乗せて行ってもらう、店につくと京子が一緒に来てくれるらしいので来てもらう。ヒエはゲームに夢中なので車内に放置する。
「ごめんください! 八幡ヤエです」
「あっ! ちゃんと来たのね、偉いわねバックレるかと思っていたわよ」
「ばっくれ?」
「ちゃんと来てくれただけで合格よ、そちらの人は?」
「市役所職員の塚田京子と言います、八幡ヤエさんの身元保証人だと思って下さい。これ名刺です」
「塚田さんね、私は斎藤美穂この店の店長! 宜しくね。早速だけど事務所に来てくれるかしら?」
あとをついていくと
「京子もしかして……」
「後で!」
「さっこれ契約書ね、ちゃんと読んでよ?」
時給980円
5勤2休
毎週水曜日定休日他シフト制
社会保険加入
労働時間9:30から18:30
「ちょっとフルタイム勤務じゃないですか!」
京子が驚いている、よく分からないけれど……
「ヤエさんはそれぐらいの覚悟で来てたんじゃないの?」
そう私には選んでいられない折角の巡り合わせだ。
「当然です! 働かせて頂けるんですよね、お願いします」
「良い返事ね、これでビビってたら不採用にしてたわ。良いわね! アルバイト採用決定よ」
「一緒に働きましょう! 八幡ヤエさん」
「ありがとうございます!」
京子も一緒に頭を下げてくれた、連絡先を交換し木曜日から働く事になった。挨拶をして京子と一緒に夕飯の惣菜を買って店を出た。
「ありがとう京子! 心配して付いてきてくれたんでしょう?」
「それもありますが……市役所職員の肩書は便利でしょう? さぁ送りますよ乗ってください!」
車のドアを開けると中ではゲームに没頭している元女神がいた。
「ヒエは夕飯抜き!!」
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