第5話 入学試験1――筆記

 一か月後。

 俺は空飛ぶお母さんに乗って、ゼルギウス王立魔法学園の真上に到着した。


 ちなみに現在、高度50キロ。

 竜の姿のまま降りると人々が驚くので、変身しない限りこれ以上下がれないらしい。


 お母さんから飛び降りると、しばらくスカイダイビングを楽しむ。

 地上が近づいてくると飛行魔法で減速し、軟着陸した。


 目の前には、巨大な施設に入るための門があり……その看板には、「ゼルギウス王立魔法学園 正門」と書かれている。

 正門の前には二人の男が立っており、自分と同い年くらいの子――おそらく他の受験生だろう――が提示する書類をチェックして、中に通していた。

 あそこで受験票のチェックを済ませるのだな。


 他の同い年の子たち同様、受験票を見せると、正門前の男は受験番号を確認した上で俺が行くべき教室を教えてくれた。


 教室に着くと、そこには机がずらりと並んでおり……その一つ一つに受験番号が張ってある。

 受験番号が自分の受験票と一致する机を見つけると、俺はそこに座って待機することとなった。


 まずは筆記試験からのようだ。

 30分くらいすると先生が入ってきて問題用紙が配られ、試験開始の合図がなされた。



 問題はどれも簡単だった。

 どの科目も模擬問題集と似たような問題しか出題されておらず、スラスラと解けない問題など一つもなかった。


 のは良かったんだが……そのせいで、試験時間の三分の一が経過した頃には、既に退屈になりかけてしまった。

「時間が余ったら何度も見直しするのだぞ」とお母さんに言われていたので、何度も答案を入念にチェックしてみたが、それも5周くらいすると飽きてしまった。

 試験時間はまだ、半分残っている。


 これからももっと何回も見直しすべきなんだろうが……仮にミスがあったとしても、今の気分だと見つけられそうにないな。

 何か気分転換する方法があればいいのだが。

 ……そうだ!


 この試験は必須解答科目2科目の他、自由選択科目4科目のうち2科目、計4科目を解くことになっている。

 つまり現時点では、まだ2科目解いていない科目がある。

 本来その必要はないのだが、気晴らしにそれらも解いて、また見直しに入るか。


 選ばなかった自由選択科目もほとんどは簡単な問題ではあったが……うち一問だけ、ちょっと頭を捻らないといけない面白い問題があった。

 おかげで結構気分をリフレッシュできた。


 気分一新、最初に解いた4科目の見直しをしたが……どうやらそもそもミスがないらしく、特に修正すべき点は見当たらなかった。


 そうこうしていると、試験時間が終了した。

 俺は答案用紙を回収しにきた先生に、最初の4科目分の答案用紙だけを渡した。


 筆記試験が終わると……一科目目の実技試験である剣術試験に向けて、みんな移動を始めた。

 俺もそれに倣ってついていく。


 ちなみに問題用紙及び提出しなかった解答用紙は、持ち出し禁止となっているので机の上に置いてきている。

 持ち出し禁止の理由は、問題の流出を防ぐためだそうだ。


 模擬問題集の精度の高さを思えば、そんなことをする理由は無いように思えてしまうが……似たような問題の問題集が出回るのと過去問そのものが出回るのとでは、学園側にとっては意味が違ってきたりするのだろうか。


 ……どうでもいいことを考えていてもしょうがないな。

 そんなことより、次の試験に向けて気持ちを切り替えよう。


 剣術試験は校庭でやるようだ。

 流れに沿って進んでいると、俺は会場である校庭に到着した。

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