第8話 秘密の密談


 海深く、人魚族の軍事作戦会議室にて。


「まさか私達の切り札がいとも簡単に倒されるとは…」


 翡翠色の鎧で上半身を包み、宝石のように輝く鱗、魚の下半身を持つ、【人魚族マーメイド】の将軍がそう呟く。


「仕方ないさ。あれは試作品でしかないんだし。第一、あれは乱戦の状況で放出するものだろ?」


 その人魚の向かい側に座る、ゴシックロリータファッションの【吸血鬼ヴァンパイア】、屍共の長が言う。


「だからと言って、あの耐久力の化け物がいとも簡単に崩されるとは…」


「いやぁ、獣人達だったらあんな事思いつかないかもしれないけどねぇ。今度作る時は口でも縫うか?」


 人魚の将軍は真面目に、吸血鬼は笑いながら、先日の戦況について談笑する。


「…お前の支配領域は戦場から離れているから、悠長にしていられるけどなぁ、こっちの国は戦場のド真ん中で、お前の冗談に付き合っていられる余裕はねぇんだよ!」


「困った時は、僕達は君達を裏切って、戦況が落ち着くのを待つとするかな。」


「…お前、そんな事言っていると、本当に同盟関係を切るぞ?」


「冗談、冗談。もし君達が危険な状況になったら、僕達も全力で加勢するから。今は武器と資金での支援しか出来ないけど。」



 二人の談笑は続く。

…その内、吸血鬼の持つティーカップの中身が無くなり、食べるマカロンが無くなってしまった。


「そろそろ時間だし、僕は退席させてもらおうかな。」


 そう言って、吸血鬼は離席する。

 軍事会議という名の、二人のお茶会は終わったのだ。


「…そう言えば、帰る前に一つ。あの魔獣の死体を使いたいんだけど、貰っちゃうよ?」


 背中の羽を広げ、帰りかけた吸血鬼が人魚の将軍に聞く。


「ああ、いいぜ。どうせ私にはあっても意味ないものだしな。」


「サンキュ!

…また一緒にお茶会しようぜ!」


 吸血鬼は空を飛んで帰っていった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る