第8話 怖い話をするななしさん

そんなに怖い話じゃない……ってか、むしろまったく怖くないかもしれないけど、俺んちで起きた話をする。


うちには仏壇があったのね。まあ、よくある観音開きで畳の部屋とかに置いてある奴。

そんなに大きくもないんだけど、毎日水とかは取り替えてた。

仏壇に納められてるのは俺のじいちゃんとばあちゃん。


んで、仏壇にまつわる我が家ルールがあって、供えたものは皿回しをした後なら自由に食べていいってなってた。

なんじゃそりゃって思われるかもしれないんだけど、うちのじいちゃんが凄く皿回しっつか大道芸? が好きだった人でさ。

生きてるときから、俺たちがふざけてやってみせると、楽しそうに笑っておやつをくれる人だったわけ。

その名残がまだ残ってる……っつか、仏壇の前でやると、今でも写真が笑うんだよね。

普段は普通の真面目な顔してるんだけど。

だから、家のルールとして、お供え物を食べる前は皿回しをするってことになってた。

じいちゃん喜んでくれるなら嬉しいし。


でも、皿回しって結構難しいんだよね。

ちゃんと集中してないと、簡単に皿が吹っ飛んでくんだ。

あるとき、酔った親父が「ちょっと腹減ったな」って、仏壇の大福を食おうとしたらしい。

酔っててもちゃんと皿回しをしようと思ったとこは偉いと思うんだけど、まあ失敗したわけ。

失敗してもじいちゃんは笑ってくれるんだけど、運の悪いことに皿が仏壇の花にあたっちゃって、花瓶が割れた。

あちゃ〜……って思いながら掃除をしたんだけど、そこで俺たちは気づいた。

じいちゃんの写真は笑ってるけど、ばあちゃんの写真は怒ってる。

しかも、その視線は俺たちじゃなくて、じいちゃんに向けられてんだ。


あ、やべってなった。

ばあちゃんは優しいしおっとりした人だったけど、度を超した悪ふざけは嫌いな人だったんだよ。

笑ってた写真が怒り顔になったのも怖かった。

ばあちゃんが俺たちを祟るとは思ってないけどさ、優しい人に叱られるのって心に来るじゃん?

それ以来、皿回しは禁止になって、普通に1日置いたら食べるって事になった。


ああ、別に心霊現象とかは起きてないよw

ばあちゃんは今でもじいちゃんを見てて、じいちゃんは「ごめんなさい」って顔してるけどね。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る