第5話 異世界ライフは服装から
その後少しばかりコーウェルさんと話を
し、金貨10枚をもらいその場を後にした。
(しかしどうするか)
金と名が付くほどだから相当の価値はあるのだろう。だからと言って右も左も分からない世界で職にもつかず自堕落に過ごすのはいつか必ず破滅する。
(金を稼げるとしたらやっぱり魔物討伐とかのクエストとかか?)
あくまでゲーム知識の考えだが命に関わる危険なことをするんだから安くはないだろう。そうであって欲しい。
(それに自分の服装とか住居とかも決めないといけない。この子のことも)
俺が選んだ子はこちらに全く目を向けずそっぽを向いていた。
俺以外にもこの子の衣食住も整えないとならない。いつまでもこのボロボロの服装のままいさせる訳にはいかない。
「君、名前は?」
「……ユリエス」
ユリエス。
名前も女の子らしく可愛らしい。この子も男なのだろうか?
「ユリエスか、いい名前だね」
「……別に」
「よしじゃあ行こうか」
「行くって?」
「服屋にだよ」
まず向かったのは衣服類を売ってる店。文字は読めないが内装を見る限り服が綺麗に置かれているので間違いないだろう。
扉を開くと同時にカランコロンと客を知らせるベルがなる。
「いらっしゃいませ」
中には奇抜な格好をした長身の男性。肌は吸血鬼くらい色白く耳が長い。ゲームやらでよく見るエルフという種族だろうか。
「本日はどのような用件で?」
「あぁえっと……俺の服とこの子に似合う服を買いたいのですが」
「えっ?」
頑なに目を会わせようとしなかったユリエスが不思議そうな顔で腑抜けた声を出してきた。
「な、何を?」
「何をってユリエスの服を買おうと」
「!?」
それを聞いた瞬間、ユリエスの耳が可愛らしくピンッと伸び驚愕の表情を向ける。
「な……な……何をしているの!? 私は奴隷なのよそんなことする必要は!」
「いや、そんな服装のままにしておく訳にもいかないだろ。ユリエスもその服装だと辛いはずだ」
「っ……辛くなんか」
「それに主人の俺が何をしても自由だろ?」
「そ、そうだけど」
あまり主人と奴隷という関係を強調したくはないが……そうでもしないと納得してくれないだろう。
「てことで二人分の服を買いに来ました」
「なるほど分かりました。あなた方に似合う服装を何品かお持ちしますので少々お待ちください」
屈託のない笑顔で店員はその場を後にする。良かったコーウェルさんが言っていた獣人族への偏見はこの人にはないらしい。
「お待たせしました!」
多彩な衣服の数々。何品と言っていたがどう考えても20着以上はある。
どれも良い服に間違いはないがここまであると決めるのに困る。
「さぁどれかお気に召すものはありますか?」
「そうですね……ユリエス、何かあるか?」
「別に何でもいいわよ……奴隷なんだから」
と言ってまたそっぽを向いてしまう。どうすればいい。
特にファッションなんか気にかけず家でもよれよれのTシャツを着ていた俺にとって服装選びなど滅多にやったことがない。
「ん?」
服の山で際立つスカート。ダンスを踊るような華麗なフリフリの服装。
前世の言葉でいえばゴスロリという言葉が一番似合っている。
「これは?」
「あぁ南に位置する民族の衣装ですよ。高価なのですがこの国の人には受けが悪いのか中々売れなくて……」
「これこの子に試着させていいですか?」
これしかない。完全に自分の趣味全開だが他の人が服選びをしても多分これを選ぶはず。
ガタイのいい男だったり長身の男にこれは似合わない。でも顔が可愛くて背も小柄なユリエスなら絶対に似合う。
シャッ……。
「「おぉ!」」
試着室から出たユリエスはゴズロリ服とこれでもかと似合っている。ユリエスは物凄く不本意というか恥ずかしそうな表情をしているが、十分似合っている。
前の世界で見ていたコスプレイヤーと比べ物にならないほどに。
(もう完全に女の子だよな……)
「お客様どうしますか?」
「あっはい、これ買います」
「ご注文ありがとうごさいます!」
この国に見合った自分の服も買い店を後にする。俺達を横切る者は物珍しそうに見つめるがさっきよりかは見栄えがいいのは確かだ。
「……ねぇ」
「ん?」
「何のつもり?」
「何のって?」
「奴隷に何でこんなことするのよ」
ユリエスから発せられたのは困惑の言葉。さっきよりも口調の尖りは減っている。
「私は奴隷、ボロ雑巾みたいに雑に扱えばいいのに……何でそんなに優しくするのよ、見世物にする気!?」
「ちょ、ちょっと俺はそんな気は別に」
「私の弟達も皆奴隷商売に掛けられて変な金持ちに買われて酷い扱いを受けた……金持ちは皆酷い奴なのよ。だから貴方が分からない……」
余り内容は想像したくないが多分人の扱いは受けていなかったことは分かる。
本で読んだ通り奴隷はどの世界でもそんな扱いなのか。
「俺は別にそんなつもりはないよ。いや奴隷として君を扱う勇気がないというか」
人をボロ雑巾のように扱うなんて俺は出来ない。罪悪感で頭がおかしくなる。
「だから俺は俺なりにユリエスと接したい。魔法の力も強いって聞く」
「……」
「だからと言って兵士になれという訳じゃない。俺の……そうだなパートナーになって欲しいんだ」
語彙力がないせいで余りいい言葉が思い浮かばなかったが多分これで当ってると思う。
「……分かった」
ギリギリ聞き取れるくらいの小さな声。けど確かにユリエスは「分かった」と言った。
「よしっじゃあ次はご飯を食べに行こう」
「えっ?」
「ん?」
「ご、ご飯?」
「何かおかしいこと言ったか?」
「いや別に……」
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