第33話 魔道具での監視体制

 次の日。

 ようやく建設作業の再開日となった今日……俺は作業員や施工管理部の人たちそしてジャスミンと共に、アシュガーノ岬にやってきた。


 ちょうど岬の先端が見えるような位置に来た頃……ちょうどいいタイミングで、敵襲が。


「ワオオォォォォォォン!」


 翼の生えた漆黒の馬型の魔物が上空から飛来していたが……そいつは超音波攻撃により、爆発四散した。


「な……何事だ?」

「なんか魔物が爆発したぞ!?」

「さっきのって……ファントムペガサスじゃなかったか?」

「たった一体で中規模の国の王都を破壊できるような奴が……ああも一瞬で……」


 その様子を目撃した作業員たちからは、続々とそんな声が。


「ファントムペガサスを一撃で殺る魔物がいるって……やっぱ魔境じゃねえかここ……」


 と、そこで施工管理技師の一人が思わぬ誤解を始めたので、俺は慌てて説明をくわえることにした。


「安心してください。さっきの馬を倒したのはインフェルノ大陸の魔物じゃなくて、俺の猟犬です」


 そういって俺はみさきの先端にいるメタルウルフを指す。

 と同時に、俺は魔力信号を送ってメタルウルフをこっちに来させた。


「お手」


 更にメタルウルフが仲間であることを示すために、俺に懐いているように見えるポーズを取らせる。


「ほ、ホントだ……」

「あんなヤベー狼をちゃんと手なずけてる……」

「てか、てことはこの方ってこの狼より強いってことだよな? いったいどんだけ……」


 驚きつつも、作業員や施工管理技士たちはメタルウルフを仲間だと認識してくれたようだ。

 一件落着したので、メタルウルフには岬の先端に戻ってもらう。


「この猟犬と俺とで安全管理業務を行っていきますので、心置きなく建設作業を進めてください。岬には一匹も魔物をいれさせません」


「「「「分かりましたぁ!」」」」


 そして安全管理体制について説明すると、みんな元気よく返事をしてくれた。


「こんなにヌルい現場になるなんて思ってもみなかったぜ。これで危険地域手当まで貰えるとか最高か?」

「あんまし気を抜くなよ。アシュガーノ岬特有の危険は皆無になったといえるだろうが、普通の建設現場の事故みたいな危険性までなくなったわけじゃないんだ」


 浮かれる現場作業員に、すかさず施工管理技師がそういって釘をさす。

 ま、高所から落ちた程度の怪我はパーフェクトヒールでどうとでもできるがな。


 などと思いつつ、俺はジャスミンとともに現場から少しだけ離れた場所に移動する。

 そして予め作ってもらっていたプレハブのやぐらを収納魔法で取り出し、その中での見張り作業が始まった。



 ◇



 櫓にて。

 暇を持て余した俺は……この時間を活用して魔道具でも作っておくことにした。


 今回作るのは、空中偵察機と無人潜水艦。

 目的は、警備体制の更なる強化だ。


 といっても……メタルウルフのように、攻撃能力を搭載したものを作るわけではない。

 今回作る魔道具は、攻撃魔法の中継器のようなものにするつもりだ。

 要は、例えば俺が竜閃光の魔法陣と必要な魔力を魔道具に転送したら、魔道具から竜閃光が放たれる……といったようなものを作ろうというわけだ。


 理由は二つ。

 一つ目は、今の手持ちでメタルウルフが太刀打ちできないような魔物を倒せる性能の攻撃用魔道具を作るのは、なかなか骨が折れるからだ。

 付与する魔法陣をより高度で複雑なものにすればそういった性能の魔道具も作れるが、そういったものを作るには時間がかかってしまう。

 つまり、即戦力の強化には向かないのだ。


 そしてもう一つの理由は、こういった魔道具を作っておけば不意打ちがしやすいからだ。

 魔物は基本的に、魔石の質や消費エネルギーの多さで敵の脅威度を測っている。

 つまり今までに手に入れた魔石で作った魔道具は、より強力な魔物からは魔石の質的に脅威とはまず見なされない。

 その上、定点固定のための最低消費エネルギーで運用しているとなると、魔道具は魔物からは「寝ている雑魚」のように判定されるわけだ。


 そんな魔道具を、一撃必殺級の攻撃魔法の中継地点にしてやれば……不意打ちとなって、俺が直接攻撃するより遥かに攻撃が当たりやすくなる。

 要は強敵の対処を簡単にしやすくなるわけだ。


 現状、海中の警備がザルなので、まずは無人潜水艦から作る。

 魔石に魔法陣を刻み、錬金魔法で作った必要なパーツをくっつけると、無人潜水艦が完成した。


「それ……何を作ったの?」


「攻撃魔法の中継器だ。これは海中用だな」


 質問してきたジャスミンにそう答えつつ、崖まで歩いていって無人潜水艦を放つ。

 目を閉じると、潜水艦につけた感覚共有機能により水中の様子が映し出された。


 とりあえず、なんかでっかい変な色のタコが映っていたので竜閃光を転送してみる。

 無事竜閃光は転送され、潜水艦から放たれた一撃でそのタコは絶命した。


「うわ……ミニチュアクトゥルフが浮かび上がってきた……。あれやったのよね?」


「ミニチュアクトゥルフっていうのか。かわいい名前だな」


「馬鹿言わないで。あれでも一匹で海軍をボロボロにした過去を持つ種の魔物なのよ」


 ついでに収納魔法の転送も試してみると、無事俺はミニチュアクトゥルフを収納することができた。


 それが終わると、櫓に戻って今度は空中偵察機を作成。

 こちらは2機ほど作って浮かべることにした。


 現状敵は一掃してしまっているので、試す相手がいないが……なんか来たらその時試し撃ちしてみるとしよう。

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