第7話 大海の覇蛇


 海を割って現れた大蛇-便宜上、これからは【大海蛇シーサーペント】と呼ぶ―は海上で複数の竜巻を起こし、ボクの乗る船を転覆させようとしてきた。


 海に浮かんだ、魔法阻害弾の残骸が竜巻を打ち消すことで、ボク等の船は守られたが、後ろの部隊の船には竜巻が直撃してしまっただろう―ご愁傷様です。


…他の部隊の心配をしている場合じゃない。ボク達は、目の前の暴れ狂う奴をどうにかしないと。


 竜巻ではこの船を傷付けられないと気付いたのだろう。シーサーペントは戦い方を変え、その巨体を船の甲板に叩きつけてきた。衝撃で船が大きく揺れる。


 奴の胴体を狙い、ボクは拳銃で弾を一発撃ってみたが、効いている感じがしない。

 あいつの体を覆う深緑色の鱗が、銃弾を防いでいるのだろう。


 あいつの体力、集中力が無くなるまで持久戦、というわけには船の耐久力的にいかなそうだな。

―効き目の薄い拳銃、射撃の隙が致命的な狙撃銃、刃渡りの短いナイフ、船の貯蔵庫に積まれた予備の弾薬、手榴弾、C4―


―仕方ない、格好いい戦い方ではないがー

 思いついた苦肉の策を実行するため、ボクは船内の貯蔵庫に向かった。




 甲板に戻ると、見るも無残な光景が広がっていた。

 残った人員は非戦闘員か、使えない。数には数えない方が良いな。


 ならば、取るべき策は一つ。


「ボクを向きやがれ!蛇野郎!」


 そう大声で言い放ち、上空に向かってピンを抜いた手榴弾を投げた。

 ボクの頭上でけたたましい爆音が鳴り響き、大海蛇がこちらを向いた。

…第一段階は成功…


 大海蛇は竜巻を生み出し、ボクを船ごと墜とそうとしてきた。


「…甘い。」


 だが、竜巻は船に当たる直前で消滅した。海に浮かんだ、戦う前にボクが散らした『魔法阻害弾』の予備が、かき消したのだ。


「—――ッ!!」


 二度目の魔法阻害、それにキレた大海蛇が、口を大きく開き、ボクに牙を向けてくる。


「ボクを食べる前に、前菜を召し上がれ!!」


 ボクとの距離は数メートル、大きく開けた大海蛇の口に、この船に乗っていた爆弾をありったけ、火薬の塊を投げ入れる。


―――!!――


 凄まじい爆音が、戦場に鳴り響く。

 ボクは爆風に飲み込まれ、大きく後方に吹っ飛んだ。火薬の量を多くし過ぎたか―


 軋む全身を起こし、前を見ると、目の前には体の半分が塵となった大海蛇がいた。


「…とーぜんのしょーり…」


 勝利の余韻に浸り、ボクは横たわり、目を閉じた。


 

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