第5話

 欠片を纏って空を滑る。通った後に軌跡を残して。

 僕自身が一つの星になって。

 どこへ行くんだろう。いいや、それは僕が知っているはず。


 もう一つの輝きを見つけるため。

 少し上に上がって、勢いをつけて下に落ちる。頭から。

 周りの星屑が音を立てた。高らかな、ガラスが響くような音だ。


 僕はそのまま目を閉じた。高らかな音に身を任せて。

 立体的な夢を見た。まるでそれを僕が憶えているみたいな。



 青い世界。青で全てが表現された世界。

 揺れて揺れて、ずっと動いている。小さな僕は、ほとんどそれに身を任せているだけ。

 上から差し込んでくる光を食べて、僕はゆらゆら揺れていた。

 僕は時々考えた。

 僕の知っている光は、本当にあの形なのだろうかと。


 大きな世界。緑色の広がる世界。

 たくさん歩いて、一生懸命物を運んだ。

 緑色は、少し潜れば茶色に変わるけど、それは当たり前のことだった。

 だけど時々考えた。

 この緑は何処まで続いているのだろうかと。


 白い世界。遠くは青く、近くは無色、柔らかな白を抱く世界。

 見えないそれを掴んで、自由に駆けた。

 僕は知っていた。あの遠い青の先に、深い青があることを。

 そこに輝く無数の奇跡に、おそらく最も近いはずの僕なのに、決して届くことはない。


 深い青がやってきた。瞬く彼らの輝く時間。僕と彼らの最も近づく時。

 そこで描かれる無数の軌跡が、僕らにまた奇跡を見せる。

 僕には見えない光の跡。けれども僕が知っている光。

 無意識に手を伸ばしていた。深い青が包み込んでいく。



「ああ、愛しいお空に抱かれて。あなたは何処へ行くの?」



 束の間の夢だった。再び開けた視界を埋め尽くすのは、青。

 内側から淡く輝く、不思議と強い奇跡の光。

 息をのんだ。そうだ、これが、僕が一番輝くとき。

 あの一等星すら遥かに凌ぐ、眩いばかりの光の証。


 視界の先に僕がいた。

 届きもしないその手を伸ばし、呆けた顔して固まっている。

 全ての時が止まって見えた。世界は答えを待っている。

 止まってしまった空気をかき分け、そっとその手に重ねた。


 刹那、全てが流れ始める。


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