第三章 白峰藍の場合1
不妃との出会いは当然というべきか一年半前。この学校に入学した頃。不妃に関しては入学当時、クラスの中に目を引く美人がいんなーってくらいの認識だった。
妙な子だなってのが最初の印象。いつも窓の外見てぼーっとしてて、じゃあ友だちいないのかな、あまり話さない子なんだろうなって思ってたら、男子と馬鹿笑いしてる姿をたまに見る。女子連中で話し掛けると話の途中で思い出したようにふらっとどっか行っちゃう。
ある日。それが気に喰わなかったのか、あたしとは違うグループの、ちょっと目立つ子が不妃をシカトし始めた。やったことと言えば、体育のグループ分けの時にハブる程度だけど。たしかバレーだった。そういう空気はクラスにすぐ伝わる。やられた方も堪える。
普通の女子なら耐えられない。塞ぎ込んでしまって次の週には不登校、なんてのをあたしは中学で何度か見てきた。
気に入らねーって思ったね。仕方なしにそん時はあたしが組んだ。禄に言葉はかわさなかった。
暫く見てそれがまだ続くようだったら、おせっかいだけど、口出そうとした。
したらその次の週。
不妃とそのシカトを実行した子、その二人が仲良く廊下で話していた。
はあ? って、感じ。なんだったの? まあ、仲良くなったんならいいけどさ。けど、どうなのよ? あんたにはプライドってもんがないのか。イラッときたのを覚えている。
そしたまた。クラスでもちょいちょい話している様子を見ていたその二人は、今度は逆によそよそしくなっていた。シカトってわけじゃないけど。いつもと違ってた。
喧嘩でもしたのかなって目で追っていたら、今度は不妃はクラスの別のかわいい子と仲良さそうにしてた。そんでまた疎遠になっててまた別の子と仲良しになってて疎遠になってて仲良しになっての繰り返し。そんなことが続いた。
そのうち女子界隈で妙な噂が立った。
不妃がレズだって噂。
ふうんって感想。いるにはいるもんだな。あたしはそういうのよく分からないけど。人の性癖にどうこう言うつもりはない。でもなんだか節操なしな子だなって感じ。
少し知りたくなった。
どんな子なんかなって。話してみたら意外と気合うかもなって。気になって目で追っかけてる内にどんどんどんどん気になっていった。
不妃は逃げた。
初めにガンガンあたしから不妃に話し掛けてたのがいけなかったのかな? 距離を縮めようと、彼女と仲良くなろうとして、ガンガンアタックを掛けていたんだけれど、不妃は素っ気なくするばかりだった。なんであいつらとはあんなに仲良さそうにしてあたしとはしてくれないんだよ。
ムカついたってわけじゃない。ムキになってしまった。
暫くして二人きりになると、不妃は心を開いてくれるらしいって話を聞いて、信頼できる友達に二人きりになる瞬間を作ってもらったんだけど、不妃は心を開いてくれるどころかあたしを警戒しているように見えた。そそくさとどっか行っちゃう。
なんでだ。腹立つな。
あたしなんもしてないのに。
いつの日か弟に相談した。愚痴ったって方が正しいか。
「それ、姉ちゃんがメンヘラっぽいの見抜かれてるだけじゃない?」
「は? メンヘラってなに?」
「重い女」
「重たくないし。あたし軽いし」
「……馬鹿だと思われてるだけじゃ……って、やめろおおお!!」
馬鹿にされたから電気あんましてやった。
「あー、不妃ちょっといい?」
「なに?」
放課後。
不妃と円っちが二人で帰ろうとした(!!!)為、あたしは超特急で作戦を考えて、寧々ちんに協力して貰うことにした。
①寧々ちんが止める。
↓
②バンドやりたいって言う。
↓
③あたしも一緒に入れてもらう。
咄嗟に考えたにしては悪くない作戦。尺だけど寧々ちんと不妃は喧嘩別れしている状態って感じじゃないっぽいし、一度はそれっぽいこともしたわけだから不妃は許可する筈。
問題はあたしだけど、『藍も一緒が良い』ってゴネてもらえばなんとかなるはず――。
不妃は一瞬ぽかんとした表情をしたものの気を取り直し、
「それじゃ予定変更。みんなで楽器屋にでも行こっか」
と、微笑んだ。
え? いいの? やったー! わーい!
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