第27話 上級魔法派試験①
誘導されたのは巨大な会場。大学の講義室みたいだ。
周りには俺と同じく上級魔法派を志す者で溢れている。
(やべっ緊張してきた……)
さっきのトラブルで良くも悪くも緊張が抜けたと思った。
だがいざ試験会場に入ると手足がガタガタと震え心臓の鼓動が早くなる。
高校受験の時だってここで落ちたら人生終了とか思って無駄に緊張になっていた。
今回もその時と同じ。心では落ち着けと思っても身体がいうことを聞かない。
「大丈夫よユウト、貴方は出来る」
「ユリエス……」
「私が保証する。貴方は出来るわよ」
そうだな。最高の講師に教えられたんだ。それにここで落ちても次があるしなれなくても生活出来ない訳ではない。
受かればラッキーくらいのテンションでいこう。
「試験時間は50分、では試験開始です!」
試験官のアナウンスと共に場の緊張感がピークに達し試験が始まる。
会場に鳴り響く心地よいペンの音。捲れるページの音。チッチッと動く時計の音。
昔からASMRを好んでいた音フェチの俺にとってこれはたまらない。
「ここはこうで……これは確か」
何ページにも渡る問題を次々と解いていく。ラッキーなことに記述問題は少ない。マーク式が全般なのであれば消去法でやっていける。
「残り10分です」
刻々と迫っていく時間。隣の人は時間が足りないのか頭を抱えていた。
対照的にユリエスは問題を解き終えたのかペンを置いて背伸びをしている。
肝心の俺はというと生物学やら数学の問題にかなり苦戦中。
数式なんて見るだけで気分が悪くなるし物理に関しては理科のくせに数学使わせるなよと理不尽な怒りが湧き上がる。
と言うもののこれまでの時間を無駄にしたくはないので当て感でもいいからとにかく空白を埋めていく。
「はい試験終了です。全員ペンから手を離し解答用紙を表にしてください!」
そんな苦し紛れの回答をちょくちょく記入し終えたと同時に終了のアナウンスが流れる。
終わった。体感時間じゃまだ10分だ。それくらい濃厚だった50分間。
「ふぅ……お疲れ様ユウト、手応えは?」
「まぁまぁかな。そっちは?」
「出来たと思うわ」
やはりか。ユリエスの表情の余裕さ的にその答えはある程度予想できた。
優れた種族である獣人でも異質な天才だったからこそ追放されたのだろうか。
「さて採点結果は5分後に出しますので皆さんもう暫くお待ち下さい」
「5分後!?」
「何を驚いてるの? 筆記結果は採点に応用した魔法で採点、その場で発表し直ぐに実技試験に移るのよ」
「マジか……便利だな」
前世よりも優れてないか?
採点の魔法とか本当に何でもありだな。
「採点結果が出ました、只今より合格者の番号を読み上げていきます」
俺の番号は2843番、ユリエスは2672番。
この番号が呼ばれれば俺達の勝利。
「2446番……2472番……2524番」
次々と挙げられていく番号。呼ばれた者は歓喜しそれ以外の者は涙を呑んでいる。
「2654番……2672番」
「よしっ……でもまだ中間点」
番号を呼ばれても平然を保つユリエス。
……なのだがユリエスのケモ耳はピョンと元気よく跳ね口元からは笑みが溢れている。
見栄を貼っているだけで内心は喜んでいるのを隠しきれてない。
そういう猫みたいなところも可愛くて可愛くて仕方ない。
「2681番……2728番……」
と妄想にふけてる場合じゃなかった。着実に番号は呼ばれ審判の時は近付いてくる。
「2831番……2843番」
「おしっ!」
ガッツポーズが抑えられない。その数字を聞いた瞬間喜びが込み上げが止まらない。
勝った。この辛い辛い戦争に勝利したんだ……!
「やったわねユウト。お互いに通過よ」
「あぁユリエスのおかげだよ!」
親に言われて仕方なくやった勉強。
超絶美人な男の娘と自主的にやった勉強。
そりゃ後者の方がやる気も出るし楽しかったし結果も出る。
……いい匂いもした。
「では番号を呼ばれた方は直ぐに実技試験に移ります! ご存知かと思いますが実技試験では一対一の決闘方式を行います!」
「はっ?」
決闘……?
決闘ってあの決闘?
「えっ実技って魔力のテストするだけじゃないのか?」
「違うわよってそういえば言ってなかったわね。実技試験では魔力の強さ、応用力、身体能力を図るために決闘方式にしてるのよ」
「嘘だろ……」
まさかのコロッセオみたいなやり方。
そういえばルイスさんも魔力の強さだけでは認めないみたいなことを言っていた。
しかし……俺の魔法の場合死人とか出ないよな?
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