第9話 休日でも仕事しちゃうってあるあるだよね


 ボク達は、予定外のアクシデント―【大海蛇シーサーペント】の襲撃を受け、撤退を強制された。


 帰ってきたボクは、急いで救護班の元へ連れてかれた。どうやら、骨を何本か折っていたらしい。全治半年の大怪我―のところを、全治二日にされた。全身麻酔をかけられていたので何をされていたのかはわからないが、多分非合法な手段を使われていたのであろう。


―心身を休めるためにという名目で、唐突に現れた二日間の休日。果たして、何をするべきか。


 取り敢えず、一つだけやっておきたいことがある。


―シーサーペントの牙はどんな盾でも貫くとされる槍の矛先に、鱗は魔法への耐性を持つ強固な鎧となる、貴重な素材だ―が、部隊の半分が壊滅していたため慌ただしく、奴の死骸を回収することが出来なかった。

―ボクの独断で持ち帰った、奴の角を除いては。


 シーサーペントは、角を振るい竜巻を起こす。―正しくは、角で魔力を制御して、竜巻を起こす魔法を発動させる。


 人が魔法を使えない理由として、二つの理由がある。人間の体には魔力を流す管が存在しないため、人間の体には魔力を制御する器官が存在しないためだ。


 あの角を用いれば、後者の問題点が解決出来る可能性がある。解析を進めれば、ボクが魔法を使えるようになる日が来るかもしれない―


「…セバス、よろしく…」

「御意。」


 セバスに抱えた角を手渡すと、彼は頷き、早速目的の場所に向かった。主人の心を読み、主人の要望に答える。やっぱり彼は優秀な執事だ。


 しかし、これではボクのすることは無くなってしまったな。さて、何をするか―


―この国に保管された、書物でも漁るか。


 この世界には色々と、気になる点がある。

 何故、獣人、人魚、竜人―人に似た、空想上の存在が生まれたのか。

 何故、魔法という、現代科学技術を超越した奇跡が存在しているのか。


 幾ら年月が経とうと、ここはボク達の故郷、地球のはずだ。美辞麗句とされるものが百八十度回転しても、根本的な物理法則は一度も傾くことはない。

 なのに彼等は、魔法は、根本的な物理法則を覆している。無から有を生み出しているようにしか見えない。


 そこから考えられる可能性は、ここが地球じゃないというもの。ボク達は、手違いか何かで違う世界、星、次元に来てしまったのではないか。


 それを裏付ける証拠が、ここにはあるのではないか。ボク達の生きていたはずの歴史は、ここには保管されていないのではないか。


 ボクはそう思い、隅から隅へと、ここにある書物を読み漁っていったのだった。




―出撃命令が来た。流石に二日じゃ全部は読みきれなかったか。


 次の進軍は明日、ボクは第四部隊と行動を共にし、最前線にて戦うらしい…

…は?貧弱なボクが、最前線?

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