62.聖誕祭の終わりの始まり



 後ろから大きな笑い声があがる。


「ははっ!! キリストの兄さんっ、よく言わせた! それで十分! ああ、素晴らしいなあっ! 新たな英雄の誕生・・・・・・・・というのは、いつ見ても心躍るぜ! あはははは――!!」


 僕とラスティアラが目で通じ合うのを遮るように、パリンクロンの笑い声が響き渡る。


 笑うのはいいが、おまえの提示した条件も満たしたのだから、早く行動して欲しい。

 正直なところ、この膠着状態も限界に近い。


 案の定、フェーデルトは床を踏み鳴らしながら、壇に戻り、叫ぶ。


「な、何を言っている!! ラスティアラ!!」


 そして、壇上にいるもう一人の若い女性に声をかける。


「レキ様! 多少手荒でも構いません!!」


 女性の特徴から、ハインさんから聞いた『元老院の代理』に見える。

 レキと呼ばれた『元老院の代理』は冷静に言葉を返す。


「ふむ。儀式が途中だが」

「構いません!」

「ま、おぬしがそういうのならな……」


 女性が何かを呟き始める。

 すると、ラスティアラは喉を押さえて、膝を突いた。


「くっ――!」


 苦しそうではないが、身動きが取れないように見える。

 何らかの魔法をかけられたようだ。


「騎士たちよ!! そこにいる不届き者を捕らえろ! この命に足を止めたものはフーズヤーズへの反逆罪に値する!!」 


 動けないラスティアラを確認したフェーデルトは、今日一番の大声をあげて、周囲の騎士たちに厳命する。


 もはや、余裕がないといった様子だ。

 対して、パリンクロンは笑いながら返す。


「判断が遅かったなァ! 宰相代理殿ォ! またジャストっ、いいタイミングだ!」


 その言葉と同時に、後方の入り口から誰かが音をたてながら入ってくる。


 入ってきたのはハインさんだった。

 肩で息をしている上に、身体中が引き裂かれ、血まみれだ。

 さらに、その後から他の『天上の七騎士セレスティアル・ナイツ』たちも入ってきた。


 どうやら、足止めをしていたハインさんが、ここまで追いやられたようだ。


「な、なんだ!? おまえたち!!」


 フェーデルトは驚いている。

 この様子だと外のことは全くわかっていないのかもしれない。


 だが、僕も驚いている。

 ここで敵が増えるのは厄介だ。

 予定と少しばかり違う。

 しかし、すぐにパリンクロンの狙いはわかった。


 パリンクロンは僕と背中合わせになり、手に持った剣を現れた『天上の七騎士セレスティアル・ナイツ』に向けた。それを見たハインさんは、迷いなくパリンクロンの隣に並び、僕の背中を守る。


 それを見た周囲の人たちは、どよめく。


 ラスティアラの儀式の拒否に続き、さらには『天上の七騎士セレスティアル・ナイツ』の内の二人が僕の背中を守ろうとしているのだ。


 何が起きているのかわからないことだろう。


「ハイン、パリンクロン!! 何のつもりだ!? 国に逆らうつもりか!?」 


 フェーデルトも二人の反乱に理由を問う。

 それに二人は背中を向けたまま、短く答える。


「私はお嬢様に仕える騎士。それだけです」

「うーん、俺も同じくで」


 それを聞いたフェーデルトは顔を歪ませた。

 そして、阿吽の呼吸で答えを合わせたハインさんとパリンクロンは、小声で話す。


「パリンクロン……」

「俺もそっちについてやるよ、ハイン。キリストの兄さんが見事に条件を満たしてくれて、面白いヴィジョンが見えたんでね」


 どうやら、パリンクロンは本格的にラスティアラ救出の協力をしてくれるようだ。


「ありがとうございます。ハインさん、パリンクロン」


 僕は二人に小さくお礼を言う。

 それにパリンクロンは真剣な声で返す。


「しかし、兄さん。攫うには、まだまだ敵が多いだろう? だから、もっと場を混ぜようぜ。なあに、各国の信頼なんて脆いもんさ。あとちょっと建前を足してやるだけでいい」


 パリンクロンの見えているヴィジョンが、僕にも見えてきた。


 僕は声を大きくして――しかし、荒げることなく、周囲の全ての人間に伝える。


「あなた達から見て、僕は何も知らない愚か者に見えるかもしれない……。けれど、そんな愚か者でも一つだけわかることがあります。それは、そこにいる少女がこの儀式を望んでいないということです!! この儀式によって、自分が消えてしまうことに怯えている! 自由を奪われ、自分の意思を曲げられ、望まぬ終わりを迎えようとしている! それが人のやることなんですか!? それが国の意思なんですか!? それがレヴァン教の教えなんですか!? あなた達の心は、それで痛まないんですか! 本当に、それでいいんですか!?」


 用意していた言葉ではない。

 場の勢いに任せた戯言だ。

 しかし、この際、馬鹿な理論でも稚拙な詭弁でも構わない。目的は納得してもらうことではないからだ。


 対し、敵も負けじと声をあげる。


「そんな戯言で!! 国が決定し終えた行事を乱す理由になるものか! おまえたちがやろうとしているのはただの反逆! 罪人でしかない!!」


 フェーデルトもパリンクロンの目的がわかってきたようだ。

 賓客たちに働きかけるように、儀式の正当性を説く。

 続けて、協力を要請する。


「こちらの不手際で申し訳ないが、腕の立つ騎士殿たちには事態の収拾の協力をお願いしたい!!」


 フェーデルトは賓客に対して、本気で荒事に参加して欲しいとは思っていないのだろう。ただ、言外に――事態の収拾の為、もう少し静観して欲しいと言っている。


 僅かな可能性も潰したいゆえの発言だろう。

 気紛れにも、僕たちに協力するものが出てくれば、困ったことになるからだ。


 ただ、それはちょっとの刃傷沙汰でも大変困ると、白状したも同然だった。

 僕は賓客たちがアキレス腱であることを確信し、薄く笑う。


 フェーデルトの形振なりふり構わない正論によって、手の空いている腕の立つ護衛たちが、数名立ち上がろうとしているのが見える。


 この機会を利用し、フーズヤーズに恩を売ろうと考えている連中だ。


 それをフェーデルトは止めない。

 ただの護衛ならば、構わないと判断したようだ。

 場の勢力図が動き始める。


 しかし、そこで巨大な魔力の奔流が、神殿全体を奔った。

 部屋中を奔り回った身の毛もよだつ巨大な魔力は、立ち上がった者たちの足を竦ませる。


「――ああ。確かに、ここへきて道徳の話はおかしいかもしれない。国が決めたことというのは、個人の感情で変えていいものじゃない……。しかし、少年の言うことは興味深いと私は思う。別に手を貸そうとは思っていない。けど、あとちょっと、そこの現人神様と少年の会話を聞いてみたいだけさ。そう……。あとちょっとの会話さ。それも、駄目なのかい? フェーデルト宰相代理殿?」


 中央に陣取ったディアが発言し、場を掻き混ざる。


 僕は汗を垂らす。

 ディアの魔力は異常とはいえ、本人の身体能力は低い。助かるとはいえ、もう少し挑発は控え目にして欲しい。というか、機嫌が悪そうに見えるのは気のせいだろうか。


 フェーデルトは無遠慮に噛み付くディアに怒りを露わにしていく。


「使徒……! 遊びが過ぎるぞ……!!」


 怒りを込めた言葉と共に鋭い目で睨みつけるが、ディアは意にも介していない様子だ。


 フェーデルトはディアに構っている場合ではないと判断したのか、次は入り口にいる騎士たちに呼びかける。


「『天上の七騎士セレスティアル・ナイツ』! 早く、動け!」


 僕の後方にいる入り口付近の騎士たちの声が聞こえてくる。


「くっ、仕方があるまい……!」

「しかし、ハインとパリンクロンが……!!」


 年季の入った低い声と凛と響く女性の声。

 僕は崩しやすい人がいると喜ぶ。


 狙いすませ、後方に振り返り、呼びかける。

 まだ勢力図を塗り替える余地はある。


「レイディアントさん! あそこにいるラスティアラは苦しんでいます! あれが幸せそうに見えますか!? あれがあなたの望む光景ですか! 本当にっ、あれでいいんですか!!」


 僕は喉を押さえているラスティアラを指差して、レイディアントさんに呼びかける。

 すると、隣の黒騎士が反論する。 


「違う! 違うぞ、ハイン、パリンクロン、レイディアント! 思い直せ、『天上の七騎士セレスティアル・ナイツ』は、これから降臨する『聖人ティアラ』のための騎士だ! それを間違えてはならん!」


 年季の入った低い声で、三人を説得しようとする。


 しかし、僕だって負けじと反論する。

 レイディアントさんは絶対に渡さない。


「初耳ですねっ、そんなこと! 僕の知っている『天上の七騎士セレスティアル・ナイツ』ハイン・ヘルヴィルシャインは違う! 少なくとも、『聖人ティアラ』の騎士なんかじゃない! ねえっ、ハインさん! そうでしょう!?」


 説得を打ち消すように、ハインさんに話を振る。

 僕よりも付き合いが長いであろうハインさんに、レイディアントさんを崩して欲しいところだ。


「あ、ああ……。もちろんだ。私が仕えたのは、『聖人ティアラ』なんて過去の偉人にではない! 私が心から守りたいと思ったのは死人じゃなく、いまっ、そこに生きているお嬢様だ! ――私はお嬢様の騎士だ・・・・・・・・・!!」


 突然振られたにも関わらず、ハインさんは上手く返してくれた。

 僕は感謝しながら、さらに言葉を重ねる。


「聞いての通り、ハインさんはラスティアラの騎士だ! なら、レイディアントさん! あなたはどっちです!? ラスティアラの騎士かっ、『聖人ティアラ』の騎士かっ、いますぐ決めてください! ここで!!」


 僕は悩む暇を与えないよう、勢いに重点を置いて煽る。


「くぅっ――! 私はっ!!」


 レイディアントさんは迷った声をあげ、続いて若い女の子の声が上げる。

 ラグネちゃんの声だ。


「せ、先輩っ!?」


 レイディアントさんが、仲間の『天上の七騎士セレスティアル・ナイツ』に剣を向け、こちら側に移動する。


 悩んで動かないでくれるだけでもよかった。しかし、予想以上の早さでレイディアントさんは味方についてくれた。


 レイディアントさんは寝返りながら、ラグネちゃんに叫ぶ。


「ラグネ、おまえは幼い! 先輩からの助言だ! 私はやらかしてしまったが、おまえは私かキリストあたりと適当に戦って、適当に倒れろ! おまえは故郷のために働いているのだから、無理はするな!!」

「う、うぅ……!!」


 さらにラグネちゃんの説得も行ってくれている。

 嬉しい誤算が続く。

 これでラグネちゃんが動かなくなれば、入り口方面の力関係は大逆転だ。


 状況が変動し、入り口で手をこまねいている『天上の七騎士セレスティアル・ナイツ』たちは、汗を垂らしながら話し合う。


「もちろん、おじさんは公務を全うしますけど……。いやぁ、これは……」

「私も同じく」

「実質、こちらは三人か……」


 残ったのはホープスさん、魔法特化の『天上の七騎士セレスティアル・ナイツ』、黒騎士ペルシオナの三人だった。


 困り果てているのが、声からわかる。

 ホープスさんは嫌そうな顔で、黒騎士と話す。


「こういうときのために用意された騎士が、三人寝返ってますしねえ……。どうしましょ、総長。仮に、この四対四で勝てる気します……? 俺は嫌だなぁ……。魔法の相性が悪いし……」

「屋外ならば手段はあるが、ここでは人を巻き込む……」


 『天上の七騎士セレスティアル・ナイツ』たちが攻めあぐねているのを見たフェーデルトは、痺れを切らして、賓客の一人に向けて叫ぶ。


「グレン!! 英雄グレン、そいつらを抑えろ!!」

「え、ええ! ここで僕ですか!?」


 賓客席の最前列の男が情けない声で、それに答えた。


 男は立ち上がり、こちらを向いておろおろとする。

 赤銅色の髪をした覇気のない顔つきの男だ。


 聞き間違いでなければ、『グレン』と確かに呼ばれた。

 その名前の意味するところは最強の迷宮探索者ということ。


 この情けない声の男が、この世界の最強……?


 僕が唐突な敵戦力の登場に汗を垂らすと、前方のグレンの隣に座っている少女が、グレンの服の裾を引っ張る。

 小声で何かを言っている。


 僕は薄くだが、魔法《ディメンション》を広げて、グレンと少女の声を拾う。


「……兄さん、ここは様子を見て」

「ス、スノウさん?」


 そこにいたのは竜人ドラゴニュートのスノウ・ウォーカーだった。

 数日前に迷宮で出会い、一度だけパーティーを組んだ少女だ。スノウはグレンを兄と呼んでいる。全く似ていない兄妹だが、賓客席に隣同士で座っている以上は、そういうことなのだろう。


 スノウは小さい声で、こちらに目をやりながら話す。


「……下手に動けば、今後に関わる。……それに、あの人は悪い人じゃない」

「えー、悪い人じゃないって言われても……。でも、スノウさんがそう言うのなら……」


 スノウと目が合った気がした。

 以前、別れ際に「探索者に向いていない」と言われたときと同じ、呆れた顔だ。


「すみませんー! 僕はパスでー!」


 そして、グレンは大きな声でフェーデルトに返答する。


「グレン・ウォーカァー!!」

「だって、そっち直属の『天上の七騎士セレスティアル・ナイツ』が相手じゃないですか! どうなってるのかわからないし! 殺して、あとから怒られるの嫌ですもん!」


 フェーデルトは最強からの予想外の答えに激昂する。

 しかし、グレンは情けない声で、核心をついた言い訳をする。


 そう。

 多くの人が思っているのだ。

 どうなっているのかわからない。

 後から何を言われるかわかったものではない。

 だから、静観するしかない。


 最強の名を有するグレンが、はっきりと代弁してくれたことで周囲の流れも変わる。

 それに危険を感じたフェーデルトは、グレンを早々に諦め、次の人物に声をかける。


「ならば、剣聖殿は――!」


 剣聖?

 なんだか、すごい渾名の人がいるみたいだ。

 平時に聞けばわくわくする渾名だが、いまは聞きたくなかった。


 このままだと、フェーデルトは賓客内の知り合い全てに声をかけそうだ。敵の戦力が増えるのは困る。レイディアントさんがこちらについた以上、もう行動に移ろうかと思案していると、剣聖と思われる初老の男が立ち上がって答える。


「いや、俺はやる気あるぜ、宰相代理。けどよ、グレンの坊主の言うとおり、やるなら、かなりの死人が出る。あと、予想外なやつが、一番殺気を放ってやがるのがやばい。まじやばい」


 彼は中央にいるディアを見ながら、情けない言葉を口にした。

 ディアは部屋中にプレッシャーをかけているものの、ずっと目線は集中している。剣聖と呼ばれた初老の男を睨み続けている。


 ディアは、この初老の男を、この場で最も厄介だと思っているようだ。

 軽薄な初老の男に合わせて、ディアも軽く言葉を返す。


「人聞きが悪いぜ、アレイスのじいさん。俺は客観的に見て、そこの少年はあながち間違っていないと思うから、ちょっと話を聞きたいだけだ」

「これが客観的、ねえ……。ちょっと前までは、あんなにお淑やかな子だったのになあ……。なに、シスちゃん。そこの黒髪君に惚れちゃったの?」

「このくそじじいが……!!」


 どうやら、二人は知り合いのようだ。

 目線で火花を散らしている。

 見たところ、剣聖とやらはすぐに動きそうではない。


 その様子を見たフェーデルトは、さらに周囲へ声をかけていく。


 それを僕は止めない。

 なんだか、逆にこちらの状況が良くなっている気がしたからだ。


 声が飛び交い、周囲のざわつきが増していく。

 気の抜けたグレンと剣聖の受け答えのせいか、部屋の空気が浮ついてきたように見える。


 フェーデルトに対し協力しようとする声もあれば、芳しくない答えも多い。


 様々な国の要人たちが好き勝手に発言し始める。

 もはや、儀式の厳粛なる雰囲気はない。

 周囲の神官と騎士たちは、様々な国の代表の言葉が飛び交う中で動けなくなっている。


 パリンクロンの思惑通りになってきた。

 当然、背中を任せているパリンクロンも乗ってくる。


「ははははっ、宰相代理殿ぉぉ!! これ、やりあったら五分五分くらいなんじゃないんですかねえ!? ハインとキリストの兄さんは強いですよぉ! はははは――!!」


 高揚したパリンクロンがフェーデルトに叫ぶ。


「パリンクロン、貴様ぁ!! くそっ、だから蛮国の騎士を迎え入れるのは反対だったんだ! 私は!!」


 フェーデルトは悪態をつく。


 そして、事態を収拾するため、さらに声をあげようとして――


 壇上から轟音が鳴り響く。


「むむ……」


 壇上にいた女レキは顔をしかめ、ラスティアラから離れる。


「はあっ、はあっ、はあっ――!!」


 ラスティアラは大量の汗と共に息を切らしている。

 見たところ、女の張った魔法を撥ね除け、声が出せるようになったようだ。


 それを見たフェーデルトは、レキに疑問の声をかける。


「レキ様!? 結界を――!?」


 レキと呼ばれた女は溜息をつきながら答える。


「いや、すごいのう。この『魔石人間ジュエルクルス』。あの体調で、強引に結界を破りおった。これ以上は無理じゃな。抑え切れん」

「そんな!」

「むしろ、数分持ったわしを褒めてほしいところじゃ」


 フェーデルトは女に詰め寄って、非難の声をあげる。

 しかし、女は特に気にしていない様子だった。


 解放されたラスティアラは、ふらつきながらも立ち上がり、意を決した表情になる。

 そして、部屋中に響き渡る声で、全員に宣言していく。


「はぁっ、はぁっ――! ラスティアラ・フーズヤーズの名を持って命ずる! 我が騎士キリスト、ハイン、レイディアント、パリンクロン! 私が聖人ティアラなんてものに成り下がったときは、その剣をもって、この心臓を貫け!!」


 はっきりとした意思を持って、ラスティアラは聖人ティアラになるくらいなら死ぬと言い放った。


 僕はそこに『作りもの』の介在を感じない。

 ラスティアラの確かな意思だと僕は判断する。


「わかった! ラスティアラ!」


 続いてラスティアラの騎士たちも声を返す。


「いい第一声だ、主! 少なくともキリストと俺はやるぜ!」

「それがお嬢様の意思とあればっ!!」

「お、お嬢様を死なせはしない!」


 このやり取りを多くの賓客たちが見届ける。


 面白そうに眺める者。不快そうに眺める者。心を動かされる者。何も感じない者。様々だ。


 僕は魔法《ディメンション》を広げて、ざわめく小さな声たちの全てを拾っていく。


 儀式を受ける当の本人が毅然と拒否した姿を見て、手を出そうとする人が減ったようだ。

 その中、ふらつきながらもラスティアラは歩き始める。

 僕だけを見据えて、ゆっくりと壇上から降りようとする。


 とうとう終わりだ。

 場は混ざりに混ざった。

 あとは行動に移すだけ。


 近くのフェーデルトがラスティアラを止めようとして、それを止めるために僕とパリンクロンが動こうとして――それを、さらに壇上のレキが声をあげて止める。


「待て!! いま動くでない! フェーデルト!!」


 フェーデルトは女の声に反応し、身体を震わせて踏み止まった。


 結果、ラスティアラは何にも阻まれることなく神殿中央の絨毯を歩く。僕とパリンクロンは、場を荒らすタイミングを逃してしまい、立ち止まる。


 タイミングは逃してしまったが――決定的でもあった。

 おそらく、この場の主催者の一人であろうレキが、ラスティアラへの関与を諦めた。

 ゆえに周囲の賓客たちも、神官たちも、騎士たちも、ラスティアラに手を出そうとはしない。いや、手を出せない。


 ふらふらとラスティアラは歩き続ける。


 その最中、壇上の二人の話を魔法《ディメンション》で拾う。


「ここで止めようとすれば、間違いなくパリンクロンが動く……」

「しかし、やつくらいならば――」

「あの少年も、おそらく普通ではない。なにより『天上の七騎士セレスティアル・ナイツ』同士の乱戦を、この状況で起こさせるわけにはいかん」

「ですが、レキ様が参戦すればいくらでも――!」

「他国の要人に一人でも死傷者が出れば、我らの負けだ。それに、ここで七騎士を失うのも痛い。この神殿内で手出しはできん。何の犠牲もなく、あの少年と『魔石人間ジュエル・クルス』を抑えるというのは、もう不可能なのじゃ」


 女は首を振って、フェーデルトを諭し続ける。


「聖人ティアラという駒が手に入っても、失うものが多くては本末転倒じゃ……。計画のためにも、ここは耐えろ。耐えれば、『魔石人間ジュエルクルス』も『天上の七騎士セレスティアル・ナイツ』も、いつかフーズヤーズに帰ってくる可能性が残る。――この戦いはパリンクロンとハインが裏切り、あの少年が無傷でここに現れた時点で負けなのじゃ」


 女は冷静に、状況をフェーデルトに伝え終えた。


 フェーデルトは唇を噛んで、こちらを睨む。

 怒りと憎しみが混ざった視線で、僕というイレギュラーを睨んでいる。


 どうやら、やっとこの場の劣勢を認めてくれたようだ。

 もはや、フェーデルトという男は脅威ではない。

 僕は視線を壇上から外し、ラスティアラに向ける。


 ラスティアラは何者にも阻まれることなく、僕の元に辿りついた。


 疲労困憊のラスティアラが弱々しく笑う。

 笑いながら、小さく、ぶっきらぼうに――仲間である僕に一言だけ、感謝を伝える。


「ありがと……」


 僕は小さく笑い返して、何も言わずラスティアラの手を引く。


 その後ろから何やら不機嫌そうなディアが出てくる。どうやら、ラスティアラの後ろをついてきたようだ。ただ、なぜこんなにも不機嫌そうなのかはわからない。


 ディアは明らかな叛意こそ示さなかったものの、儀式を妨害をしていたのは確かだ。立場が悪くなったのは間違いない。僕はディアの意思に頷きをもって返し、ついてくることを了解する。


 背後に振り返ると、そこには狼形態となったレイディアントさんがいた。

 背中をこちらに向け、乗ることを促している。


 ラスティアラの状態を見て、足となると決めたようだ。


「レイディアントさん。できれば、ディアも乗せてくれませんか? ラスティアラの味方です」


 狼の頭が垂れたのを確認して、僕はディアに乗ることを促す。

 ディアも自分の身体能力の低さは理解しているようで、すんなりとラスティアラと共にレイディアントさんの背中に乗る。


 そのとき、背後からディアと同行していた神官たちの怒声が聞こえた気がした。それを無視して、入り口を見据える。


 入り口に立ち塞がる四人の『天上の七騎士セレスティアル・ナイツ』と、それを牽制するハインさんとパリンクロンが睨み合っている。


 ハインさんが脅すように、かつての仲間に語りかける。


「どいてください。どいてくれませんと、ここで魔法を放つことになります。そうなれば、この神殿が崩れる可能性もある。賓客たちに被害が出て困るのは、そっちでしょう?」


 ハインさんは四人に手のひらを向け、パリンクロンが言う予定だった言葉を冷たく告げる。


 それに対して、黒騎士は深く息を吐いて、横にずれて道を空けた。

 他の三人もそれに倣う。


 そして、僕は全員に合図を出す。


「行きましょう。走り抜けます」


 まず駆け出したのはレイディアントさんだった。

 目にも留まらぬ速さで、少女二人を攫って部屋から飛び出す。


 それに続いて、僕とハインさんとパリンクロンも駆け抜け、廊下に出る。


 『天上の七騎士セレスティアル・ナイツ』たち四人も、僕たちに追従してくる。しかし、すぐに攻撃はしかけてこない。まだ神殿に近いと思っているのだろう。ここで戦えば、神殿内まで余波が届く可能性がある。


 しかし、そんな『天上の七騎士セレスティアル・ナイツ』たち四人の心配など知ったことではないと、ハインさんは走りながら魔法を詠唱し、暴風の魔法を放つ。


「――《カノン・ゼーア》ァ!」


 振り向き様に放たれたハインさんの魔法が、後方の四人を吹き飛ばす。

 距離が空いたのを確認し、ハインさんは前を見据え、足を速める。


 それに遅れまいと僕も全力で走る。


 廊下を抜け、階段を下り、来た道を戻っていく。


 騎士たちに追いつかれないよう全速力で駆けていると、大聖堂の入り口の外でレイディアントさんが立ち止まっているのを見つける。


 なぜ、そこで立ち止まるのか、その理由がわからない。

 僕は疑問を抱きながらも、それに近づく。

 ハインさんとパリンクロンも、僕と同様のようだった。


 しかし、その疑問はレイディアントさんの背中に立つディアを見て、氷解する。

 正確には、ディアから昇り立つ魔力の火柱を見て、理解した。


 僕たち三人が大聖堂を抜け、レイディアントさんの横を抜けると同時に――ディアの圧縮に圧縮を重ねた高密度の魔法が構築し終わる。


「――《フレイムアロー・散花フォールフラワー》」


 ディアは魔力の火柱を蠢かせ、宙に炎の花びらを散らせる。

 次に、それを千を越える火の矢に変質させ、空を埋め、その全ての矢を雨のように大聖堂へ降り注がせた。


 ディアの魔法《フレイムアロー》は、もはや以前のレーザーのような魔法ではなくなっていた。

 アルティから手ほどきを受け、火力のコントロールができるようになっている。一般的とされる炎の矢の形状を保っている。


 その炎の矢の群れは、大聖堂の入り口を破壊していく。

 さらに大聖堂にある窓という窓も破壊していき、ここから見える大聖堂の全ての出入り口を潰した。


 大聖堂を砕き壊した上、炎によって蓋を作る。

 これならば、追っ手も内部から簡単には出てこられないだろう。


 それを確認して、僕は前に向き直る。

 そこには得意げなディアが、さらなる魔力を練りながらこっちを見ていた。


「キリスト、もっとやったほうがいいか? 崩そうと思えば崩せるぞ?」

「い、いや、もう十分だよ。これ以上やっても、恨みを買うだけだ」

「わかった。狼さん、もういいってさ。進んでくれ」


 ディアはレイディアントさんに声をかけ、先に走り出す。


 パリンクロンは笑いを堪え、ハインさんは目を見開いている。

 僕もハインさんと似たような心境だ。


「行きましょう、ハインさん。これで、いくらか時間を稼げました」


 しかし、呆然としていられない。

 すぐに逃走を再開する。


 大階段を駆け下りていくと、そこには騎士たちが待ち構えていた。

 しかし、僕たち三人を相手に、末端の騎士たちだけでは足止めにすらない。


 すれ違い様に、次々と騎士たちを斬り捨てて行き、階段を下りていく。


 前方の女性組も同様のようだ。

 そもそも、狼となったレイディアントさんに追従できる速さをもった存在はおらず、近づけたとしても背の上のディアの魔法によって撃ち抜かれる。見たところ、こっちの男三人よりも安泰そうだ。


 僕は安心する。

 騎士たちを薙ぎ払いながら、逃亡できる手応えを感じた。


 歓喜の笑みを作って、ハインさんに話しかける。

 フーズヤーズを抜けたあとの計画の確認のためだ。


「このまま、僕たちは南の国グリアードへ逃げようと思っています。ハインさんたちはどうしますか?」

「南に逃げますか……。賢明ですね。できれば、私もついて行かせて貰いたいです。これでも顔が利きますので、役に立って見せます」


 ハインさんは僕の計画を聞いて同行を願う。


「あ、俺は途中で抜けるぜ。途中まではついていくけどな」


 パリンクロンは違う答えを出す。

 僕としては助かる答えだった。


 ここまで協力してもらって薄情かもしれないが、僕はパリンクロンという男を味方だとは思っていない。今回は利害が一致しただけで、こんな危険人物とは一秒でも一緒にいたくないというのが本音だ。いまも警戒を解いていない。


 僕は二人に対し頷いて、了承の意思を示す。


 そして、周囲の騎士たちを蹴散らし、噴水のある中庭を抜け、針葉樹に挟まれた道を駆け抜けていく。


 その先には一際多い騎士たちが待ち構えていた。

 跳ね橋の前の門に多くの騎士を集めていたようだが、その頭上をレイディアントさんは容易に飛び越えていく。


 僕たちは飛び越えることは出来ないので、ハインさんが魔法を放って突破口を開き、無理矢理通り抜けようとする。


 跳ね橋は上がっていなかったので、問題なく通り抜けることに成功した。

 もし上がっていれば、残り少なくなってきたMPで川を凍らせないといけなかったので助かった。


 こうして、僕たち六人は無事に跳ね橋を通り抜けたが、次は聖誕祭を待つ市民たちの壁に阻まれてしまう。唐突に現れた巨大な狼に、市民は後退していくが、後ろが詰まっているため、すぐに道は開かない。


 不安げにざわめく人々を前に、レイディアントさんは停止し、こちらを窺う。

 それにハインさんは即答する。


「建物があるところまで無理矢理でも進むしかありません。そこからは、建物の屋根の上を走りましょう」


 それを聞いたレイディアントさんは、道にあった外灯や看板、出店の屋根などを潰しながら、無理矢理に人を避けて進む。


 狼の強行に対し、人々は悲鳴をあげて混乱していく。

 その混乱に乗じて、地上を歩く僕たちも人々の合間を縫ってレイディアントさんを追いかける。


 いくらか進み、道になりそうな建物群まで辿りつき、僕たちは屋根の上に登る。


 そこで六人は固まり、周囲を警戒しながらフーズヤーズからの脱出を進める。


 下では走り抜けるこちらを見て、楽しそうに指差す人々たちがいる。どうやら、聖誕祭の出し物か何かと勘違いしてくれているようだ。


 僕は後方を振り返り見て、追っ手の確認をする。


 追おうとする騎士たちが、壁となった市民たちのせいで立ち往生しているのが見える。建物の上に登って追ってこられるほどの身体能力の持ち主はいないようだ。 


 僕は一安心して、レイディアントさんに声をかける。


「レイディアントさん、一先ずヴァルトへ向かってください。家に寄って、仲間と合流したいんです。僕の仲間と合流した後は、南の国グリアードまで一直線に逃げましょう」


 それを聞いたレイディアントさんは頷いた。


「ふう……」


 そこで僕は大きく息をつく。


 作戦は成功だ。

 想定していた結果の中でも、最上に近い出来だ。

 大成功と言っていい。


 思った以上に、儀式には穴があった。それが幸いした。いや、単純に僕が強すぎたというのもあったのかもしれない。もはや、この世界の人間では、僕を止めることは叶わない。そう思えるほどの成功だった。


 屋根上を走りながら、成果を見回す。

 誰も欠けることなく、敵に死者を出すこともなく、ラスティアラはここにいる。

 まだ気を抜いてはいけないとわかっていても、自然と頬が緩んでいくのがわかった。


 それに気付いたディアとラスティアラも、こちらを見ながら微笑んでいた。二人のドレスが風になびき、それも相まって、その笑顔は幻想的な美しさだった。


 ――ああ、よかった。


 二人の笑顔を守れて本当によかった。

 あとは南の国で態勢を立て直して、また迷宮探索をするだけだ。


 しかも、この様子だと、ハインさんとレイディアントさんも迷宮探索に協力してくれる可能性は高い。

 一気に仲間が増え、迷宮探索も捗るに違いない。


 二人の特性は迷宮探索に向いている。

 ハインさんは風魔法という飛行系モンスターに有効な攻撃手段を足してくれる。レイディアントさんの獣形態は集団戦で頼もしい能力だ。


 その巨体で誰かを乗せながら戦えるというのは反則的だ。

 いまのようにディアのような足の遅い魔法特化の仲間を乗せて戦うことで、パーティーの総合力は格段に跳ね上がる。


 これならば、マリアだって参加するのも夢じゃない。

 最大のネックだった自己防衛能力を、レイディアントさんで賄うことができるのだ。


 僕はマリアに良い報告できると思い、さらに頬を綻ばせる。

 これで一緒に迷宮探索をしようと、マリアに自信を持って言える。


 ――本当によかった。


 ラスティアラの奪還作戦。

 リスクが高いのは承知していた。

 けれど、終わってみれば、何のデメリットもなく、頼れる仲間が増えただけだった。


 ディアは全快し、以前以上の魔法使いとして復帰してくれた。

 ラスティアラは自分を取り戻し、また僕と冒険をしてくれる。

 ハインさんとレイディアントさんも、その力を貸してくれるに違いない。二人のラスティアラに対する忠誠心は折り紙つきだ。仲間として信頼に値する。


 これに、マリアを足せば・・・・・・・、六人。


 一パーティーにしては大所帯となってきたが、僕にとって大人数というのは悪いことではない。

 僕の魔法《コネクション》があれば、パーティー変更しながらの攻略もできる。常に六人全員の挑戦にこだわる必要はない。


 まず僕、ハインさん、レイディアントさん、マリアの四人で迷宮を進み――もし疲れが出れば、僕、ラスティアラ、ディアの三人に魔法《コネクション》で交代するという真似もできるわけだ。


 これから仲間が増えていけば、色々なローテーションによる迷宮探索ができる。


 夢が広がっていく。

 僕は迷宮での選択肢が増えていくのを感じて、笑い声がこぼれる。


「ふふっ」


 何もかもが上手くいっている。

 数日前の消極的だった僕に、いまの僕を見せてやりたいほどだ。


 いまの僕ならば声を大にして言える。


 少し勇気を出せば、もっと素晴らしいものが手に入るんだと――

 頑張れば、それだけの結果が返ってくるんだと――


 そう伝えたい。


 何も信じられない異世界だとしても――だからこそ、物語のような結末が僕には待っている。


 そのことを過去の僕に教えてあげたい。


 僕は羽のように軽くなった身体で走り続ける。

 苦しみも怒りも、もうない。

 何でもできると思った。


 そして、僕たち一行は建物の屋根の道を進み続け、フーズヤーズの国境を越える。

 僕の先導でヴァルトの道を走り、僕の家がある丘を目指す。


 丘の上の家にはマリアが待っている。


 いまの僕なら、マリアとだって向き合える気がする。

 避け続けた自分の全てと向き合い、マリアの問題だって解決できる。

 その自信があった。


 それほどまでに、心に余裕ができた。


 だから、マリアと会いたかった。


 早くマリアと会って、それで――


 そんな僕が目にしたのは。

 僕の家があるであろう丘の上から昇る――煙だった・・・・


 何かが丘で燃えて、大量の煙が空に昇っている。


 ――え?


 それを見て、僕は心の中にあった余裕を水溜りに落としてしまったような感覚に陥る。

 高揚していた気持ちに黒い何かが混ざり、急激に不安になる。


 僕は何も考えず、ただ急いで、家に向かう。


 ヴァルトの外れまで走り、丘を上り、煙の元まで辿りつく。


 燃えていたのは――僕の家だった・・・・・・


 パチパチと音をたてながら、キャンプファイアーのように燃えていく家を、二人の少女が眺めている。


 僕たちが現れたの感じ取り、二人の少女はこちらを見た。


 アルティとマリアの二人だ。

 アルティは微笑みながら、「キリストが来たよ」と、マリアに伝える。


 マリアは僕を見つけ、笑った。

 しかし、その笑顔はすぐに消える。

 僕の後方の五人を見て、表情を歪ませる。


 アルティは何かを囁きながら、マリアの頭を撫でる。


 ――おかしい。


 燃える家を前にして、平然としている二人がおかしい。

 マリアを愛でるアルティの目がおかしい。

 ラスティアラたちを見て、殺意・・を抱いているマリアがおかしい。

 全てがおかしい。


 頭の中が真っ白になっていく。

 そして、真っ白な頭の中に澄んだ声が通る。


 とても澄んだ……。

 泣きそうな、悲しそうな、苦しそうな……。

 マリアの声。


「――ご主人様を、返し、て……。カ、エシテ……――」


 マリアはこちらを見ていた。

 虚ろな『目』でこちらを見ていた。


 心臓が大きく跳ね――どくんと音をたてる。


 胸に小さな痛みを感じた。

 それはラスティアラ奪還作戦において、初めて感じた痛みダメージだった。


 そこで、ふと思う

 思えば今日、多くの強敵たちと戦った。しかし、僕に痛みダメージを与えることができたのはマリアだけだ。


 そこにいるマリアだけだ……。


 その事実に、僕は寒気を感じた。

 味方であるはずのアルティとマリアを前にして、僕は恐怖を抱いてしまった。



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