第5話 無双劇
人魚領への進行作戦に備えた訓練を、ボク達第十部隊はすることとなった。
だが、その訓練の内容は、近隣の森で増えすぎた熊型の魔獣の討伐という雑務…実地訓練なのだが。
…軍司令部の愚痴はさて置き、雑談―魔獣とは何かについての談義をしよう。
魔獣とは、自然界にて生きる動物、植物が、大気に含まれる魔力を吸収し、独自の強化、進化を果たした姿だ。
…余多のエネルギーを内蔵する魔力を沢山吸収したため、魔獣は原種とは桁外れな力を持っている。
だが、魔力付けにされたことによって、一種の中毒症状を患っており、魔獣は冷静な思考能力を失ってしまった。
野生的な本能だけで動く、考える事をやめた木偶の坊。戦闘経験の多い者なら、ある程度の魔獣なら簡単に倒せるらしい。
…だが、戦闘経験の少ない二等、三等兵はこの任務に苦戦している様子だ。
熊の動きは大振りだとはいえ、一発の火力はえげつないくらい高い。これを避けれない人には厳しい戦いとなるだろう。
前衛の重装歩兵さん。ご愁傷様です。
…ん?ボクは何してるかって?
そりゃ、森の熊さん相手に無双中ですよ。任務に忠実なボクって偉い~。
熊の攻撃を予測し、ボクに当たるギリギリのところで回避。熊討伐のために支給されたナイフを、毛皮の鎧の合間を縫い、熊の急所に突きつける。それを繰り返すだけで熊の遺体が増えていく。
…こいつで、倒した数は53かな?
…ちなみに、上から指令で「一人一匹熊を倒せ」とノルマを課せられているのだが、このままでは、ここらへんにいる熊は全滅しちゃうな。
まぁ、倒すことを辞めはしないんだけど、給料上がるし、かなり爽快感あるし。
何?後輩へのいじめ?いやがらせ?
違う違う、ボクがそんな事するわけないだろ?試練だよ、試練。訓練なんだからこんくらいしないとだろ?
ボクはそう自分に言い聞かせて、熊の蹂躙を続けた。
因みに、後で知った事なのだが、隊員の大半がノルマを達成出来ず、泣く目を見たらしい。
まぁ、ボクには知らない事なんだけど。
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