第42話 エクストラ・ヴァガンザ
ワイルドカードの魔法陣を出現させ臨戦態勢を取る。
奴らが何なのかは分からないが……俺を殺す気なら殺られる前にやるしかない。
「アイアン・バレッタ!」
手から出現した鉄のチェーンを扱い男達に攻撃を仕掛ける。
「何……!?」
避けられた。
人間離れした動きで男達はチェーンの攻撃をアクロバットに回避する。
洗練された男達のコンビネーション。地形を活かし全方向から弾丸を撃ち込み長剣で空かさず切り込みを仕掛けてくる。
「チッ!」
すばしっこい……!
被弾はゼロだが防戦に徹するのが精一杯。
俺も戦いに少しは慣れたとはいえ運ゲーの魔法は変わらない。
出力がイカれた魔法を無闇に放ちまくったら何が起こるか分からない。
「どうする……これじゃ体力切れで俺が殺られる……」
近付かれれば左手に持つ長剣で切り裂かれる。6人から攻められて対処出来るほどの戦闘のプロじゃない。
「っ!」
ある。
この状況を覆す方法が。
成功するかは分からない。だがこのまま殺されるのを待つのは絶対に御免だ。
「アイアン・バレッタ!」
先程よりも少しばかり弱い威力。
だが今は威力などどうでもいい。相手へのアクションを引き出されれば……。
迫りくる鎖の攻撃に黒ずくめの男達は遂に再び動き出し俺を切り裂こうと襲いかかる。
「来てくれて……ありがとう」
これを俺は待っていた。
「トランス・ポーテション!」
ゼロ距離まで近付かれたその時、巨大なリングが男の目の前に出現し転送させ同じ黒ずくめの男の喉を切り裂く……!
「ぐぁっ!?」
「!?」
それまで冷徹だった男達の顔が遂に崩れ焦りに染まっていく。
トランス・ポーテション___。
リングを潜った者を半径20メートルに強制的に移動させる能力。
使い道が見当たらないとそれまでずっと放置していたがどんなことでも「物は使いよう」だ。
「さぁまだやるか!」
一転攻勢。
対処法さえ見いだせればこっちのものだ。
マグマ・ロードで死への恐怖や精神力はだいぶ鍛えられた。
もう恐れはない。
やるというのなら徹底してやってやる。
「……おい」
「えっ?」
と思っていたのだが……男達は意外にもあっさりと退散した。
追いかけようとも考えたがユリエスとレシリー、それとあの子が心配なので深追いは止めることにした。
だが収穫がゼロというわけではない。
「さて……一体何者なのか」
焦りなのか、単に運ぶ技量や時間がなかっただけなのかは知らないが切り裂かれた男の遺体はそのまま放置されている。
グロテスクな場面は慣れたと勝手に自負していたが、この遺体をしっかり見れない以上俺にはまだまだ耐性がないらしい。
「銃に長剣……こんなのフリラードでは見たことないな」
血に染まった部分を避けながら男の持ち物や身体を物色する。
見たこともない独特なデザインの黒を基調とした銃と長剣。
恐らくは武具派。レシリーに聞けば何か分かるだろうか?
「他には……ん?」
胸元に見える何か。
胸毛ではない。何かが刻まれてるような。
「っ!」
龍のようなデザインの紋章。
タトゥーのように刻まれておりじっくりと身体に埋め込まれている。
「これは何だ?」
この男の趣味だとかセンスと言えばそれまでだろうがどうもそんな単純なこととは思えない。
奴らは集団で襲いかかってきた。
となると暗殺者のグループのシンボルのようなものと考えるのが妥当だろう。
しかしこれだけじゃ詳しくは分からない。投影魔法で胸元の紋章をコピーした後、遺体を運ぼうとしたその時だった……。
「!?」
突如遺体が紫に光ったと思うと足の先端から身体が粒子のように崩れていく。
何事かと咄嗟に状態異常の魔法を放ったが肉体の崩壊が止まることはなかった。
「嘘だろ……」
何故こうなったのか、あの紋章が関係あるのか、トリックは何なのか、それは全く分からない。
だが1つ言えるとすれば……。
「ただ事……じゃないよな」
多分俺が考えてるよりも深い深い闇のようなものがある。
エスラルド王国。
音楽が響き渡りフリラードよりも繁栄された大国と思っていたが……どうもそう単純な話ではない。
この時の俺はまだこの国の光の部分しか知らなかった____。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます