それでは
時は放課後。教室には誰もおらず、二人だけ。
「君は立派なんじゃねえか?」
唐突に、でもこれ以上のタイミングが無かった。
「は?」
本人は、理解出来てないご様子だが。
「君は立派にやってる」
繰り返す。
「何を……」
それでも、言わなきゃいけない。
「君は、病気の妹さんの世話をしながら。親の期待に応えようと頑張ってる。その姿が立派じゃ無くて何なんだ」
目つきの変わった彼女に襟首を掴まれる。
久しぶりだな、この体勢。
「……お前さ。踏み込みすぎ」
だよなあ。でも、前もこうだったからな。
「君が感じてる不安や焦り……」
だから。
「妹さんの病状が回復しないからって、自分を責めるな」
「違う!!」
うげぇ、締めがキツくなってらぁ。
「私はそんな出来た人間じゃ無いんだ!」
下を向く彼女。足下に落ちた水滴は見なかった事にしよう。
「妹の世話だった、サボったりして……気まぐれに優しくして……本当は疎ましいくせに…………あたし、最低だぁ……」
感情の吐露。そこに口を挟む事なんて出来ない。首が絞まり過ぎて意識を失いそうだが情緒を守るのが紳士だと僕のぶっ壊れた感情が語ってる。
「へっ」
不敵に笑うのは、彼女が強い事を知ってるから。
「妹さんの病状だけどな、これから快方に向かうと思うぞ」
「適当抜かしてんじゃねぇ!」
殴られる。普通に痛い。
「何人もの医者がそう言ってきた! でも治らなかった、あの子はまだ…病室で……」
ここで新情報ってな。
「……適当じゃないさ。知ってるかい? 近々、発表されるはずなんだよ。妹さんの病気の治療法がさ」
「お前、何言って……」
「スマホ、ニュース見てごらん」
彼女が開いたスマホにはニュースの速報。
「嘘……」
この国で開発され、異例のスピードでの治療法導入。
「な、大丈夫だろ」
殴られ、のびてる状態じゃ格好もつかないが、まぁいいだろう。
「『遺書』の書き方講座、続けるかい?」
泣きじゃくる君は、首を横に振ってくれた。
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