第4話

 僕はそこで、初めて目を開けた。

 世界が夜に落ちる寸前の色と、世界が朝に目覚める時の色が混ざり合った空間だった。


 遠くに瞬く星たちが見える。銀河が渦を巻いている。

 ちりばめられていたのは、星屑だった。

 星たちが銀河を真似てくるくる踊る。周りの星屑をからめとって、自分を見よと言わんばかりに輝きを増していく。


 やがて一等星の輝きになると、星々は空を滑り出した。

 輝きの雨が降っている。

 落ちる瞬間に一等星よりも大きく輝いて、各々消えていく。


 彼らは、何処へ行くのだろう。


 ふと、掌が熱くなった。握りしめていた拳を開くと、そこに星屑が震えていた。

 僕等も星になりたいと。あの一等星よりも輝いてみたいと。

 呼応して、僕の内側から光が漏れた。鼓動みたいに、光って、光って。


 胸に手を当てる。彼らと一つになる。僕らは一つの星になって、そらを舞う。


「踊りましょう、踊りましょう。星の欠片を集めて、どの星よりも輝くの」


 少女が僕の手を取った。そのまま、軽やかなダンスの時間が始まる。

 僕たちはくるくると回って、それは引力になって、星屑たちを惹きつけた。

 星屑たちは輝き、軌跡を描いて僕へと吸い込まれていく。


 束の間僕は夢を見た。銀河になる夢だ。

 夢中で踊った。僕が手を伸ばせば、そこに星屑たちが集まってくる。

 無数の欠片が僕を囲んでいた。軌跡が重なって、一つの大きな星みたいになった。


「ああ、愛しいお空に抱かれて。あなたは何処へ行くの?」


 たくさんの欠片に囲まれて。少女は笑っている気がした。

 だから僕も、笑って答えた。


「何処へだっていけるさ。僕にはこの欠片がある」


 少女はもういなかった。だけど僕は踊り続けた。

 星屑たちと共に。僕は輝きを増していく。

 一等星の夢を抱いた。拾った欠片の分だけ、僕はそれに近づける。


 そのまま宙を滑った。それに近づくには、もう一つの輝きが必要だったから。


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